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安倍総理の志は死なない!!

反日不買も今は昔、やっぱり飲みたい日本製ビール

(羽田真代:在韓ビジネスライター)


 韓国では相も変わらず、日本製品の不買運動が続いているが、日本製であっても欲しいものは買うケースも多く、あくまでもご都合主義の選択的不買運動である。その輪の中に日本製ビールも加わったようだ。


 2019年10月、韓国における日本産ビール輸入量は数量、金額ともにゼロまで落ち込んだが、最近は5カ月連続で増加している。3月11日、韓国の関税庁と酒類業界から出されたデータによると、2020年1月に139トンだった日本産ビールの輸入量が今年1月は1072トンで、1年間で6.7倍にまで増加した。昨年9月以降、輸入量は5カ月連続で伸びている。


 韓国人は熱しやすく冷めやすい。


 2014年に、ヘテ製菓とカルビーの合弁会社ヘテカルビーが「ハニーバターチップス」を発売した際には、人気芸能人の影響もあり、店舗から商品が姿を消すほどの大ブームになった。あまりの過熱に、オンライン販売ではポテトチップスが1枚1枚小分けにされて高額取引された。2018年の平昌オリンピックでは、デサントの白い「ロングぺディング(日本ではロングダウンコート)」が流行り、街中デサントだらけになっている。


 しかし、韓国のブームは一瞬で、ブームが去ると糸がプツンと切れたかのように話題にすら上がらなくなる。


「ハニーバターチップス」の時はメーカーが増産対応したものの、もはやスーパーやコンビニにわざわざ買いに行く人はいない。「ロングぺディング」にしても、今年1月22日に旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」に着せる人も出た。反日不買運動の中、日本製コートを着るわけにも行かず、反日の象徴である慰安婦像に着せて処分したのだろう。


 今回、日本産ビールの売り上げが伸びたのは、日本のビールメーカーとっては単純に喜ばしいことだ。だが、不買運動が盛り上がるたびに疑問に感じるのは、彼らがどれだけ日本製を除外できているのか、ということだ。実際、不買運動などといっていられないほど“日本”は韓国には入り込んでいる。


不買運動の中、異常な高値がつけられた日本産ビール(写真:YONHAP NEWS/アフロ)© JBpress 提供 不買運動の中、異常な高値がつけられた日本産ビール(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
厳密に考えると意外に難しい韓国の“脱日本”
 2019年の不買運動によって日本産ビールが韓国で出回らなくなった結果、スーパーやコンビニの棚には日本以外の輸入ビールが陳列されるようになった。「コゼル(Kozel)」「ピルスナー・ウルケル(Pilsner Urquell)」「青島(チンタオ)」「ペローニ(Peroni)」といった輸入ビールである。


 だが、日本以外の国のビールを輸入したからといって、“断日本”ができるわけではない。


 イタリアの「ペローニ(Peroni)」を筆頭に、チェコの「ピルスナー・ウルケル(Pilsner Urquell)」と「コゼル(Kozel)」、ポーランドの 「ティスキエ(Tyskie)」、 ハンガリーの「ドレハー(Dreher)」など韓国人が日本産の代わりに愛飲したビールは、すべてアサヒグループホールディングスの傘下企業が扱う商品である。


 コゼルに至っては韓国内に独立店舗まである。一時期、コゼルの黒ビールをグラスに注ぎ、シナモンをグラスの飲み口につけて飲む「コゼルダークシナモン」という飲み方が流行った。


 青島ビールは、1903年にドイツ人がビール製造を開始したのが始まりだが、1914年の第一次世界大戦時に日本がドイツから青島の租借権等を引き継ぐことを認められ、大日本麦酒が買収して経営を担った。


 1999年にはアサヒビールが合弁企業、深圳青島啤酒朝日有限公司(青島40%、アサヒ60%)を設立、2017年まで経営に関与している。不買運動が始まった2019年、アサヒビールは青島ビールの経営や販売からは退いていたが、青島ビールは日本の平均的なビールと似たような味わいであり、日本メーカーの影響を受けていることがうかがえる。


 そして、韓国が誇るビール界の2強であるOBビールとハイトビールはいずれもかつて日本企業だった。


●OBビール


1933年12月、日本人が築いた昭和麒麟麦酒が前身。1948年2月に東洋(トンヤン)ビールに社名を変え、商標を“オービービール”に変更。1952年5月に斗山(ドゥサン)グループが東洋ビールを創立した。


●ハイトビール(ハイト眞露)


1933年大日本麦酒(現:アサヒビール、サッポロビールの前身)が“朝鮮麦酒”を設立。当時は、昭和麒麟麦酒と共に京畿道始興郡永登浦邑を本拠地とし、朝日と札幌ビールを生産する基地の役割を果たした。


 上記にも述べたが、上記の2社は日本のビール会社と直接の資本関係はない。その証拠にと言ってはなんだが、日本のビールと韓国のビールの味は全くといっていいほど異なっている。


 一方、比較的日本ビールの味に近い商品がある。「クラウド」だ。


韓国産ビールも日本メーカーの影響を受けている
●クラウド(ロッテ七星飲料)


ロッテ七星飲料が製造販売するビールブランド。オリジナルのクレビティ工法を適応させた製品で、2014年4月に販売を開始。


 韓国のビールは、日本の第3のビールのような薄い味で、上記3点の中ではクラウドがビールらしい味である。そうはいっても、普段から日本のビールになじみのある読者の方々は物足りないと感じるだろう。それでもクラウドがダントツで美味しい。クラウドが発売されてから、在韓日本人の間で主流となった(最近は、ハイト眞露の新しいラガービール「TERRA(テラ)」も人気がある)。


 クラウドが日本のビールの味に近い理由は、アサヒビールが開発に関わったためだ。筆者は、アサヒビールの韓国駐在員にクラウドについて話を聞いたことがあるが、「技術だけもっていかれた」と嘆いていたのをよく覚えている。


 上述のように、韓国で流通しているビールの中で、日本と関係ないビールは非常に少ない。また、韓国人が一生懸命、日本製品の不買運動を展開しても、日本メーカーに大きなダメージを与えることは非常に難しい。


 そもそも、韓国に進出しているメーカーは、韓国以外の国にも進出しているケースが多く、市場規模の小さい韓国内で不買運動を起こされたくらいで大した影響はない。それどころか、日本企業による韓国進出によって、韓国国民の雇用が成り立っている面も大きいが、不買運動に伴う撤退や人員削減によって自国民の雇用を喪失させている。


 後先考えずに行動する韓国人。ビールですら最後まで“不買”の信念を貫き通せなかったようだ。筆者は、韓国国内で日本産ビールの売り上げが伸びているという記事を見た際、「我慢できなかったのか」と思わず突っ込みを入れてしまった。輸出関連の記事で初めて笑ったことを付け加えておく。