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安倍総理の志は死なない!!

「海警法は国際法違反」と発信求める与野党 政府は「運用次第」

 中国海警局に武器使用の権限を付与する海警法の施行を受け、政府は「問題のある規定を含む」(菅義偉首相)と懸念を深める。ただ、法律そのものが国際法に反するとの立場はとっていない。内容にあいまいな点が多く、中国の運用に左右される面が大きいためだ。与野党からは「国際法違反」と発信するよう求める声が強まっており、領域警備法の整備など、新たな対応を検討する動きも出ている。(石鍋圭)


 「国際法違反だと明確にいうことが大事だ」


 国民民主党の前原誠司元外相は17日の衆院予算委員会で、政府にこう迫った。首相は「わが国の強い懸念を中国にしっかり伝えたい」と述べるにとどめた。


 国連海洋法条約30条は、領海で沿岸国の法令を順守しない場合は「退去要請」を行うことができると規定する。一方、海警法22条は「武器使用を含むすべての必要な措置」が可能とし、対象も限定しない。前原氏はこうした点が国際法違反に当たると主張する。


 ただ、政府関係者は「海警法をただちに国際法違反と指摘するのは困難」と慎重な立場を崩さない。


 国連海洋法条約は「沿岸国は無害でない通航を防止するため、領海内で必要な措置をとれる」(25条)とも定める。海上保安庁の巡視船も、条件を満たせば外国公船などへの最小限度の武器使用ができる。外務省幹部は「この論点で中国を批判すれば海保の武器使用にも跳ね返る。海警法が国際法違反に当たるかは中国の運用次第だ」と語る。


 しかし、海警法に不透明な点が多いのは事実だ。「管轄海域」での武器使用や強制退去を可能とするが、具体的な範囲や要件は明確ではない。そもそも中国は1992年に制定した領海および接続水域法で尖閣諸島(沖縄県石垣市)を自国領土と位置づけ、領海侵入を繰り返す。既存の国内法や従来の行動と合わせて考えれば「尖閣周辺での運用」(自民党中堅)が念頭にあるのは明らかだ。


 政府も危機感は共有している。茂木敏充外相は「国際法に反する形で適用されてはならない」と述べていたが、今月9日から「深刻な懸念」と表現を強めた。同時に、領海侵入や日本漁船への接近など、中国海警船舶の活動自体は「国際法違反」と明言した。米国とも懸念を共有し、国際的な圧力形成にも努めている。


 それでも中国側の領海侵入は止まらない。自民党では「中国は米国のメッセージさえ意に介さない。新たな行動が必要だ」との指摘が相次ぐ。党国防議員連盟は今月から、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」に海保と自衛隊が切れ目なく対処する領域警備法案の検討に着手した。


 同法案は中国軍投入の口実を与えかねない「もろ刃の剣」(前原氏)の側面もあるが、リスクばかりに目を向けてはいられない局面になっているのが実情だ。