Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

都知事選圧勝の小池氏と組織委・森会長のバトル再燃

 相変わらず“ガラスの関係”であることが浮き彫りとなったように思えた。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が6日に小池百合子都知事との会談を行った後、来夏に延期される大会について開会式の規模縮小は困難である見通しを示した。
 先月10日にはIOC(国際オリンピック委員会)と大会組織委員会の間でオンライン会議の場が持たれ、延期に伴う追加費用の最小化、大会の簡素化を共同声明の中に盛り込み、セレモニーの規模縮小も検討すると発表したばかり。この時点で森会長もメディアに対して「新型コロナウイルスによって世界は大きな被害を受け、たくさんの犠牲者もいる。従来のお祭り騒ぎが多くの人に共感を得られるのか、という点を考えないといけない」などと語り、暗に年々派手になっていく開会式のセレモニーを簡素化させる方向性を示していた。
 ところが、それから1カ月も経過しないうちに森会長は6日の小池都知事との会談後、多くの報道陣の前で「3時間ある開会式を短くすれば、経費は一番安くなる」としながらも「でも(IOCは)駄目だと言っている。すでにテレビと契約して時間の枠を売っていて、外すと違約金が発生する。それを組織委員会が払えますか」とまるで開き直ったかのように言い放った。
直前の選挙公約を森氏にあっさり否定され、赤っ恥の都知事
 この日、森会長は東京都庁へ自ら足を運び、前日5日投開票の東京都知事選で圧勝して再選を果たしたばかりの小池都知事を祝福。取り囲んだカメラマンの前でグータッチを交わすなど、1年後の東京五輪開催に向けて連携強化をアピールしていた。両者は笑顔を浮かべていたとはいえ、その心中は決して穏やかではなかったように思える。
 特に小池都知事は選挙で掲げた公約の1つとして、来夏延期の東京五輪について「コロナに打ち勝った証として行うべき」とした上で、合計約3000億円とも見積もられている莫大な追加経費に関しても開会式を含めたセレモニー縮小なども一例に挙げつつ「都民、国民の理解を得るために簡素化して費用を縮減する」と自信満々にうたっていたはずだった。それだけに森会長から祝福を受け、連携強化の確認を取り合うはずの場において自ら示していた大事な公約を当人にあっさりと否定され、さらにはメディアを通じて公にされてしまったのだから赤っ恥もいいところである。
 まるで水戸黄門の印籠のごとく、これ見よがしに「IOCからのお達し」であることを強調しながら森会長は「簡素化と言っても簡単ではない。考えているが、思うように進まない」とも報道陣の前でボヤキ節のごとく嘆いてみせた。
「ツベコベ言うな」という牽制
 国内競技連盟(NF)に加盟し、次の東京五輪に複数の日本代表候補を送り込む某競技団体の幹部は「また2人のつまらない意地の張り合いが、早々と露呈してしまった」と口にすると次のように続けた。
「IOCから東京五輪開会式の縮小に“NO”を突き付けられているのは、長期放映権を結んで巨大スポンサーになっている米放送局NBCの意向もあって動かし難い事実です。ただ、それは今の段階では2人の会談の場の中に収めておくべき話であって、会談終了後に公にしてしまっては元も子もなくなってしまう。
 しかも自分たちが先月10日の時点で共同声明として出しておきながら、こうもあっさりと『簡素化と言っても簡単ではない』なんて重ねてメディアの前で言ってしまったのは、まったくもって不可解。本来ならIOCと進めていかなければならない議案を巡って、日本のトップがサジを投げてしまっているようなものです。どうして、こんな“暴言”を森さんは口にしたのか。
 我々(NF)の間では、おそらく小池さんへの牽制球なのだろうと邪推されています。森さんが都知事選で小池さんの勝利を願っていたのはあくまで前職であり、他候補では東京五輪の来夏開催が暗礁に乗り上げることを懸念していたからであって、いわば“消去法”。選挙の合間も『東京五輪の簡素化』について自らがリーダーシップをとっていくとばかりに主張していた小池さんのことを面白くないと森さんは腹の中で思い続けていた。だから6日の“暴言”は意趣返しのようなもので『私がすべてを仕切り、IOCとの交渉事も前面に立って行うのだから君はツベコベ言うな』という意味合いを込め、小池さんにクギを刺そうという狙いがあったのだと考えます」
 実際、6日に森会長との会談を終えた小池都知事の様子は「明らかに口数が減り、不機嫌な表情だった」(都庁関係者)という。確かに小池都知事と森会長の関係は決して良好とは言い難い。かつて信頼し合っていた時期もあったものの、政治的イデオロギーを含む方向性の違いから現在は両者の間に強い隙間風が吹いている。
 それを象徴するように今から4年ほど前にも、森会長は都が東京五輪の開催費を圧縮するために会場見直しを提案したことについて不快感を示し、陣頭指揮を執った小池都知事を「何も勉強してない。スポーツや五輪のことをしたことのない方が来て、ガチャッと壊した」とばっさりと切り捨てた経緯がある。
マラソン会場の移転でつま弾きにされた小池氏が放った強烈な皮肉
 昨年10月にもIOCが暑さ対策として東京五輪のマラソンと競歩の会場を東京から札幌へ移す計画を発表した際、両者の間にはひと悶着あった。この裏側では「IOCのジョン・コーツ会長が決めたが、事前に打診された日本側のメンバーの中に小池都知事は含まれていなかった。犬猿の仲ともっぱらの森会長が小池都知事をメンバーから外したらしい」とのウワサがささやかれ、当の小池都知事がIOCの発表後に「たぶん東京は一番最後に知らされたんじゃないか。まさに青天のへきれきだ」と不満を爆発させながらコメント。そして「涼しいところでと言うのなら『北方領土でやったらどうか』くらいなことを連合から声を上げていただいたらと思うわけです。ロシアのプーチン大統領と親しい(安倍晋三)総理や森会長でいらっしゃるから『平和の祭典を北方領土でどうだ』ということぐらい、呼びかけてみるのはありかと思います」と皮肉たっぷりの爆弾発言までぶち上げ、あわや国際問題すれすれのところにまで陥ったのは記憶に新しい。
 前出の幹部は最後に頭を抱え込むようにして、こう口にした。
「あのマラソンの札幌移転に関しても小池さんと森さんがいがみ合っていなければ、もう少しまともな着地点が見い出せたはず。2人の意地の張り合いが、ただでさえコロナショックでズタズタの東京五輪をおかしな方向に導こうとしている。すべてを水に流して協調関係を築き上げてほしいのは山々ですが、さすがにもうそれは難しいのかもしれない。小池さんは選挙で圧勝し、都民の支持を得たと以前よりも自信を深めて多くを仕切ろうと強気に出る。これに森さんも意地を張ってくるのは確実で、そうなれば丁々発止の関係に拍車がかかりそうです」
 現実問題として来夏へ延期された東京五輪の莫大な追加経費の負担は、開催地の東京都にも当然重くのしかかることになる。コロナショックで都の税収も激減するのは必至だけに、小池都知事は「大会簡素化」の公約を成し遂げられなければ一気に猛烈な逆風にさらされることになるだろう。もちろん大会そのものの開催中止を訴える声が相変わらず根強いことも忘れてはならない。
 新型コロナウイルスの第2波発生の懸念も高まる中、これら余りにも山積みの難問をどう解決していくのか。いずれにせよ森会長との主導権争いにうつつを抜かし、感情的になる余裕など1ミリもない。