Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「日本復活」の著者、今度は「中国の脅威」に挑戦

 日本でもお馴染みの経済社会学者、クライド・プレストウィッツ氏が新著で指摘している。
 ロナルド・レーガン政権下では商務長官の政策顧問を務め、自動車、半導体をめぐる日米摩擦、日米交渉に当たった。 経済戦略研究所(Economic Strategy Institute)所長だ。
 2017年に上梓した「Japan Restored: How Japan Can Reinvent Itself and Why This Is Important for America and the World」(邦題「2050 近未来シミュレーション日本復活」)は日本でも評判になった。
 中国による尖閣諸島侵入危機や日米豪印「クワッド」による自由民主主義勢力強化の動きを予見している。
© JBpress 提供 The World Turned Upside Down: America, China, and the Struggle for Global Leadership by Clyde Prestowitz Yale University Press, 2021
 新著は、「日本復活」以後の世界情勢を展望、中国の台頭で激変する世界で米国は何を為すべきかを解明している、


 タイトルは、「The World Turned Upside Down:America, China, and the Struggle for Global Leadership」(世界はひっくり返った:米国、中国、そしてグローバル・リーダーシップの葛藤)。
 プレストウィッツ氏は南シナ海に進出する中国の動きをこう見る。
「南シナ海を通過し、航行することは、米国と同盟国、パートナー国にとっては死活的に重要であり、何人もこれを妨げてはならない」
「南シナ海とその周辺の海域は米国、同盟国、パートナー国の商業上、安全保障上の利益と密接な関わり合いを持っているからだ」
「中国は好き勝手に南シナ海に境界線を引き領有権を主張、同地域にある島や岩礁に軍事施設を構築している。これに対し、関係諸国は実体のある、確固たる対応をせねばならない」
「その第1段階として、漁船による操業を中国に妨害され、脅されているフィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナム4か国は漁船と漁業操業者を守るための『漁船保護合同小艦隊』(Fisherman's Protection Flotilla)を創設すべきだ」
「4か国の海軍、沿岸警備隊から編成された小艦隊は南シナ海での警備警戒活動を実施、同小艦隊を日米仏の海軍、海上自衛隊が警護支援するというものだ」
(なぜフランスが含まれるのか。フランスは太平洋地域にあるニューカレドニア特別共同体や仏領ポリネシア海外領邦を統治しており、駐屯部隊もいる。「太平洋に利益を有する国家」だからだ)
「こうした多国籍的な警備警戒活動を展開させることで、同海域での中国の国際法違反行為、環境破壊的な行動を阻止せねばならない」
「米国は、この構想の下で、ベトナムとの相互支援体制を発展させ、日豪印比などとの同盟・友好関係を強化するのだ」
「軍事活動では米軍が主だった役割を果たすことは避けられない。だが他の諸国もそれ相当の役割を演じてもらわねばならない」
「すでにその役割を果たし始めている国もある。日本だ。日本は、ベトナム、フィリピン、インドといった国々への支援などで緊密に協力している」
「オーストラリアやインドも軍事力を強化,他国との協力に動いている。米海軍は大西洋や地中海にに展開している空母機動部隊をシンガポールに速やかに移動すべきだ」
「中国は、いずれ中距離弾道ミサイルや対艦巡航ミサイル、大陸弾道弾ミサイルを増強し、展開する。また空母発進の無人爆撃機や無人潜水艦や超音速攻撃兵器も増強する」
「これに対抗するために、米国はインドネシア、マレーシア、ベトナムとの合同軍事演習を実施すべきだし、この合同演習には日豪印も参加すべきだ」
「インドネシアなど周辺諸国には、無人偵察機、機雷、対艦ミサイル、移動式対空防衛システム、長距離ミサイル発射艦艇などを米国が供与すべきだ」
「日米豪などは、ベトナムのスプラトリー諸島(南沙諸島)、フィリピンのパグアサ島(中業島)、インドネシアのナトゥーナ島などの防衛支援を行う。これらの島々は、日米豪などの兵力展開拠点としては格好の場所になるだろう」
 南シナ海に米軍がしゃしゃり出て中国軍と対峙するのではなく、東南アジア諸国の混成部隊を展開させ、それを日米が護衛するという構図なのだ。
 自衛隊は完全にフル・メンバーとして米軍と行動を共にしている。米国が対中戦略との一環として日本に具体的に要求しているのは、まさにこれなのだ。
 当然、南シナ海の後は(あるいはこちらの方が偶発的事態としては先にになるかもしれないが)台湾だ。
「台湾は戦略的地点に位置している。中国軍が台湾を制すれば、日本、韓国、フィリピンその他の周辺諸国の防衛は最悪の事態を招くだろう」
「米国は台湾の指導者たちに、台湾をスイス化せよと助言し、そのために支援すべきだ」
「スイス化とは、何も台湾を中立国にせよと言っているのではない。第三国がスイスを武力攻撃するにはあまりにもコスト高であり、極めて困難な国家であることに鑑み、台湾をそんな国家にすべきだという意味だ」
「元米軍人が台湾のスイス化に向けた具体的な青写真を描いている。すでに防衛システム、防衛拠点、兵器などで台湾当局に助言をしている」
「このスイス化構想は、米国がここ20年、台湾のハリネズミ化と相通ずるものだ」
「敵が攻めてくると針を立てて身を守るハリネズミのように要塞化しようという戦略だ。『イスラエル化』という専門家もいる」
 リチャード・アーミテージ元国務副長官が立ち上げた「プロジェクト・2049・研究所」(Project 2049 Institute)などが検討、策定している。
(https://project2049.net/)
 ただ米台関係筋によると、台湾サイドは膨大な費用がかかることもあり、二の足を踏んでいるともいわれる。
 そこまでしなくとも、中国が攻めてくれば、米軍が出動してくれるだろうという淡い期待(?)を寄せている。
 いずれにせよ、米国内では外交専門家たちが、「我こそは第2のジョージ・ケナンだ」と、対中戦略の「Long Telegram」*1を書こうと競っている。
「米国の最大の財産」と煽てられた(?)同盟国では、「我が国はどのような関わり合いを持つのか」といった論議が始まっている。
 いよいよ日本はじめ同盟国ではそのことをめぐる論議が活発化しそうだ。
*1=ケナン氏が1946年、駐ソ連代理大使当時、本国に送った長文電報。その後、米国のソ連の封じ込め政策の基礎となった。