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安倍総理の志は死なない!!

「中国の黒人差別」メディアが報道できない理由

広東省では黒人を袋叩きにする中国人も露見
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部
2020年07月05日
アメリカの人種差別問題が盛んに取り上げられるなか、独裁体制の隣国で横行する「ドメスティック・バイオレンス」に切り込む報道は見られない。
日本メディアが報じない中国の黒人差別
アメリカの人種差別問題をめぐって、日本など各国の報道が過熱している。アメリカには、かの国の成り立ちに伴う差別の問題が存在している事実を否定するつもりはない。だが、どう見ても日本メディアの捉え方は偏っている。というのは、隣の中国における黒人差別のことについては、ほぼ沈黙を通してきたからである。
 
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
中国にもアメリカに負けない黒人差別がある。1980年代に私が北京の大学で学んでいた頃、アフリカ諸国からやって来た留学生たちとのサッカーの交流試合に臨んだことがある。そのとき、中国人側は相手を公然と「黒鬼(ヘイグイ)」(黒いお化け)と呼んでいた。大学生だけでなく、一般の市民や知識人も変わらなかった。その後、2016年には「黒人を洗濯したら、アジア系の白い美男子になった」というコマーシャルが問題になった。
武漢で発生した新型コロナウイルス感染症が世界中で猖獗(しょうけつ)を極めた今春、中国南部・広東省ですさまじい勢いの黒人排斥運動が起きた。それまでに住んでいたアパートから追い出され、街頭にさまよっていたところを中国人に袋だたきにされる映像が多く拡散した。ナイジェリアなど数カ国の外交官が中国外務省に申し入れするほど、アフリカ諸国でも反響が大きかった。被害者の中にはアメリカ国籍の黒人もいた。
しかし、日本ではゴールデンタイムで中国の黒人排斥問題の深層を分析し、細かくルポする報道は見られなかった。正義に基づいて人種や差別の問題に取り組むのがメディアの役割であるならば、中国を放置してアメリカだけをクローズアップするのは不公平ではないか。
「知ってはいたけれど、何しろ記者自身が実際に黒人排斥の現場に居合わせず、取材できなかった」との弁明も聞こえてきそうだ。新型コロナでの取材自粛はあっただろうが、これは中国において外国人記者の行動が厳しく制限されていることの証左でもある。
自由主義の国家では、小さな町の出来事が全世界の抗議デモの起爆剤になりえる。これに対し、独裁国家は扉が閉め切られた状態で、自国民だけでなくあらゆる人間を対象とした「ドメスティック・バイオレンス」が横行している。メディアはこの事実を注視しなければならない。制限が設けられていたならば、事件後に掘り出しに行けばいい。
今回の黒人排斥問題ではそれもなかった。だから、「やはり日本のメディアにはチャイナマネーが浸透している」「経営陣とトップ層が中国に忖度している」などと疑われるのだ。そして、当の中国は今やアメリカの人種差別批判の急先鋒となっている(参考記事「中国のアフリカ人差別でばれたコロナ支援外交の本音」)。
いずれ「中国の婿」に
中国政府の黒人対応は多面的だ。山東大学は昨年、黒人留学生に中国人女性3人の「学伴(学習パートナー)」を付けるよう奨励した。「将来を見据えた人的投資になる」と、大学当局は女子学生を説得していた。アフリカからの留学生は、帰国した暁に中国人夫人を同伴し、政財界で出世すれば、「中国の婿」として中国との関係強化に貢献できる。
かつて漢王朝は匈奴に、唐王朝はチベットの王に皇帝の娘を「和親政策」として嫁がせていた。遊牧民の軍事力に屈服した後の屈辱的な生き残りの戦略で、この時の関係も現代中国の領土拡張の根拠の1つとされている。いわく、「匈奴(きょうど)も吐蕃(チベット)も中国の婿」だからだ。差別されている黒人たちが「中国の婿」になれば、いつしかアフリカも「中国の核心的利益」の一部とされるかもしれない。
日本メディアははたして、こうした中国共産党の対黒人政策の本音を見抜いているのだろうか。