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安倍総理の志は死なない!!

中国で「高須クリニックの院長たたき」が失敗、台湾パイナップル禁輸の裏側

中国の「台湾パイナップルの禁輸」を受け


日本で「#台湾産パイナップルを食べよう」が拡散


 3月のある日、近所のスーパーマーケットに普段は見慣れない台湾パイナップルが並んだ(翌日には完売)。皆さんが買い物をするスーパーでも台湾パイナップルを目にしたのではないだろうか。


 これは中国政府が3月1日から台湾パイナップルを全面禁輸することを発表したため、日本全国で台湾パイナップルの輸入が増えたことで起こった現象だ。発端は、日本のツイッターやインスタグラムなどのSNSで「#台湾産パイナップルを食べよう」という呼びかけが一気に拡散したことだ。


 この件の裏で、中国政府は中国SNS上での官製炎上に失敗していた。


 実は、中国政府の台湾パイナップル禁輸発表後の2月28日、環球時報が、SNS微博(ウェイボー)に高須クリニックの高須克弥院長を個別攻撃する投稿をして炎上させていた。


 高須氏は中国による禁輸発表後、台湾パイナップルの購入支援をしようというツイートを連発していた。しかし、投稿の中に中国政府を批判する内容は確認されていない。台湾総統である蔡英文氏のツイートをリツイートしたり、自身が台湾パイナップルの購入を予約したことを発表したくらいだ。にもかかわらず、なぜ中国官製メディアである環球時報がわざわざ高須氏を個人攻撃したのだろうか。


 しかも、環球時報は高須院長のツイート画像を添付してまで批判している。ツイッター禁止国である中国が高須氏のツイートを逐一チェックしてウェイボーへ貼り付けて拡散するという、実に滑稽な光景が繰り広げられていたのだ。


中国が高須氏を炎上させようとした


本当の理由とは?


 環球時報によるウェイボーの投稿は、中国共産党の機関紙(人民日報の兄弟紙)の投稿、すなわち中国政府の意向を強く反映する官製投稿と考えてよい。


 環球時報が高須氏を炎上させようとした目的は、「高須氏をたたくこと」ではなく、「台湾の蔡英文政権たたき」だったと考えられる。今回高須氏を利用したのは、影響力の高さに加えて、過去にもたたいたことがあるため利用しやすかったからだろう。


 過去にも高須氏による中国関連の発言がウェイボーへ取り上げられ、炎上した前例があった。内容は中国政府が30万人以上殺害されたと主張する南京事件へ疑問を呈すようなものや、中国国内の絶望的な貧富の格差についての発言だ。最近でも、今年1月に高須氏の発言が炎上していた。環球時報は、これらの成功体験から味をしめ、二番煎じを狙ったのだと思われる。


 これは中国政府の常とう手段の一つである。しばしばSNSを炎上させることで世論誘導や愛国心の高揚などに活用しているのだ。今回の高須院長のケースでは、台湾を応援する日本の“反中右派の医師”高須克弥という単純な対立構図を描き出すことで、国内の反台湾世論を盛り上げ、中国政府への支持を集めようと画策したとみられる。


 しかし、高須院長をだしに使った官製炎上は、無残にも失敗に終わったようだ。環球時報がウェイボーに投稿した2月28日以降の新規コメントは確認できず、書き込み停止になっている(実際の投稿は現在も確認できる)。


 書き込まれたコメントは162件。そのうち表示されているコメントは40件、環球時報によって削除されたコメントは122件。削除率にして75%となる。


投稿から読み取れる


「官製炎上」の痕跡


 他の同じような官製炎上と比較してみよう。多くの官製炎上では、政府が意図した通りのコメントが殺到するので、削除率は10%以下であることが多い。たとえば、1月9日に高須氏を炎上させた投稿は、86件中81件が表示されているので削除率は5.8%。ほぼすべてが高須氏への辛辣(しんらつ)な個人批判で埋め尽くされていた。


 そう考えると、今回の75%という高い削除率は、中国政府が意図しないコメントが殺到したからではないだろうか。高須院長や台湾への批判ではなく、今回の台湾パイナップル禁輸について中国政府への批判や苦言ではないかと推定される。


 さらに、結果的に中国政府がもっとも望まない「日台連携」の強化につながったことで、高須院長をだしにした官製炎上は失敗に終わった。


 環球時報がこの半年、ウェイボーで炎上させた投稿は、BTS(防弾少年団)、BLACKPINK、キムチ、詩人の尹東柱など韓国絡みが多く、キムチは韓国へ飛び火して延焼を続けている。これらはいずれも環球時報が、中国政府の切り込み隊として一番やりで炎上させたものだ。


 さらに高須院長炎上作戦で失敗した投稿へのコメントを分析すると、この一連の動きが「官製」だったことを感じさせる痕跡が見て取れる。表示されている40件の全コメントが、2月28日午後2時56分の投稿から23分以内に一気に書き込まれているのだ。


中国政府にとってSNSは


国民世論を知るための手段?


 2月28日は日曜日とはいえ、真っ昼間の時間帯にSNSのコメントが集中するものであろうか。不自然さは拭い去れない。日本のネット民であれば、深夜などの時間帯に活動しそうなイメージがあるが……。


 以下は推測となるが、「まずは40件のコメントを中国政府が用意したサクラ(種火)として環球時報の投稿(薪)へ集中投入して、一般コメントを呼び込み一気に燃え上がらせて大成功!」という作戦だったのではないだろうか。


 ちなみに、表示コメントのアカウントはそれぞれバラバラで、個人らしきアカウントと見受けられる。当然、そこまで計算してサクラを用意しているのだろう。


 中国情勢の専門家がよく指摘するのは、「中国政府は国民世論を把握できない」ということだ。なぜなら、中国には選挙もなければ、支持率調査、政府の政策についてのアンケートも存在しない。デモや集会も事実上禁止されている。つまり、中国政府は国民の声を知るすべを持っていないのだ。そのため、中国政府はSNSを民意を知るためのリトマス試験紙として使っているという。


 中国政府は、内政目的で官製炎上させているようだが、最近では失敗も目立つようになっている。もしかすると、SNSを主に利用する若い世代をうまくコントロールできなくなりつつあるのかもしれない。


 台湾パイナップル騒動で日台の絆が強くなることは、中国との適切な距離を保つ意味でも重要なことだと思われる。しかし、台湾には、これを機に“核食”と呼んで、いまだ輸入を禁止している福島などからの農産物の禁輸を解いてほしい。ぜひ中国との違いを示してほしいところだ。


 法律やルールを恣意(しい)的に運用し、中国共産党がすべてを支配するのが中国なら、台湾には国際秩序やルールを順守する民主主義を体現してほしいと願う。福島の農産物は国際的な安全基準をクリアしている。


 それにしても、かつては中国にVIP扱いで厚遇されて中国人医師の育成にも貢献した高須克弥氏に対して、過去を消し去ったかのように個人攻撃するのは中国っぽいところではある。


 しかし、中国政府が1人の民間人を繰り返し攻撃するということは、この二十数年の中国政府の傾向からすると、高須院長の発言が真実であることを示しているといえる。中国政府が再三主張することの正反対が真実であることは、今や多くの国が知るところになっているからだ。


(筑前サンミゲル/5時から作家塾®)