Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

過激化するBLM運動 トランプ大統領に追い風になる可能性も

 黒人の少年が警官に射殺された事件をきっかけに2013年、SNSで「#BlackLivesMatter」というハッシュタグが拡散されて始まったBLMと呼ぶ運動が、2020年に再注目され、世界中に広がっている。このBML運動は一見、大統領選挙を控えるドナルド・トランプ大統領によって不利に働くようにみえるが、果たしてそうなのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、ネット上での論調の移り変わりから読み解く。
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 アメリカ・ミネアポリスで黒人男性が白人警察官に窒息死させられた件を受け、世界中でBlack Lives Matter(黒人の命は大切)運動が発生している。当初は警官への怒りがアメリカ人を中心としたネット上でも圧倒的だったし、黒人差別の深刻さに多くの人が心を痛めただろう。
 各地で発生した平和的デモには賛成の意見が多かったが、以後発生した小売店やハンバーガー店への焼き討ち・集団強盗が相次ぐと冷ややかな声も書き込まれるようになっている。「人種差別には反対だがやり過ぎだろう? 単に暴力・略奪行為を正当化しているだけじゃないか?」と。ただし、そうした声をあげると今のアメリカでは人種差別主義者認定が来て解雇や退学といった事態に追い込まれるため、本音は書きづらい状況にある。
「黒人は400年間も差別され続けたのだからこの怒りは正当だ」といった暴力容認主義の人々も多数いるが、ちょっと今はおかしくなっていないか?
 公園のような場所で「黒人しか入れないエリア」を作り、入り口で人々が検問をしている。しかも、そこで検問をしているのが軒並み黒いTシャツを着た白人なのだ。あたかも「黒人に寄り添う私、人権意識があるの♪」と言いたいようである。
 そんな最中、シアトルでは、CHAZと呼ばれる自治区が誕生した(その後、CHOPに変更)、「警察は不介入」というルールを作り占拠したのである。結局、暴行、銃撃が相次ぐようなエリアになり、解体されたが、日本では「アメリカ版『ぼくらの七日間戦争』」と表現する者もいた。
 今回の主導的立場にいるミュージシャンで活動家の黒人男性がツイッターにこう書いた。
「救急隊はCHOPの人々が懇願したにもかかわらず、救助を拒否した。彼らはオレらの仲間が血を流しているのを30分放置した。彼が死ぬまで。クソ政治め。クソったれなこのぶっ壊れたシステムめ」
 このツイートにはアメリカ内外から多数のツッコミが書かれた。「お前らのエリアには入れないんだからしょうがないだろ」「お前らは自治領が欲しかったんだろ? そして自治領を得られただろ? バカなゲームをやり続け、バカな賞金を得ておけ」といった感じだ。これに対する日本人からのコメントは「アメリカ政府の介入を拒否しながらもアメリカ政府に助けてもらおうとはなんて都合が良いんだよ」といったものもある。
 一方ネット上では、黒人の男性が白人男性を突然殴り、近くにいた白人女性は気絶するものの周囲が何もしない動画が拡散している。これは数年前の動画なのだが、最近のものだと思った人も相次ぎ、「今では黒人がやりたい放題」といった印象操作をされている。ちなみにこの男は当時逮捕された。
 この状態がエスカレートすると保守的な白人が今度は態度を硬化させ、大統領選では一斉にトランプ氏に入れるようになるかもしれない。トランプ氏は再三CHAZに批判的なツイートをしていたが、今後白人の部外者や警官がBLM関連の活動家から撃たれて死んだ場合はWhite Lives Matter運動が発生し、劣勢とされているトランプ氏への追い風が吹くかもしれない。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2020年7月10・17日号