Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

聞く耳を持たなくても中国にものをいいつづけろ

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
 最近、北朝鮮がやけにおとなしい。代わりに、中国のニュースがやたら頻繁にある。
 コロナウイルスの発生源は不明だが、調査要求をしたオーストラリアに対しては大麦やワインの輸入規制をかけたり、台湾産のパイナップルを輸入禁止にしたりという、けちくさい嫌がらせから、南シナ海での人工島の軍事基地の急造、相変わらずの尖閣諸島の領海侵犯、台湾に対する威嚇、スリランカのハンバントタ港を債権のカタに99年間、中国国有企業の租借地にしたりと、ならず者国家ぶりを発揮している。
 国内では、ウイグルや内モンゴルやチベットを弾圧し、香港の民主派を好き勝手に逮捕して、民主化を徹底的に抑圧している。中国に批判的な国の国民を、報復としてスパイ容疑で逮捕起訴し(2015年以降、日本人9人が「スパイ行為」で実刑判決を受けている)、人権派弁護士を強権的に逮捕拘禁し、政府に批判的な市民ブロガーをとっつかまえたりして、もう怖いものなし、やりたい放題である。
 世界最大のネット人口をもつ中国であるが、国民はツイッター、フェイスブックなどのSNSを使用できない。インターネットにも厳しい規制がある。ウィキペディアによると、数百台のスーパーコンピュータによってネット内容が自動検閲され、インターネットポリス(網警)やネット秘密警察(世論分析官)は10万人から200万人いるとされる。政府に不都合な批判が現れると、通常は数分で削除される。
つづく香港の民主派抑圧
 香港の「民主の女神」周庭氏が昨年12月2日に、禁固10か月の実刑判決を受けてから、3か月が経った。上訴・保釈申請をしたが却下され、彼女は「失望しています」「刑務所の生活に慣れず、体調がよくありません」との言葉を残した。12月5日、中国の唐一軍司法相は「中国の憲法は当然、香港に適用される」と述べた。
 周庭さんは保釈されるどころか、年末には、重大事件の受刑者が収容される香港・新界地区の大欖女子懲教所に移送されたという。移送前の周庭さんは、寒さのため服を7枚重ね着をしていたといわれるが、それを最後に、彼女のその後の情報が断たれている。
 香港政府はその後も民主派に対する締め付けをゆるめず、今年1月6日、活動家や区議ら53人を国安法(国家安全維持法)違反容疑で逮捕した。7日、加藤勝信官房長官は「我が国の立場に照らし、許容できず、重大な懸念を強めている」と述べ、9日には米、英、カナダ、オーストラリアの外相が「深刻な懸念」を表明した。しかしこれらはなんの役にも立たず、それどころか当局はこれが我々の回答だというように、2月28日、さらに民主派の議員・区議47人を逮捕したのである。
 中国を見ていると、世界を実効支配しているのは経済力と軍事力だということが明白である。欧米にはまだ自由と民主主義という理念があるが、中国にはそんなものはなにもない。理念は聞く耳を持っているものにしか有効ではない。中国は世界にとっていいことはなに一つせず、ただ災厄だけを振りまいているのである。世界は口だけは出せるが、手も足も出ない。
国連監視団を入れる気のないウイグル弾圧
 2021年1月16日、ウイグルにおける中国の「大量虐殺」の事実が次のように報じられた。「中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会(CECC)は、1月14日に公表した報告書で、中国当局が、新疆ウイグル自治区のウイグル族などのイスラム教徒少数民族に対し、国際法上の犯罪である『ジェノサイド(民族大量虐殺)』を実施している可能性があると指摘した」。報告書はさらに「自治区ではウイグル族やカザフ族、キルギス族などの少数民族や約180万人が『広範かつ組織的』に施設に収容され、強制労働に加え、拷問や政治教化を受けているという」事実を指摘し、米政府がジェノサイドであると公式に認定するよう促した。
新疆ウイグル自治区で中国当局が「大量虐殺」 米議会委員会が報告書で可能性示唆(産経デジタル、2021.1.16)
 1月19日、ポンペオ国務長官(当時)が「ジェノサイド」と認定、ブリンケン国務長官も「同じ判断だ」といった。が日本では、自民党の外交部会が外務省に質問した結果、「認めていない」との回答(これについては高橋洋一氏が、国内法が整備されていないから、法律を作って、ジェノサイド条約に入ればいいだけのこと、といっている)。その前にとりあえず日本では、ジャーナリストの有本香氏がいうように、今国会で中国のウイグル弾圧を非難する「国会決議」が望まれる。
 2月5日、BBCは「新疆ウイグル自治区の収容施設に入れられたウイグル族の女性らが、組織的なレイプ被害を受けた」と報じた。この報道を受け、米英などの政府は「深く憂慮している」と懸念を表明。オーストラリアのマリス・ペイン外相は、国連の監視団が新疆ウイグル自治区に入ることが許可されるべきだと述べた。
 これに対し中国外務省の汪文斌報道官は、「女性に対する組織的な性暴力や性虐待はまったくない」と話し、中国国内のすべての施設は人権ガイドラインに沿って運営されていると説明した。そして盗人猛々しくも、「中国は法治国家であり、人権は憲法で保障され守られている。そのことは法制度に盛り込まれており、政府はその法制度の下で機能している」と主張したのである。さらに23日、同報道官は、レイプ証言をしたウイグル族の女性の写真をわざわざかざして「うそつき」と非難した。
 だが国連監視団については、以前にフィンランドのマリン首相がウイグルでの人権侵害を非難したとき、中国は「新疆は開放されており、誰でも歓迎するが、人権の旗印を振りかざした有罪推定式の調査なら受け入れない」と強く反発していて、調査を受け入れるつもりは毛頭ないのである。
 中国が「法治国家」で「人権は憲法で保障され守られている」というのは片腹痛い。悪法をつくり、なおかつそれを恣意的に運用して「法治」というのは、ただのおためごかしだし、「人権」が守られていないことは事実が示している。
 ウイグルだけではない。昨年11月、中国北部に広がる内モンゴル自治区で標準中国による教育の義務化に抗議したが、労して功無し。昨年8月末からの抗議デモやボイコットには数万人が参加したが、義務化とはいえ、ウイグルとおなじ「中国化」の強制であろう。チベット自治区でも同様の行為が進んでいる。
人権批判は内政干渉か
 ウイグルでの弾圧の問題は2022年の北京冬季五輪ボイコット問題へと拡大している。
 昨年10月の時点で、英のラーブ外相がウイグル族の人権侵害をみて、北京五輪のボイコットを示唆した。それ以後、香港での自由弾圧、台湾への威嚇などをみて、この声は高まっている。米共和党の議員が北京五輪をボイコットするよう求める決議案を下院に提出、カナダの下院はウイグル自治区と五輪の開催地変更に言及した動議を可決。英国自由民主党のデービー党首は北京五輪ボイコットを要求。カナダのトルドー首相も事態を注視していると発言した。
 2月23日、中国外務省の汪文斌副報道官は、カナダ下院が可決した新疆ウイグル自治区に関する動議について「事実や常識を無視し、乱暴に中国の内政に干渉した。強く非難し断固反対する」と反発した。さらに、北京冬季五輪の開催地変更についても「スポーツを政治化し、オリンピック憲章の精神に完全に背いている」と主張した。
 だがもちろん、中国が政治(国威発揚、宣伝)にスポーツをもちこんでいるのである。本当は「オリンピック憲章の精神」など屁とも思っていない。感心なのは、中国は、まったくの頓珍漢・的外れ・妄言であっても、批判に対してはかならず強い言葉で反論することである。しかも口論の勝敗の常道である最後の発言を、つねに中国側の反論で終わらせているのだ。だがこれがわたしは気に入らない。
 中国側が証言者の写真など持って「うそつきだ」といっても意味はない。かれらは単純に国連の調査団を受け入れればいいだけのことである。どんなにいい繕っても人権問題は中国の急所である(北京五輪のボイコットも本気で嫌がっているように見える)。いらいらして打ち消しに必死だが、元々無理である。
 2月22日、中国の王毅外相は、米中関係をめぐるオンライン・フォーラムで演説した。中国は「人権の発展を保護・促進している」、生存権や発展の権利を「最重要の基本的人権」に据えていると主張した。しかし、これもただいっているだけにすぎない。日本は人権と内政干渉に関して、国連でも記者会見でも中国に論戦をしかけよ、といいたい。
 人権の問題を指摘することが内政干渉にあたるかどうかについては、次のような説明がある。
「いろいろの国の人権問題の現地調査などが行われるようになるにつれて、『特定の国の人権問題は、その国の内政問題ではあっても、国際社会の関心事でもあり国際連合がこれに関わることをさまたげられない』という考えが広く受け入れられるようになったのです。この考えは、1993年オーストリアのウィーンで開かれた世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画で、『すべての人権の伸長及び保護は国際社会の正当な関心事項である』と文書で確認されました」。
他の国の人権のことを批判するのは、「内政干渉」ではないのですか?(ヒューライツ大阪)
 例えば、第二次大戦時のナチスに内政干渉をいう資格がないことは自明のことである。ウイグルその他の自治区で弾圧し、香港で民主派を抑圧し、中国はいったいどんな理想的な社会を作ろうというのか。莫大な金と多数の官憲というコストをかけてまでやることか。その社会では国民は、自由と民主主義の国民以上に幸せになれるのか。
日本政府は弱腰の態度を改めよ
 日本共産党の志位和夫委員長が3月1日、次のように指摘した。「中国側が初めて公式に領有権を主張したのは1971年のことです。その翌年に国交正常化となったわけですが、交渉の際にはっきりとものを言わないだらしない態度をとったことが、現在に至るまで尾を引いています。(略)中国共産党はたいへんに大きな政党だが、正論で向かってこられることを嫌がるところがある」
 まったく正論である。日本共産党は中国に対して、チベットの人権問題、劉暁波氏の投獄問題、南シナ海や東シナ海での覇権主義的行動、香港やウイグルでの人権抑圧など、「是正を求めてきました」。かれらは無視しているが、「事実と道理と根拠を示して述べ、国際社会の同意を得ることが重要になる。日本政府は弱腰の態度を改めて、今こそ言うべきことをきちんと言わなければならない」。わたしは日本共産党支持者ではないが、再びいう。これまたまったくの正論である。
日本共産党・志位和夫委員長が習近平・中国共産党を痛烈批判(NEWSポストセブン、2021.3.1)
 尖閣諸島が日本領であることに関して、昨年12月15日、そのことを証明する英国と独国の地図が確認された。「尖閣諸島(沖縄県石垣市)を日本領と記した19世紀後半の英国製とドイツ製の地図(「ロンドン・アトラス」と「ハンド・アトラス」)が新たに確認され、政府が対外発信に活用する方向で調整していることが15日、分かった。いずれも台湾との間に国境線が引かれ、明治28(1895)年に領土編入する以前から欧州では尖閣諸島が日本領であると認識していたことを示している」
「尖閣は日本領」地図 政府が対外発信検討 中国主張覆す(THE SANKEI NEWS、2020.12.15)
 内閣官房領土・主権対策企画調整室はこの資料を「領土・主権展示館」(東京都千代田区)での展示やホームページへの掲載などを検討しているというが、その後ちゃんとやっておるのか。
 今年2月1日、中国は海警局公船の武器使用を認める「海警法」を施行した。接続水域では4隻が常駐、そのうち1隻は機関砲搭載。2月23日、アメリカ国防総省のカービー報道官はこの中国の動きに対して、「尖閣諸島の主権について、我々は日本を支持する」と発言、中国海警局の行動は「国際ルールを無視し続けている」と非難した(カービー報道官は26日、尖閣における日本の主権を支持するという前言を撤回した。米政府は日本の施政権を認めてはいるものの、主権に関しては日中どちらとも明言はしていない)。
 この発言に対し24日、おなじみの汪文斌副報道局長は「釣魚島と付属島しょは中国固有の領土だ」と反論した。さらに汪副局長は「米日安保条約は冷戦の産物で、第三国の利益を損なってはならず、地域の平和と安定を脅かしてはならない」と主張した。またバイデン米大統領が、中国で拘束中のカナダ人2人の解放を支援すると述べたことについても、汪氏は「中国の司法主権への干渉を許さない」と批判した。
中国、尖閣めぐる米発言に反論 カナダ人解放支援も批判(JIJI.COM、2021.2.24)
尖閣諸島の主権に議論の余地はない
 中国海警局の「海警法」施行の2月1日から1か月。尖閣諸島の領海侵入は6日、このうち3日は日本漁船を追尾。その際、中国公船は「ここは中国の領海だ。領海から出なさい」という主張をしている。加藤勝信官房長官は3月1日、「中国公船による尖閣周辺の日本領海侵入を国際法違反と批判した上で、『海警法施行後、接続水域での航行、領海侵入、日本漁船への接近が相次いでいることは極めて深刻で、引き続き緊張感を持って注視する』と懸念を示した」(毎日新聞、2021.3.2)。
 毎度おざなりの「懸念」表明である。2月25日、日本政府は中国の「海警法」施行に対し、尖閣諸島に外国公船から乗員が不法上陸を強行しようとした場合、それを阻止するために、警察官職務執行法の準用及び海上保安庁法18条の適用により、海上保安庁が「危害射撃」をすることは可能との見解を示した。
 中国国防省は3月1日、連日のように繰り返している尖閣の領海侵入について、ぬけぬけと「中国公船が自国の領海で法執行活動を行うのは正当であり、合法だ。引き続き常態化していく」とSNSで発表、同時に日本が危害射撃をするという方針に対しても、「いかなる挑発行為にも断固対応する」と発表した。また王毅外相は3月7日、「海警法」は「特定の国を対象としたものではない。国際法に完全に合致している」と述べた。
 このように、中国は自分の都合のいいように「国際法」を口にし「内政干渉」を口にする。だがかれらはそんなものを一切信用していない。2016年、フィリピンが南シナ海の領有権をめぐって、国際仲裁裁判所に申し立てたとき、中国の戴秉国・元国務委員は、裁判所が示す判断は「ただの紙くず」にすぎないといった。そういう国である。
 先に触れた志位委員長は「正面切って、尖閣諸島は日本の領土であるという国際法的、歴史的な根拠をぶつければ、争う余地がない問題のはずです」と明確に述べている。日本は尖閣諸島の主権については議論の余地はない、中国の国際法違反は明白であると主張しつづけることである。「中国公船が自国の領海(で活動するのは)合法だ。引き続き常態化していく」など、妄言である、と断固としていうべきである。
匿名筆者による「米国の新たな対中国戦略」論文
 1月28日、米のシンクタンク大西洋評議会から匿名の筆者(元米政府高官らしい)による「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題された長文の対中戦略の論文が発表された。その要約版が長谷川公洋氏の前後編のネット記事で紹介された。
習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容(現代ビジネス、2021.2.19)
習近平、ついに“自滅”か…アメリカの論文が予想した中国「大崩壊」の末路(現代ビジネス、2021.2.26)
 論文の内容は、次のようなものだ。「21世紀に米国が直面している、もっとも重要な挑戦は、国家主席であり中国共産党総書記の習近平氏が率いて、ますます全体主義を強めている中国の台頭である。中国の経済力や軍事力、技術革新のスピード、米国とは根本的に異なる世界観のために、中国の台頭は米国のあらゆる国益に深刻なインパクトを与えている」
 いまや「自分を取り巻く世界を組み替えようと決心した国家になってしまった」中国は「民主的な世界全体に対する深刻な挑戦」であり、対中戦略は「中国共産党全体を相手にするのではなく、もっと狭く、習氏個人に焦点を絞った戦略」でなければならない。すなわちアメリカは「党エリートと習近平を区別するように、政府と党エリートも区別しなければならない。この点は、もっと穏健な習氏の後継者が姿を現してくるにつれて、一層重要になる」というものである。なぜなら「中国共産党は習氏の指導力と壮大な野心をめぐって、とてつもなく分裂している」からだ。
 要するに、「習氏と不満分子との亀裂を深めて、習氏を権力の座から退場させる。そして、あわよくば、米国と良好な関係を築ける穏健な後継者の登場を促そう、としているのだ。ターゲットは中国共産党ではない。習氏その人である」と長谷川氏はいっている。
「普通の中国人が党の歴史や高潔さ、妥当性に疑問を抱いていることに、共産党は気付いている。若い世代は「なぜ自分たちには韓国や日本、台湾のような政治的、社会的自由がないのか」と疑問に思っている。何百万もの中国人が子どもを米国に留学させ、それ以上の中国人が米国で暮らしたい、と思っている。あらゆる局面で、党はイデオロギーの脆弱性に直面しているのだ」
「習近平も青ざめる」とか「中国「大崩壊」の末路」という見出しほど内容はセンセーショナルではないが、方向性は正しいと思われる。しかし実際には、どうするのだろうか。わたしなんかが心配することではないが。
エマニュエル・トッドが捉える中国認識
 民主主義は全体主義から「挑戦を受けている」と考える、フランスの学者エマニュエル・トッドが、対中認識を語っている。かれは、習近平と不満分子を分断させよ、というより、「米国には、ロシアと敵対するのをやめて中国から引き離す戦略に転じてほしい。ロシアは、日本と同じように中国に脅威を感じています」と中ソ分断を示唆している。また「中国は二つに引き裂かれています。高い学歴を持つすごい数の人材によって世界レベルで行動しながら、国内では不均衡に苛まれている。外では大国、内では脆弱なのです」といっている。これは先の「より長い電報」論と一致している。

© JBpress 提供 フランスの歴史学者、社会学者のエマニュエル・トッド(2020年9月、写真:Abaca/アフロ)
 トッドは中国の民衆についてもこういっている。「中国の全体主義的な体制は単に悪い指導者がいるからという話ではないのです。中国人自身も教育による伝統などの継承によって、権威主義的な気質を身につけています」。とするなら、大多数の中国国民はいまの体制にそれほど不満は感じていないということか。しかし都市と農村の不均衡の問題は依然として残っているはずである。ちなみにトッドは、中国が世界を支配する国になるとは思っていない。「中国の優位は一時的でしょう」
コロナで鮮明になった中国の脅威 「制御する態勢が必要」エマニュエル・トッド氏が指摘(AERAdot、2021.1.17)
 中国の王毅外相は3月7日、北京で記者会見し、「核心的利益が侵犯されるのを断じて許さない」と述べ、対中圧力を強める米国をけん制した。王氏はまた、米欧が批判を強めている香港の選挙制度見直しについて「完全に合憲、合法で合理的だ」と正当化した。ただ、同時に「中国と米国は協力可能だ」とも語り、新型コロナウイルス対策や経済回復、気候変動といった問題での協力には期待を示した。またウイグル自治区の人権問題について「内政不干渉の原則を守るべきだ」と反発した。
核心利益「侵犯許さず」 中国外相、米けん制―香港選挙見直し「完全に合法」(JIJI.COM、2021.3.7)
中国外相「内政干渉許さず」 ウイグル巡り米に反発(日本経済新聞、2021.3.7)
中国にものをいうとして、だれがいうのか
 自由と民主主義にはもちろん脆弱な部分がある。けれど中国が考える社会には、それにとって代わる、どんな優れた人類的理念があるのか。対外的には問題を起こし、国内的には国民を管理するために膨大なコストをかけて、なにをしようとしているのか。中国は、戦前の日本が勝手に「生命線」を設定したように、勝手に「核心的利益」と称して、周辺の国に嫌がらせばかりしている。版図を拡張することばかり考えている。いまさら「核心的利益」とは覇権主義的で、露骨な時代錯誤の帝国主義的概念ではないか。
 どうせなにをいっても、中国は聞く耳をもたない。それでもかれらが言葉で反応するかぎり、こちらは正論をいいつづけなければならない。国際世論を高める努力をしながら。言葉に実効はなくても、相手の記憶には残るのだ。言葉には言葉を、である。実際に中国が尖閣を占領したり、台湾進攻をしないかぎり、どんな妄言でも威嚇でもいわせておくほかはない。
 中国にものをいうとは、だれがいうのか。中国には汪文斌副報道局長がいる。日本の外務省には外務報道官というのがいるようだが、見たことがない。「飲み会は絶対に断らない女」を自慢していた情けない内閣広報官というのがいるようだが、首相の記者会見の司会をしているだけである。王毅外相もときに記者会見をする。それに対抗して、茂木敏充外相がいえばいいのだが、まずだめだろう。政府が主導しなければ、外務官僚も国連大使もいえるはずがない。元防衛大臣の中谷元自民党議員一人が気を吐いている。菅儀偉首相と麻生太郎財務大臣に奮闘を望みたい。