Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

習主席のあきれた“厚顔演説” 繰り返す尖閣侵入も…世界の「分裂や対立」を憂いてみせ、人権侵害に対する抗議には「内政干渉」と一蹴

 中国の習近平国家主席が25日、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム(WEF)」が主催するオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で行った講演が注目されている。直前の23、24日、中国軍の戦闘機など計28機を台湾の防空識別圏に進入させておきながら、ドナルド・トランプ前米政権の対中強硬姿勢を批判し、ジョー・バイデン米政権を試すかのように「協調」を呼びかけたのだ。何たる詭弁(きべん)か。ただ、バイデン政権内からも「戦略的忍耐」という、オバマ政権で失敗した外交キーワードが飛び出した。政治学者の岩田温氏は、あきれる習講演を考察した。



 中国の習主席は25日、「ダボス・アジェンダ」にオンライン参加し、講演した。明らかにバイデン米大統領を意識したうえで、「デカップリング(切り離し)や制裁を行えば、世界を分裂や対立に向かわせるだけだ」と説く一方で、「(国家間の)違いを尊重し、他国の内政に干渉すべきでない」とも説いた。


 「盗人猛々しい」恥ずべき言葉だと言わざるを得ない。


 まず、思い起こしてみるべきは、新型コロナウイルスの初期対応である。仮に、中国が自国の体裁や体面にこだわらず、発生当初から正直に情報公開していたのならば、世界全体で210万人以上の死者が出るほど、各国の対応が遅れることがあっただろうか。


 世界に情報を提供するどころか、強権的に情報を隠蔽しようと試みたのが中国だ。湖北省武漢市における現実を伝えようとネット発信した市民記者がいた。彼は称賛されるどころか、公共秩序騒乱で有罪判決を下されたのである。


 国民に対して「思想信条の自由」「表現の自由」を認めようとしない共産主義体制が情報隠蔽問題の本質ではないか。中国が世界各国との「協調」を志向しているようには到底思えないのは明らかだろう。


 さらにいえば、近年の異常な軍事力の増強は何のためなのか。真面目に物事を考えようとする人々ならば、中国が覇権主義に傾いているとの結論に至るはずだ。


 わが国固有の領土である沖縄県・尖閣諸島にも、連日のように海警局公船を侵入させるなど、不穏な動きを続けている中国が、世界各国に対して「分裂や対立」を憂えてみせるのは、笑止千万というよりほかない。


 例えてみれば分かりやすい。現行の法秩序を守ろうとする警察が、不穏な動きをする過激派集団の動向に憂慮し、警察力を増強してみたり、警戒態勢を強めたりすることは治安を守ろうとする行為であって、国民の「分裂や対立」を煽る行為ではない。


 中国こそ、世界の分裂や対立を加速化させるような全体主義的な情報統制や、台湾や尖閣諸島を含む東・南シナ海で激化させている軍事的覇権主義と決別すべきなのだ。


 深刻な人権侵害問題に関して、国家主権を振りかざすような時代錯誤の議論も、到底、文明国を代表する政治家の言葉とは思えない。


 マイク・ポンペオ前米国務長官は退任前の19日、中国による新疆ウイグル自治区のウイグル族などのイスラム教徒少数民族の人権状況を憂慮し、国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」および「人道に対する罪」であると非難したが、この言葉の持つ意味は重い。


 習氏は冒頭の講演で、「内政干渉すべきではない」と述べたが、仮に甚だしい人権侵害が「国家主権」の名の下で正当化されるのであれば、ナチス・ドイツのホロコーストすら擁護されることになりかねない。


 人類は恐ろしい悲劇を経験し、そうした悲劇を繰り返さぬために、たゆまぬ努力を続けてきた。そうした結果、「ジェノサイド」「人道に対する罪」といった概念が共有されるに至ったのだ。


 甚だしい人権侵害に対する抗議を「内政干渉」として一蹴しようとする行為は、あきれ返った厚顔無恥というべきだろう。この講演に対して、中国が「協調」を呼びかけたなどと解釈するのは、あまりに表層的だ。覇権主義を捨てようとしない中国の意図を読み間違えてはならない。


 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。