ネコウヨの散歩

ネコと憂国

国際法や自由社会を踏みにじる中国 尖閣は異質の価値めぐる「戦争」

 中国が、沖縄県・尖閣諸島への攻勢を強めている。15~16日にかけて、中国海警局の船4隻が尖閣周辺のわが国領海に相次いで侵入した。1隻は機関砲らしきものを搭載していた。


 中国政府は1日、海上警備を所掌する海警局に武器使用の権限を付与する海警法を施行した。施行後、武器搭載船の領海侵入は初めてだ。尖閣諸島攻勢へのステージを高めたかたちだ。


 今後、同様の動きを繰り返し、常態化させるだろう。そのうえで、さらにステージを高めるはずだ。長期戦を視野に入れ、ジワリジワリと「尖閣諸島の実効支配」を狙っている。


 この動きは、新疆ウイグル自治区でのウイグル族への「ジェノサイド(集団殺害)」とも通底した動きだ。南シナ海の岩礁を無理やり埋め立てて領土化する動きもそうだが、これらは今日の国際法や、自由社会の「自由・民主主義」「法の支配」「基本的人権の尊重」という普遍的価値を踏みにじるものだ。


 自分たちはそのような価値を尊重することなく、まったく別の価値に立脚すると言い放っている。その意味では、尖閣諸島への攻勢は古典的な領土拡張欲に基づくものではない。国際法や自由社会の普遍的価値を否定し、別の価値に基づくことを行動で示しているといえる。


 ウイグル族へのジェノサイドもそうだ。


 中国政府は、英米による「ジェノサイド」との指摘を事実上黙殺している。「基本的人権の尊重」という価値は、中国には無関係と言っているに等しい。日本の外務省の担当者が「ジェノサイドとは認めていない」と発言したことを、中国政府は「しめた」と思ったことだろう。


 香港の民主主義弾圧も「自由・民主主義」を否定するものだ。中国国内では「自由・民主主義」は異質な価値だ。排除するのは当然ということだろう。台湾侵攻を視野に入れているのも、単なる領土拡張欲ではなく、自分たちの価値とは異質な政治体制は認めないということでもある。


 このように考えれば、われわれが突き付けられているのは、国際法や自由社会の普遍的価値とは異質の「価値」を持った大国との価値をめぐる「戦争」が行われているという現実だ。


 かつてのソ連とのイデオロギーをめぐる戦争の再来と考えてもよいが、かつてのソ連と異なるのは、中国が経済大国となり、人口が莫大(ばくだい)であることだ。また、対峙(たいじ)すべき自由社会の雄である米国が国力を落とし、「世界の警察官」の機能を果たし得ないことだ。


 必要になるのは自由社会の結束だが、その枢要な位置に立つ覚悟を日本は持たなければならない。そうでなければ尖閣諸島は強取される。


 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。皇室法制、家族法制にも詳しい。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学国際学部教授。内閣官房・教育再生実行会議有識者委員、山本七平賞選考委員など。法制審議会民法(相続関係)部会委員も務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)、『明治憲法の思想』(PHP新書)など多数。