Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

強まる北京五輪ボイコットの声と沈黙のバイデン政権

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)


 米国で連邦議会を中心に、2022年の北京冬季五輪開催に反対する声が強まってきた。


 ウイグルでのジェノサイド(計画的な大量虐殺)とされる民族弾圧や、武漢で発生した新型コロナウイルスの当初の隠蔽工作など、人道主義をこれほど踏みにじる中国政府に、世界友好の精神を掲げる五輪開催の名誉を与えることはできないというのが反対の理由である。


「オリンピック主催国の資格に欠ける」
 2月下旬、米国連邦議会の下院では、共和党のマイケル・ウォルツ、ジョン・カツコ、ガイ・レシェンタラーの3議員が共同で「北京冬季五輪からの撤退の呼びかけ」と題する決議案を提出した。


 同決議案は、中国共産党政権の種々の人権弾圧を理由に、米国の政府やオリンピック委員会に対して2022年の冬季五輪を中国以外の地に移すための行動をとることを訴え、もし実現しない場合は米国として北京五輪をボイコットすることを求めていた。


 同決議案は「2020年の1年だけの間にも中国共産党政権は五輪主催国としての資格に欠ける極悪な人権弾圧の行動を働いてきた」として、以下の事例を指摘している。


・新疆ウイグル自治区でのウイグル人や他のイスラム系少数民族に対するジェノサイドや大量拘束


・香港に関する「一国二制度」の枠組みを破壊し民主主義と人権を侵害する行為


・中国国内での各宗教信仰に対する規制と抑圧


・新型コロナウイルス感染拡大の世界保健機関(WHO)への報告義務の怠りと、武漢の医師からの報告への圧力


 3議員による同決議案は、そのうえで「今や合計180万人ともみられるウイグル人、カザフ人らが、正当な司法手続きを経ず中国当局によって大量拘束され、強制労働、拷問、政治的な洗脳を強いられている」と強調し、対応として以下の措置を求めることを明示していた。


・米国オリンピック委員会が国際オリンピック委員会(IOC)に2022年冬季大会を中国以外の地で開催することを提案する。


・もしIOCがその提案を拒否した場合、米国オリンピック委員会や他の諸国のオリンピック委員会は2022年冬季大会から撤退すべきである。


・米国の国務長官はこの決議案の内容をIOC参加の各国の政府に伝え同意を求める。


 以上の内容を踏まえ、提案者のウォルツ議員は改めて「この決議の導入によって米国議会は、ウイグル人のジェノサイド、香港での民主主義弾圧、中国本土での宗教抑圧、さらには武漢ウイルスの隠蔽工作などに対する中国政府の責任を追及する」と述べるとともに、「IOCは冬季大会を中国から他の国に移すことを今のところ拒んでいるようである。そこで私たちは仕方なく北京五輪のボイコットを呼びかけることとなった。現在、世界は残虐な中国政府に五輪主催国という国際的な名誉を与えることは明らかに好んでいない」と説明した。


批判されるバイデン政権の「対中融和」姿勢
 米国議会ではこの動きのほかに、同じ2月下旬、下院外交委員会の共和党側筆頭メンバーのマイケル・マコール議員が、米国の北京五輪参加選手たちに中国政府の人権弾圧の実態を周知させることを義務づける決議案を提出した。


 また上院でも2月中旬に、やはり共和党のリック・スコット議員が中国政府の人権弾圧を非難して、中国政府が自発的に2022年冬季大会の開催を他の国へ譲ることを要求する決議案を上院本会議に提出した。


 上下両院での北京五輪に対するこの種の抗議の動きは、今のところ共和党議員に限られている。民主党議員は沈黙を保っており、米国の立法府でも共和、民主の両党の間で中国に対する姿勢に相違があることが見てとれる。


 北京五輪に抗議する共和党議員たちは、バイデン政権に対しても中国への同様の抗議の態度を明確にするよう要請してきた。だがバイデン政権は北京五輪のボイコットについては何も述べておらず、共和党側から「中国政府への融和の姿勢」として批判されている。


 この北京五輪への対応は、米国の国政の場でこれからさらに論議を広めることが予測される。