Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

コロナに喘ぐ米国、8割の国民が「中国に責任あり」

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
 新型コロナウイルスの世界最多の感染者を出した米国で、中国政府に損害賠償を請求する動きがさらに広まってきた。最新の世論調査では、米国民の多くがウイルス感染の被害は中国政府の責任だとして損害賠償を求めるべきだと考えている現実が明らかになった。
 4月1日の本コラム(「『消防士のふりをする放火犯』中国に米国が怒り心頭」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59967)で、新型コロナウイルスの米国での爆発的感染は中国政府の隠蔽工作などが原因だとして、中国側に損害賠償金の支払いを求める決議案が米国連邦議会の上下両院に提出されたことを報じた。米国議会では共和党議員を中心に中国糾弾の動きはさらに激しさを増している。
防疫対策を怠った中国に損害賠償請求を
 米国議会の上院では4月上旬、共和党の重鎮でトランプ大統領にも近いリンゼイ・グラハム議員が、議場での発言で中国政府への賠償請求を強硬に主張した。その骨子は以下のとおりだった。
・中国政府の隠蔽工作や虚偽情報発信こそが今回の世界的な感染を生んだ。コロナウイルス感染で被害を受けた全諸国は中国政府の責任を追及し、その被害への賠償金を払わせるべきだ。その金額は当然、巨額となるが、支払いの一策としては中国政府が保有する米国債をキャンセルさせるという方法も考えられる。
 上院では、マーシャ・ブラックバーン議員(共和党)も同様に米国の政府や民間企業が中国政府に賠償金の支払いを要求することを主張した。
 同議員の発言の主な内容は以下のとおりである。
・米国に天文学的な金額の被害をもたらした新型コロナウイルスの感染は中国浙江省の武漢市で発生した。中国政府は新型ウイルスへの防疫対策を怠り、逆に隠蔽して、感染を世界に広める結果を招いた。
・米国は「武漢発の世界的な疫病危機の責任」を中国政府に帰して、その損害の賠償金を求めるべきだ。数兆ドルに及ぶであろう賠償金を支払わせるための1つの方法は、中国政府が保有する米国政府の債権類の主要部分を放棄させることだ。
 以上、グラハム議員とブラックバーン議員に共通しているのが、中国政府が長年保有する米国政府の各種債券を放棄させて、その金額を損害賠償金とするという案を提唱した点である。
国有企業、政府要人の海外資産を差し押さえる
 米国の民間の学者たちの間でも、米国をはじめ感染被害の大きい国が損害への責任と賠償金を中国政府に求めて認めさせるべきだとする主張が多く出るようになった。
 そのなかには、賠償金の支払い方法に具体的に触れる論文も現れている。一例としては、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・ユー法学部教授とワシントンの大手研究機関、AEIの国際法専門のイバナ・ストラドナー研究員が共同で発表した「中国にいかに支払わせるか」という題名の論文だ。同論文はワシントンの政治外交雑誌「ナショナル・レビュー」(4月6日号)に掲載された。その趣旨は以下のとおりである。
・米国政府の情報機関の情報などによると、中国政府はコロナウイルスの感染について、発生した事実、感染者の数、症状の程度などを意図的に隠蔽あるいは歪曲して、他国への拡散を許した。その被害は米国だけでも死者2万人、損害額は数兆ドルに達する。
・中国政府がもし個人、企業、あるいは国際法を守る国家であれば、各国への被害への賠償を余儀なくされる。一連の国際法からみても、中国政府の言動は法的な責任と債務を追及されて然るべきである。
・しかし、国際法に実効性を持たせる国際機関は正常には機能しておらず、中国政府自体も国際的な規範や規則を順守しない。このため米国は、自国の国益の追求のために独自のメカニズムを構築して中国の責任を追及しなければならない。
・そのために米国は、中国政府の保有する米国債、「一帯一路」での諸国への融資などからの賠償金取り立てを検討する一方、中国の国有企業の対外資産、政府要人の海外資産の凍結なども考慮すべきである。
・また、中国が世界保健機関(WHO)や国連の規則に違反していることを指摘して、国際司法裁判所や国連安保理で法的に中国を追及する方法も意味がある。中国はその手続きにすべて反対するだろうが、中国の非を国際社会に改めて明示する効果がある。
 ユー、ストラドナー両氏は以上のように述べて、米国は同盟諸国と連携して中国政府の法的責任を追及し、賠償金の支払いを要求すべきだと強く主張した。
世論調査で8割が「中国政府に責任あり」
 こうした動きの背景には、米国民一般の間で、中国政府の新型コロナウイルスに関する言動を非難し、中国に損害賠償金を請求すべきだとする意見が強くなっているという現実がある。
 米国の大手世論調査機関の1つ、ハリス世論調査は、コロナウイルス関連の最新の全米世論調査結果を4月中旬に発表した。同調査は全米の約2000人の一般米国人を対象とし、4月3日から5日にかけて実施された。
 その結果に関してまず注目されるのは、一般アメリカ国民の圧倒的多数が新型コロナウイルスの拡散について中国に責任があると考えていることである。米国が世界で最多の感染者を出したことに対して、「中国政府に責任がある」と答えた人は全体の77%、「責任があるとは思わない」と答えた人は23%だった。
 続いて、「ウイルス感染による米国の被害に対し、中国は賠償金を支払う責任がある」という意見に賛成した人が全体の54%、反対が46%という結果が出た。米国民の多数派が中国に損害賠償金の支払いを求めているのである。
 この質問に対する賛否を回答側の政党支持別にわけると、共和党支持層では81%が損害賠償請求に賛成、19%が反対だった。民主党支持層では賛成が30%、反対が70%となり、一般国民の間でも、共和党支持層に中国政府への損害賠償請求に賛成する人たちが多いことが明らかとなった。
 米国の世論のこうした対中強硬傾向は、連邦議会にも反映されているというわけだ。