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安倍総理の志は死なない!!

「原発はダメ、停電もダメ」そんな政治の無責任が、日本に大停電を引き起こす

関電が年末年始に「停電一歩前」まで追い込まれた理由
「これで何とか電力逼迫は、しのげそうだ」――。1月中旬、大飯原子力発電所の4号機(福井県おおい町)が再稼働した際、関西電力の社内にはこんな安堵の空気が流れたという。
関電は、年末年始の寒波で「停電一歩前」の状況に追い込まれた。電力需要の急増で供給力に対する需要の割合を占める電力使用量が99%に達する日もあった。その際には、他の大手電力から電力を融通してもらったり、ライバルの大阪ガスから発電燃料である液化天然ガス(LNG)の供給を仰いだりするなど、停電を避けるために関係各所を奔走した。
2020年4~12月期の連結決算は、経常利益が前年同期比14%減の1611億円。2021年3月期は経常利益で前期比39%減の1300億円を見込む従来予想を据え置いたが、2021年1~3月期は四半期ベースで4年ぶりの経常赤字に沈む見通しだ。
これは電力逼迫のため、歴史的な水準にまで高騰したLNGをスポット市場で調達したり、割高な石油を使った火力発電の量を増やしたりしたためだ。関電幹部は、「24時間稼働する原発がどんどん動き出せば、今回のような事態は起きない」と話す。
運転開始から40年超の原発の再稼働も視野に
さらに関電は定期検査中の高浜原発3号機(福井県高浜町)が3月に再稼働した。4月に本格運転に移行する予定で、1基が稼働すれば大飯原発は月35億円ほど、高浜原発は月25億円ほどの費用を圧縮できるという。
さらに運転開始から40年超の原発の再稼働も視野に入ってきた。関電は運転40年超の高浜原発1、2号機と美浜原発(同県美浜町)3号機の3基で再稼働を目指している。1月12日に福井県庁で杉本達治知事と面会し、懸案だった原発の使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について「2023年末までに計画地を確定させる」と表明。杉本知事も「一定程度の回答をもらった」とし、県議会に議論を促した。
杉本知事は40年超の原発の再稼働への条件として使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外移設をあげていたが、当初、関電が想定していた東京電力ホールディングス(HD)などが運営する青森県むつ市の貯蔵施設への移設がむつ市などの反発で頓挫。むつ市の施設への共同利用案を電力会社の業界団体である電気事業連合会(電事連)と模索しているが、むつ市の同意を得られていない。
使用済み核燃料の県外移設の延期は2度目となるが、原発のある地元自治体の経済も新型コロナ感染拡大で低迷しており、福井県など地元自治体が折れた格好だ。
なし崩し的な原発の再稼働にひそかに期待する電力各社
原発の再稼働が進めば、満杯になりつつある使用済み核燃料の処理問題が再燃することになるのは自明の理。それでも、原発が立地する地元自治体が疲弊する中にあって、中間貯蔵施設問題を「棚上げ」したかたちで関電は老朽原発の再稼働にこぎつけた。
こうしたなし崩し的な原発の再稼働にひそかに期待するのは関電だけではない。
「地元は一丸となって柏崎刈羽原発の再稼働に向けて取り組んでいく所存であります」
昨年12月、東京商工会議所の三村昭夫会頭(日本製鉄名誉会長)が、東京電力柏崎刈羽原発を訪問した際に出迎えた新潟県の柏崎市、長岡市、十日町市など地元商工会議所の幹部たちは口々にこう三村氏に訴えた。
柏崎刈羽原発も、7号機は再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が終了した。日本商工会議所の会頭も務める三村氏の視察は2015年4月以来5年ぶり。柏崎商工会議所が三村氏の来訪を要請して実現した。
同原発で発電する電力は東京をはじめとする首都圏で消費される。そのため「消費地の経済界から再稼働を求める声を上げてもらい再稼働に弾みをつける」(地元商工会議所関係者)との狙いがある。
東電HDの思惑通り、再稼働は進むのか
三村氏も「首都直下型地震が起きたときの備えとして期待が大きい。(時期は)できるだけ早いほうがいいに決まっている」と答え、再稼働に期待を寄せた。
ところが今、柏崎刈羽原発では、東京電力HDの社員が同僚のIDカードを無断で使って不正に中央制御室に入っていた問題が明らかになったほか、安全対策工事を終えたといったん発表したにもかかわらず、その後消火設備の工事に漏れが見つかり、工事終了の発表を撤回するなど問題が相次いでいる。
東電HDの思惑通り、再稼働は進むのか。原発の立地自治体は、長引くコロナ感染で経済が疲弊しており、再稼働についても背に腹は代えられない状況となっている。
※編集部註:初出時、東北電力・女川原発の稼働状況について誤った記載がありました。当該箇所を削除します。(3月12日13時50分追記)
電力自由化で先行するアメリカでは、400万世帯以上が停電
さらに、この年末年始の電力逼迫も原発再稼働の機運を高めている。ある大手電力の幹部は「自由化を柱にした電力改革はやはり問題が多い」と口にする。
アメリカは今冬、寒波による電力不足に見舞われた。米メディアによると、米東部時間2月16日午前(日本時間16日夜)の時点で400万世帯以上が停電の影響を受けた。石油・天然ガスのパイプラインや精油施設が閉鎖され、原油・ガス価格も上昇。同州南東部のガルベストンでは天然ガスの供給不足や風力発電タービンの凍結により9割以上の世帯への電力供給が止まったのである。
トヨタ自動車は寒波の影響により、テキサス州やケンタッキー州など米国内の4つの完成車工場と1つの部品工場で16日の操業を休止した。ホンダも15日と16日午前にオハイオ州の工場の操業を止めた。計画停電の影響に加え、周辺道路の凍結などで従業員の通勤にも支障が出た。停電で暖房が止まったため、車内で暖を取る家族も続出した。
地元メディアは「誤ったエネルギー政策が招いた停電だ」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)と社説で州政府を批判。ブルームバーグ通信も想定外の事態を意味する「ブラックスワン停電」だと表現し、安定供給より効率を優先した行政の対応に疑問符をつけた。
太陽光発電などが盛んな九州電力でも電力不足に
テキサス州では2011年にも寒波による停電が発生したが、同州のアボット知事は州内の電力供給の9割を担うテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)が再発防止の対応を怠ったと指摘する。米西海岸のカリフォルニア州でも昨年8月に記録的な熱波による大規模停電が発生したが、今回も当時の教訓を生かすことができなかった。
これに乗ずる形で日本でも「行き過ぎた自由化や、脱炭素の急速な動き」に大手電力を中心に経済産業省資源エネルギー庁、さらには官邸内にも再考を促す動きが出てきた。
現在、電事連の会長企業は九州電力である。温暖な気候から非化石燃料の電源比率は約4割と太陽光発電などの再生エネルギーなども盛んだ。だが、その九州電力でもこの年末年始は電力に事欠いた。
逼迫(ひっぱく)の度合いが激しかった西日本の大手電力では中国電力の今期の業績が77.8%減の200億円、四国電力は61.1%減の70億円と大幅に落ち込む見通しだ。
北陸電力に至っては86.1%減の20億円と悪化、脱炭素に向けた再エネシフトに充てる資金も事欠く状況だ。
福島第一原発事故後、思考停止に陥っていた10年のツケ
電力市場を巡ってはNTTが三菱商事と組んで全国の電話局の局舎に設置した太陽光パネルからとった再生可能エネルギーを自治体や各地域の家庭に供給するサービスを計画している。
伊藤忠商事も蓄電池や分散型電源を用いた電力網を海外で積極的に展開している。同社は日本でも本格参入する考えで、異業種を巻き込んだ競争は激しくなっている。
東日本大震災から10年。資源のない日本とは言え、原発依存の体質は変わっていない。電力不足が懸念される中でも、脱炭素への世界的な流れから石炭火力には頼れない。
原発依存から脱するためには再生可能エネルギーの比率を高めるしかないが、電力供給の安定性確保のほか、送電網の整備にも数兆円規模の資金も必要だ。
福島第一原発の事故以来、まるで思考停止に陥っていたこの10年のツケは重い。今、電力不足という現実を前にして、いかなる電力政策、エネルギー政策をとるのか、先送りできる問題ではない。