Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

国民を苦しめる「花粉症」、山林からスギがなくならない理由とは

今年も春の花粉シーズンがやってきた。今や国民病ともいえる花粉症。くしゃみや鼻水で苦しむ人たちからすれば、花粉を飛散させるスギの木を切り倒してほしいというのが本音ではないか。なぜそれができないのか、林野庁に聞いてみた。(サイエンスライター 川口友万)
治水対策と木材需要の急増で
スギの人工林が拡大
「一般の方からもスギの木を刈ってしまえば、とのお話をよくいただきます。花粉が飛ばないために、今あるスギを刈り、その後に広葉樹を植えればいいじゃないかとも言われます」
 森林利用課課長補佐の神山真吾氏はそのように言う。
 だが、詳しくは後述するが、そう簡単にはいかないのには理由がある。
 まず、問題となっているスギの人工林がどのくらいあるのか。
 日本の林野のうち約1000万ヘクタールが人工林だが、神山氏によれば、「そのうち約450万ヘクタールがスギです」という。実に約半数をスギが占めているわけだ。
 450万ヘクタールがどれぐらいの広さかというと、平成26年の日本全国の全農地面積とほぼ同じである。
 なぜスギがそんなにたくさん植えられているのか。
 その理由は江戸時代にさかのぼる。造林は江戸時代よりも前から行われており、古くから主要な建材としてスギが使われてきたが、江戸時代を迎えるころになると、城郭や寺院など建築用の木材需要が拡大した。全国(道南以北を除く)どこでも植えることができ、成長が早く、まっすぐ伸びるスギは日本の建材にぴったりだったのだ。スギは地域に合った品種がそれぞれ植えられ、造林のノウハウが蓄積されていった。
 そして戦中の軍備や戦後の復興需要で大量の木が伐られ、治山治水上、早急に植林を始める必要が高まる中で選ばれたのがスギだった。
「日本全国で造林の技術がある樹種はスギだったんですね。スギは早く育つため、日本の自然環境に広く適応でき、苗木を植えてきちんと早く育つノウハウがある樹種として、スギは荒廃した森林の復旧にも一役買いました」
 治水に加えて、木材資源としてのスギ需要への期待も高まった。
 従来、燃料材として里山で育てられていたコナラやクヌギといった広葉樹は、石油や石炭ガスに取って代わられつつあった。こうした中、木材の需要は広葉樹からスギへ移っていくと考えられたわけだ。
 しかし急速な木材需要の増加に人工林の成長はまったく間に合わず、結果的に輸入木材が急増することになった。
 スギの成長が早いといっても、木材として利用できるまでには約35~50年がかかる。
「高度経済成長期の前に植えたスギを切ることができるようになったのは、ようやく最近のことなのです」とのことだ。
花粉症対策として
新たな品種を開発
 輸入木材が増えたとはいえ、国内需要のうち国産の木材が占める割合は今も約4割を占めている。
 したがって「山を所有して林業を営んでいる方々は、スギやヒノキなど、木材として価値のある樹種を選んで植えたがる」という。
 山の所有者がスギを植えたいという意向ならば、行政がそれを止めることはできないわけだ。
 そうはいっても、戦後に行われたようなスギの拡大造林は行われていないため、今の日本の人工林はいびつな状況だ。
「50~60年の樹齢のスギがボリュームゾーンで、若いスギが少ない逆ピラミッド型になっています。将来、日本の人口が減って、住宅着工が減ったとしても必要な量の木材を供給できる森林は今後も必要だと思います」
 スギの植林は今後も必要なわけだが、花粉症対策として、そうした新しく植えられるスギは花粉が少ない品種が選ばれている。
「天然のスギの中には、花粉をまったく出さないものや、ごくわずかしか出さないものがまれにあるんですね。スギの品種開発には長い年月がかかるのですが、そういう木とまっすぐに良く育つ品種をかけ合わせたスギの種や苗木を苗木業者に配って育ててもらっています」
 林野庁では、こうして花粉が少ないスギを増やす一方、将来的には人工林の3分の1を広葉樹などが入り混じった森林に切り替える事業も進めている。
国産木材の需要増加が
花粉症の減少につながる
 先述の通り、戦後の拡大造林事業が花粉症の要因となった。輸入材の増加がもっとスローペースで、国内需要が順調に伸びていれば、現在のように大量に余ったスギが花粉症を引き起こすことはなかっただろう。
 日本でスギ花粉症が報告されたのは1964年で、70年代後半から罹患(りかん)者が急増する。スギが大量に花粉を飛ばし始めるのは樹齢30年ぐらいからなので、戦後最初の拡大造林のスギが花粉をまき散らし始めたわけだ。
 植林がスタートとした1950年代当時、日本の医療界では花粉症はほとんど知られていなかった。戦後の混乱を考えれば、スギの植林について現在の基準で批判しても意味がないだろう。
「脱炭素化の面からみても、老齢化したスギの光合成量は落ちているため、若い木と入れ替えていく必要があります。そのためには、適切な量に調整する必要があり、今の人工林は適量を伐っていかなくてはいけません。それには木材需要を増やす必要があります」
 とはいえ人口は減りつつあり、住宅は供給過多と言われる中、どうすれば需要を増やすことができるのか。
「建築技術が進んで中高層建築にも木材が使えるようになったので、住宅以外の建築分野でも活用を勧めています。また国や自治体の庁舎などの公共建築物を建て替える際は木造の活用を奨めています。問題だった耐火性も木材に薬剤を注入して燃えにくくするなど新しい技術が生まれているので、積極的な利用に向けた支援を行なっています」
 木材から作るプラスチックも耐久性やコスト面が解決されつつある。自然に分解する木質プラスチックも開発しているので、そうなればレジ袋やスプーンを有料にしたりせずに廃木や木質チップから作ればいいことになる。むしろそちらの普及に予算を回した方がよほど国の施策として健全だろう。
 花粉症がすぐに解決することはなさそうだが、少しずつ対策は進んでいる。国産材の利用が進めば、いずれは花粉症に苦しまない春がやってくることだろう。


ただの花粉でここまで苦しむことはない。
やはりシナチョンからの汚染物質が問題では?