Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

夕張市のリゾートを失い、中国系企業を儲けさせただけ!? 強まる鈴木直道・北海道知事への不信感

2.4億円で売却したリゾートが15億円で転売され、その後破産


 2019年の北海道知事選で、同じ法政大学卒の菅首相の全面支援を受けて初当選した“菅チルドレン”、鈴木直道・北海道知事への不信感が強まっている。


「夕張再建をした若手市長」を旗印に道民の期待を受けて就任した鈴木知事だが、夕張市長時代に中国系企業に2億4000万円で売却した夕張リゾート(マウントレースイスキー場、ホテル)が、香港系ファンドに15億円で転売された後、2020年12月に営業停止・廃業・破産申し立てを行うことが発表されたのだ。


 地元・夕張市で鈴木市政(2011年4月~2019年2月)を問題視してきた熊谷桂子市議(共産党)はこう話す。


「30年以上の歴史のあるスキー場やホテルを抱える『夕張リゾート』は、地元観光振興の中核的施設で、市内最大の雇用の受け皿。だから2017年に中国系企業『元大グループ』に売却する際、鈴木市長(当時)は『長年の営業継続が前提の話』と市議会で説明、固定資産税免除も決めていました。その約束が破られたのだから、中国系企業や香港系ファンドに抗議し、営業再開や買い戻しを求めて直談判するなどの行動に出るべきです。しかし、鈴木知事は何もしていないのです」


約束を破った中国系企業に対して、鈴木知事は何の行動にも出ず


 中国系企業「元大グループ」(呉之平=ご・しへい=社長)が得た転売益は、推定で10億円以上。2020年12月25日の『財界さっぽろ』のオンライン記事には、地域と密着した経営戦略を語っていた呉社長の、買収当時のインタビュー記事(2017年6月号)が再掲載されている。


 しかしその2年後の2019年3月にスキー場とホテルは香港系ファンドに転売され、鈴木知事が市長時代に交わした約束は反故にされてしまったのだ。


 しかし鈴木知事はこの時、呉社長に「話が違う」「騙したのか」などと抗議することも、転売先の香港系ファンドに「長年の営業継続」を求める直談判をすることもしなかった。すでに選挙戦に突入していた北海道知事選で「夕張再建」の成果をアピールしていたというのに、自らが招いた“地元の危機”からは目を背けていたのだ。


結局、夕張市はリゾート施設を失い、転売した中国系企業を儲けさせただけ


『財界さっぽろ』2月号(1月15日発売)が「19年春の知事選では、インターネットニュースを中心に『売却時の条項に5年間の転売禁止などを盛り込まなかった』『外資にもうけさせただけ』などと、鈴木氏に対する批判の声があがっていた」と指摘したのはこのためだ(2019年5月2日の筆者記事「北海道版“モリカケ事件”!? 自民推薦の鈴木知事に中国系企業への利益供与疑惑  夕張市観光施設を格安で中国系企業に売却、その企業は転売で巨額利益!?」参照)。


 鈴木知事の市長時代の決定で、結果的に中国系企業に10億円を貢ぐ形になったとしても、「長年の営業継続」の約束が香港系ファンドにも引き継がれていれば、地元に大打撃を与えることはなかっただろう。


 しかし、突然のスキー場の営業停止で、雪質のいい歴史あるスキー場に常連客が通い続けることも、全国的に有名なインストラクターが指導する合宿・スキー留学などを継続することもできなくなってしまったのだ。


 都庁職員として夕張に派遣された縁で市長選に出馬して初当選、そして2期8年の実績をアピールして知事となった鈴木氏にとって、夕張市は“第二の故郷”のような存在のはずだ。自らを政治家として育て上げてくれた地域がピンチに陥っても、自らの失敗を挽回すべく奔走しないというのは不可解だ。


「やっている感」演出でお茶を濁す鈴木知事


 その後ようやく、鈴木知事がこの問題について言及した。2020年12月28日の会見で、夕張リゾート経営破綻について「驚きとともにたいへん残念と思っている」と語り、次のように続けたのだ。


「年明け早々に夕張市と国と道と連携した中で、プロジェクトといったものを立ち上げられるように、いま準備をしているところです」


 そこで年明けの1月21日に道庁を訪ねて、年明け早々に立ち上がっているはずのプロジェクトについて聞いてみると、「プログラムの間違いではないか」との回答。「夕張リゾート再生プロジェクトチーム」といった看板が掲げられた部屋で、夕張市と国と道の職員が活動を開始しているという私の予測は外れた。


 結局、すでにある「雇用危機対策推進事業(緊急雇用対策プログラム)」を道庁がスタートさせたのは1月22日。その中身は、経営破綻で仕事を失った「離職者等の再就職の促進に向けた活動を支援」する弥縫策にすぎない。


 夕張市内最大の雇用の受け皿だった「夕張リゾート(スキー場やホテル)」営業再開に向けた抜本的解決策ではまったくなかった。「『やっている感』演出でお茶を濁した」「自らの失敗への結果責任を取っていない」と批判されても当然だ。


鈴木知事は“第二の故郷”の危機を見て見ぬふりか、外資から取り戻すのか


 さらに鈴木知事は、1月22日に厚谷司・夕張市長から「地域の雇用と経済を守るための要望書」を受け取った。その場では「北海道としても、また私としても何ができるのかを考え、支えていきたい」と話したという。


 鈴木知事がやるべきことは、市長時代の決定が招いた“最悪の事態”を元に戻すことだ。「長年の営業継続」の約束を破った中国系企業から転売益10億円を違約金として吐き出させ、将来の退職金や年収を担保にするなどして計15億円を何とか調達すれば、香港系ファンドから夕張リゾートを買い戻し、スキー場やホテルを再開させることができる。


 地元の中核的な観光拠点であり、市内最大の雇用の受け皿でもある夕張リゾートを復活させることこそ鈴木知事の責務なのではないか。“第二の故郷”を踏み台にしただけで知らんぷりを続けるのか、それとも夕張の“宝”を外資から取り戻す先頭に立つのか。鈴木知事の真価が問われるのはこれからだ。


<文・写真/横田一>


【横田一】


ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数