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安倍総理の志は死なない!!

小池百合子都知事、したたかに天敵・森喜朗会長“退治” 東京五輪後に国政復帰はあるのか

 一体、東京五輪はどこへ向かうのか。


 大会開催を5か月後に控え、国内で混迷を極めている。大会組織委員会の森喜朗会長が12日、自身の女性蔑視発言の責任をとり、辞任を表明した。2014年1月の組織委発足に伴い、大会開催へ向けてけん引してきたトップの急転直下の退場劇は国内外で大きな波紋を呼んでいる。後任を巡っても、森氏が指名した五輪選手村の村長で元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が一夜にして辞退する事態となり、混乱に拍車をかける形となった。


 森氏は3日に行われた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。女性は競争意識が強い」などと発言。この発言が女性蔑視と批判され、翌日に謝罪会見を行った。森氏を「ブラザー」と呼ぶ盟友で国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長をはじめ、JOCの山下泰裕会長ら“身内”は当初、森氏の会長続投を支持。政府やスポーツ団体からも辞任に踏み込んだ声は上がらなかった。


 しかし世間では、会見での対応などに対しても「不適任」の声がヒートアップ。不適切発言から5日間で五輪ボランティアが約390人辞退する異常事態に。深刻さは日に日に増し、IOCが手のひらを返すように「完全に不適切であり、IOCの公約とアジェンダ2020改革に矛盾した」と批判を始めた。


 こうした中で森氏と“犬猿の仲”とされる東京都の小池百合子知事は批判の急先鋒(せんぽう)に立つと思われたが、違った。5日に「きちんと、改めて説明してほしい」「五輪が別の意味で世界中にニュースを提供してしまっている」とコメント。翌6日も「絶句した。あってはならない発言」にするにとどめ、森氏の進退についてまでは言及しなかった。


 だが、言動に大きな変化がみられたのは10日。1月に森氏とバッハ会長が決定した4者会談への出席を拒否したのだ。「今、ここで開いてもあまりポジティブな発信にならない」。五輪主催都市トップによる異例の声明。前夜にはじっこんの仲とされる自民党の二階俊博幹事長と会談しており、「森降ろしか」などとさまざまな臆測を呼んだ。


 同日、小池氏と呼応するようにIOCの最高位スポンサーであるトヨタ自動車の豊田章男社長がついに「トヨタが大切にしてきた価値観と異なり、誠に遺憾だ」とする談話を発表。雪崩を打つように多くの国内スポンサー企業も「遺憾の意」を示し、一気に森会長辞任の流れに傾いた。


 声高に「辞任」を求めるより、意味深な“ボイコット”で世間の注目を集める。機を見るに敏な小池流のしたたかな引導の渡し方に見えた。森氏がついに辞意を表明すると、定例会見で「本当に東京2020大会の開催に向けて長年にわたって尽力されて来られました森会長には、改めてここで敬意を表したいと思います」と涼しい顔でねぎらってみせた。


 “犬猿の仲”の始まりは2008年までさかのぼる。当時、森氏が自民党の総裁選で麻生太郎氏(現・財務相)を推した際に、それまで良好な関係だった小池氏が立候補したのが原因になったとされている。


 小池氏が都知事に就任した16年、五輪開催費用の削減を求めボート・カヌーの会場「海の森水上競技場」など3会場の建設中止を含めた見直しを提案したが3会場とも計画通り新設することになり、森氏に屈する格好となった。また19年にはIOCが突然マラソンと競歩の札幌移転計画を公表。これを事前に聞いていた森氏とは対照的に、小池氏は蚊帳の外に置かれる形となり「合意なき決定」と皮肉を込めた。


 今回の騒動によって、最終盤で天敵に大逆転した小池氏。その言動が引き金になったと見る向きもある。前都知事の舛添要一氏は13日、自身のツイッターで「さまざまな政治勢力が、この事態を利用する。それは、7月4日の都議会選挙と秋までのどこかで行われる衆院選を控えているからである。その政治利用の先鞭(せんべん)をつけたのが小池都知事である。総理の座を目指すその野望を暴く」と記した。


 永田町かいわいでも今なお、小池氏の国政復帰をささやく声はある。二階氏との太いパイプが、その声に説得力を持たせる。1月末に行われた千代田区長選では、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が推薦する元都議の樋口高顕氏が初当選。都議選に弾みをつけた。


 かつては女性初の首相候補とも言われた小池氏。仮に都議選に勝ち、新型コロナを封じ込め開催予定の五輪で“東京の顔”をアピールできれば国政復帰の道も開けてくるのではないか。また開催が困難な状況になったとしても、その対応次第で支持を拡大することはできるだろう。


 3月25日に聖火リレーが福島・Jヴィレッジをスタートする。待ったなしの状況だ。小池氏が一筋縄ではいかないIOCや政府、組織委の新会長とどう渡り合っていくのか。その動向を注視したい。(記者コラム 江畑 康二郎)