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安倍総理の志は死なない!!

2022年、北京五輪後に台湾侵攻狙う中国

 中国は海警法を制定し今年の2月1日施行した。海警法によると、中国がいう「管轄海域」で、外国船に対し武器を使用できるようになった。


 注目すべき点は、海警が法執行のみならず「軍事作戦」を遂行できるようになったことだ。


 2018年7月、中国の習近平国家主席は海警局強化を指示し、海警局は武装警察部隊(以下「武警」)に編入された。


 武警は同年1月、既に人民解放軍と同じ中央軍事委員会直属となっている。これにより海警は中国海軍と一体化した。


 海警局のトップも海軍出身である。中央軍事委員会の命令一下、海警は海軍と共に「軍事作戦」を遂行できる「第2の海軍」になったのだ。


 今年1月1日には、改正「国防法」が施行された。主権や領土の保全に加えて、海外権益などを軍事力で守る方針を明記しており、共産党への忠誠を義務化して軍民の総動員を確実にした。


 これらの法整備は、もちろん台湾の武力統一が念頭にある。台湾有事があれば、日本に戦火が及ぶのは避けられない。他人事ではない。


 我々は中国の台湾侵攻について「まさか」と捉えるのではなく、「もしかして」と捉え、最悪を想定して準備をしておく必要がある。


 戦争準備が抑止力となる。


 習近平国家主席は2013年3月に就任以来、「中華民族の偉大な復興」という壮大な目標を掲げてきており、その最大課題は台湾の統一である。


 習近平主席には野望がある。彼は「毛沢東チルドレン」と言われるように、彼の野望は第2の「毛沢東」になることだ。


 終身主席になり、死ぬまで独裁者として中華帝国に君臨することだ。これを実現するには、習近平氏の手で「台湾統一」を成し遂げなければならない。


 中国ではこれまで、毛沢東への熱狂的な追従が文化大革命の悲劇を生んだという反省から、指導者の個人崇拝を禁じてきた。


 だが2017年には、党規約に「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)と個人の名を明記した。個人名を冠した思想は鄧小平・毛沢東以来である。


 2018年には、中華人民共和国憲法を改正し「習近平思想」を盛り込んだ。また同年、国家主席の任期を2期10年とする制限を撤廃した。


 最近では、文化大革命時に毛沢東を賛美するために歌われた「東方紅」の歌詞を変え、習近平総書記を賛美する動画もネットで流されている。


 着々と終身独裁者への準備は進んでいる。


 残るは終身主席に就くためのレガシー造りである。選挙のない中国では、トップに君臨するためには、誰もが納得するレガシーが必要となる。


 2期10年の期限がくる2023年までに北京オリンピックを成功させ、台湾統一を実現することは、野望を担保する必須のレガシーである。


 今年2月、習近平主席は北京オリンピックについて「盛大な大会の開催に自信を持っている」と述べた。


 これに反し、米共和党上院議員6人は、「中国は新疆ウイグル族の集団虐殺を犯し、香港人の人権を制限し、台湾を威嚇している」とし、「共産主義の中国で2022年のオリンピック開催を許可してはならない」との決議案を、国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。


「環球時報」は即座にこれに反応した。


「どこかの国がボイコットすれば北京は必ず報復する」と。習近平主席にとって、北京オリンピック成功がいかに重要なレガシー造りであるかが伺える。


 何と言っても最大のレガシーは台湾統一である。


 2019年1月、習近平主席は台湾統一に向けて「武力使用は放棄しない」と明言した。


 2020年10月には台湾への武力行使を念頭に「祖国の神聖な領土を分裂させるいかなる勢力も絶対に許さない。中国人民は必ず正面から痛撃を与える」と述べた。


 これに呼応して人民解放軍のトップである許其亮中央軍事委員会副主席は「受動的な戦争適応から能動的な戦争立案への態勢転換を加速する」と述べた。


 新華社通信も「戦争準備の動きを強化する」と主張した。国務院台湾事務所は今年2月、「武力行使の放棄は約束しない」と述べている。


 台湾侵攻の作戦準備は着々と進んでいる。約1万人態勢であった海兵隊を今年中に3万人態勢に増勢する。潜水艦も56隻から2022年には約70~80隻へ増勢するという。


 米海軍の潜水艦は現在71隻態勢である。だが米海軍の場合、担当海域が全世界の海域に及ぶ。これに対し、中国の場合、台湾侵攻だけに約70隻を投入できる。数的優位は明らかである。


 水上艦艇については、数的優位はすでに中国海軍にある。


 現在、中国海軍艦艇数は約350隻なのに対し、 米海軍は293隻である。世界最大の海軍の座は既に中国に奪われており、米海軍の焦燥感は強い(2020 China Military Power Report)。


 台湾侵攻のための法整備はほぼ整った。


 2010年に国防動員法、2015年には国家安全法が施行され、2017年には国家情報法およびサイバー・セキュリティー法、そして今年には改正国防法と海警法が施行された。


 問題は武力侵攻のタイミングである。


 北京オリンピック成功をレガシーにしたい習近平主席にとって、北京オリンピック後でなければならず、その終了直後の蓋然性が高い。


 2014年3月、ロシアはクリミア半島を武力で併合した。この時も2月のソチオリンピックの終了直後であった。


 北京オリンピック直後の可能性は歴史のアナロジーからも言える。


 これまで中国は、なぜ台湾武力侵攻を行わなかったかというと、兵力が所要に満たなかったことが大きい。


 同時に「ナッシュ均衡」が保たれていたと主張する学者もいる。「ナッシュ均衡」とはゲーム理論の用語で、「誰も戦略を変更することによって利益がない」状態をいう。


 中国は「台湾が独立宣言しないかぎり、武力行使はしない」という戦略だった。台湾は「中国が武力行使しない限り独立宣言はしない」としていた。


 米国は「中国が台湾に侵攻しない限り軍事力行使はしない」戦略だった。この三竦みの状態が「ナッシュ均衡」である。


 この「ナッシュ均衡」を崩せるのは、習近平主席の野望だけである。


 国家主席の任期は撤廃したものの、任期が来る2023年までに輝かしいレガシーがなければ、習近平氏でも主席の座を譲らねばならない。


 野望実現には「台湾統一」という輝かしいレガシーがどうしても必要なのである。


 もちろん米国のジョー・バイデン政権が戦争をも辞さず台湾を守るという覚悟を示せば「ナッシュ均衡」は維持されるだろう。今後のバイデン政権の対中姿勢次第ともいえる。


 2013年9月、当時のバラク・オバマ大統領は「米国はもはや世界の警察官ではない」と宣言した。このメッセージがウラジーミル・プーチン氏をしてクリミア半島の軍事併合を決心させた。


 バイデン大統領がオバマ氏と同じ轍を踏まぬよう、日本は米国に働きかけねばならない。日本も覚悟を示し、万全の準備しておくことだ。


 最近、中国は台湾の防空識別圏に多数の戦闘機が侵入させ、台湾周辺における軍事活動を活発化させている。


 また海警法制定以降、尖閣周辺では以前にもまして海警の行動が挑発的になっている。中国は日米の覚悟を探っている。


 北京オリンピックまで、残された時間はあと1年足らずしかない。だが、北京オリンピックの成功をレガシーとしたい習近平主席は、この間に流血をみる行動はとれない。


 この間を使って、これまで中国を刺激するとして控えてきたことを実行することだ。ピンチはチャンスである。


 尖閣諸島に船泊、ヘリポート、灯台、居住施設などを作る。あるいは1970年代以降、使用していない米軍専用射爆撃場である久場島、大正島を使い、日米共同で射爆撃訓練を実施する。


 海警法改正にあわせて、海上保安庁の権限、能力を上げることも必要だ。


 法改正はすぐにできるが、装備や能力の充実には時間がない。海自艦艇の巡視艇としての活用、海自のベテランOBの海上保安官としての活用など、1年以内にできる策について、知恵を絞る必要がある。


 並行して陸海空自衛隊が臨戦態勢を完整させておくことだ。


 北京オリンピックまでの期間は、習近平主席の手足が縛られたチャンスである。日米で認識を統一し、台湾侵攻に備えるあらゆる準備をする期間と捉えるべきだ。


 日米の緊密な連携と作戦準備が習近平主席の野望を挫き、結果的に平和を維持することになる。


「汝、平和を欲するならば、戦争に備えよ」と言う戦略家リデル・ハートの箴言を今こそ思い起こすべきである。