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安倍総理の志は死なない!!

コロナ変異種「重傷率が同じ」でもヤバい理由

出現元のイギリスはクリスマスもロックダウン
The New York Times
2020年12月23日


大規模なロックダウンに踏み切ったイギリス(写真:Andrew Testa/The New York Times)
新型コロナウイルス変異種の急速な感染拡大に警戒感を強めたイギリスのボリス・ジョンソン首相は12月19日、それまでの方針を急転換し、大規模なロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。首都ロンドンを含むイングランド南東部の大部分が対象で、クリスマスシーズンに世帯の枠を超えて集まることも禁じられた。
変異種は数週間前にイングランド南東部で見つかっていたが、新たなエビデンス(科学的証拠)の報告を受けたイギリス政府は緊急閣議を開いてロックダウンを決めた。変異種は従来のウイルスに比べ感染力が最大で7割高まった可能性がある、とジョンソン首相は語っている。
20日から実施されている新たな対策の狙いは、首都とその周辺の州を国内の他地域から実質的に切り離すことにある。3月のロックダウン以降で最も厳しい措置だ。感染拡大が危惧される冬はすでに本格化しており、そこに変異種が加わったことで感染が猛烈に拡大する恐れがある——。そんな危機感の表れといえる。
ジョンソン首相は19日、「ウイルスが攻撃方法を変えてくるなら、われわれも防御の方法を変えなくてはいけない」と深刻な表情で語った。「変異種は急速に拡大している。今わかっている情報に基づいて行動する必要がある」。
変異種による新規感染が全体の6割強に
ウイルスの変異は珍しいことではない。イギリス当局は国名までは明かさなかったが、問題の変異種はイギリス以外でも複数の国で確認されていると語った。イギリス政府の医療専門家らが警戒感を示しているのは、感染力の強さだ。同専門家らによると、今やロンドンではこの変異種による新規感染が全体の6割を上回るようになっている。
変異種の急速な広がりは必ずしも感染力の高さを示すものではない、とクギを刺す科学者もいる。別の要因で感染が広がっている可能性もあるため、ラボでの実験などさまざまな分析を行った上でなければ確たることは言えない、というスタンスだ。
ただ、この変異の特徴がどのようなものであれ、イギリスの危機が深刻化しているのは間違いない。イギリスでは大規模なワクチン接種プログラムが始まったが、新規感染者の増加ペースは過去2週間足らずで2倍近くにまで加速した。人口比ではアメリカを大幅に下回っているとはいえ、西ヨーロッパでは最悪のレベルだ。
公衆衛生の専門家たちは、今回の変異種の出現によってウイルス根絶に向けた規制強化の緊急性がさらに増したと語る。変異は繰り返し起こる現象だからだ。
「ウイルス根絶の重要性は一段と高まってきている」。こう話すのは、エディンバラ大学で国際公衆衛生学プログラムの責任者を務めているデヴィ・スリダール氏だ。「ウイルスが広まれば、変異も増える」。
致死率が変わらなかったとしても死者は増える
ジョンソン首相が突然方針を翻したのは18日に内閣小委員会の会議が開かれた後だった。この会議で政府の科学諮問委員会のメンバーはあるデータを提示した。それまでの1週間だけでロンドンの新規感染がほぼ2倍になったこと、そしてその大半が新たな変異種によるものであることを示すデータだ。
政府のパトリック・ヴァランス首席科学顧問は、変異種によって致死率が高まったり、ワクチンに対する耐性が強まったりしたことを示す証拠はないとしている。が、医師であり、医学研究者でもある同氏によると、従来のウイルスに対して23カ所の変異があったことが科学者によって確認されている。異例の多さであり、さらに変異のいくつかはヒトの細胞に結合する部分で起きている。ヴァランス氏は、これによって感染力が高まった可能性があると話している。
感染力が強まれば患者の増加に拍車がかかり、ひいては入院数や死者数の増加につながる。イギリス政府は新たな変異種の広がりについて世界保健機関(WHO)に報告を行ったとしている。
ジョンソン首相とともに記者会見に臨んだヴァランス氏は次のように語った。「この変異種はこれまでよりも簡単に広がる。制御するには、さらなる対策が必要だ」。
今回、ロックダウンが適用されたのはロンドンの全域とそれを取り囲む南東部の大半。人口密度の高い地域で、イギリスの全人口の約3分の1に当たる2000万人近くが対象になった格好だ。規制は少なくとも2週間続けられ、その後の対応は12月30日に状況を再度見極めた上で決定される。
政府は緊急の外出、通院、健康維持のために屋外で行う運動を除いては自宅にとどまるよう求めている。対象地域の外側に住んでいる人にも、ロックダウン対象地域に入らないよう注意を促した。対象地域内の住民は夜をまたいでの外出や外泊が禁止されている。外国への渡航には強い自粛が呼びかけられ、生活必需品以外を取り扱う店舗、ジム、映画館、理美容室、ネイルサロンは休業となった。
ジョンソン首相はそのわずか数日前に、クリスマスをキャンセルするのは「非人間的だ」と語ったばかりだったが、多くの国民にとってクリスマスは事実上キャンセルされたに等しい。政府はクリスマス期間中に最大3世帯まで集まることを認めるとしていた。しかし、この方針はロンドンを含む南東部では撤回され、複数世帯が交流することは禁止された。
対象地域外では3世帯までの集まりが許可されるものの、クリスマス前後5日間とされていた規制緩和期間は、クリスマス当日の1日のみに限定された。
国を3つの警戒レベルに区分し、それぞれに異なったルールを適用するという従来の規制方式では感染を十分に抑制できていないーー。ジョンソン首相が発表した今回のロックダウンは、こうした現実を認めるものであり、一段と厳しい規制の対象となる「ティア4」(警戒レベル4)が新設されることになった。
南アフリカでも変異種が出現
ジョンソン首相は首相として規制を自らの判断で強化できる法的な権限を有しており、議会の召集も予定されていない。しかし今回、ロックダウンの導入が発表されると、野党からだけでなく、身内の保守党からもすぐさま反発の声があがった。
「全国の何百万人という家族は、このニュースを聞いてさぞやがっかりするだろう。なにしろ、クリスマスの予定を台なしにされたのだから」と労働党のキア・スターマー党首はイギリスの公共放送BBCに語った。
「本当に腹立たしい。この問題については16日に首相に問いただしたばかりだが、そのとき彼は規制強化を否定して『クリスマスを小さく祝おう』と国民に言い続けた。そのわずか3日後に国民の予定をひっくり返すとは」
保守党内でロックダウンに批判的な議員連盟を率いているマーク・ハーパー氏は「このような政策変更は、できる限り早期に下院での採決にかけられなければならない」と語った。
公衆衛生の専門家らによると、新型コロナは2019年に中国で最初に発生が確認されて以降、何度となく変異を繰り返してきた。18日には南アフリカも変異種によって感染拡大の新たな波が起きていると報告している。イギリスで確認されたのとは別の変異種だと科学者らは話している。
変異種の多くは重大な影響を及ぼすものではない。が、感染者が増え、何らかの免疫を持つ人の数が増えると、病原体に変異を促す力は一段と大きくなっていく。そして変異が繰り返されているうちに、従来のウイルスよりも感染力が強く、重症化につながりやすい変異種が現れる可能性がある。
(執筆:Mark Landler記者、Stephen Castle記者)
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