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東京女子医大コロナ看護師の告白「ラーメン買ってきて」新宿ホスト患者から悪夢のナースコールが何度も……

 新型コロナウイルスの感染が再び広がり、新規感染者が過去最多を更新する中、「文春オンライン」の取材に逼迫した状況を打ち明けるのは、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)の内科系に勤務する20代の女性看護師のAさんだ。
 同病院が、コロナによる減収を理由に夏のボーナスをゼロとし、400名以上の看護師の退職が予想されていることは、 先の記事 で報じた。
 そんな異常事態の中、Aさんは今年5月から約2カ月近くコロナ病棟に派遣され、感染した入院患者の看護に当たった。彼女が担当していたのは、次々に運び込まれるコロナに感染した新宿・歌舞伎町のホストやキャバクラ嬢たち。感染拡大の要因となっているにもかかわらず当事者意識の欠如した "夜の街"の患者たちを看護する徒労感を抱えながら、Aさん自身は家庭内への感染を防ぐために家族にも会えない孤独の中で、コロナ病棟担当という重責を必死で果たしていたという。
「今後のために勉強になる」とコロナ病棟へ
 東京女子医大のコロナ病棟は、国や保健所から再三の要請を受けて、5月に糖尿病専用だった棟を改装して設置。病室のある4階は陽性患者を受け入れているレッドゾーンフロア、5階は陽性の可能性があるPCR検査の結果待ち患者のグレーゾーンフロアとされ、病棟にある15床のベッドはこのところほぼ満床だという。
 Aさんがコロナ病棟の実態を打ち明ける。
「コロナ病棟では、普段使う看護服が汚れないように、使い古しのオペ着(手術衣)を着用し、その上に防護服を着て、ゴーグルにヘアキャップ、電動ファンが付いたマスクを装着して看護に当たります。コロナ病棟は建物が古く、廊下は冷房の効きが悪い。ナースステーションを出ると尋常ではない暑さで、汗と熱気ですぐに息があがります。
 コロナ病棟はウイルスが外へ出てしまうことを防ぐために、窓を開けての換気もできず密閉状態なんです。冷房が十分でない病室もあり、神経を集中させて採血を行うのですが、ゴーグルに汗が滴り落ちて視界がぼやけてしまうほど劣悪な環境でした。防護服を脱いだら、オペ着は汗でビショビショです。最長4時間近く防護服を着ることもあり、頻繁にトイレにも行けないので休憩中も水分を取らないようにしていました」
 そもそも、Aさんがコロナ病棟に配属されたのは、追い込まれてのことだった。ベテラン看護師の大部分は一般病棟の重要な役職に就いている。かたや新人は力量不足でコロナ病棟の担当はできない。Aさんら中堅クラスの看護師からコロナ病棟担当を選抜せざるを得ないのは、客観的に見ても明らかだった。
 師長が看護師を集めて、「行ってもいいという人は手を挙げてほしい」と希望を募ったが、誰も手を挙げなかったため、後日Aさんは、「コロナ患者の看護は今後の経験や勉強になる」と意を決して受け入れたという。
病院でも昼夜逆転のホスト患者たち
 コロナ病棟には80代、90代の高齢者も入院したが、歌舞伎町に近いという土地柄、“夜の街”関連のコロナ患者が大半を占めていた。特にホストの傍若無人ぶりは想像以上だったという。
「保健所や行政の要請もあり、看護師が感染ルートなどの聞き取りをしなければならないのですが、20代のホスト患者たちは当初、感染ルートが明らかになるとお店が営業停止になってしまうので、何も話してくれませんでした。お店側から口止めされていたようです。でも住所が歌舞伎町だったりするんです。何日かして打ち解けるようになって、『自分はホストで職場は〇〇です』と感染ルートを話してくれる人もいました。
 看護師は朝に患者の検温や症状、便や食事の量をチェックしたりして医師に報告しなければいけません。しかし、ホストたちは職業柄、昼夜逆転の生活なので、病院でも朝起きてくれず、無理に起こすしかありませんでした。病院の食事も『今、食べます』と言いながら、平気で半日以上放置されました。
 また、コロナ病棟の患者さんは、酸素飽和度を測るために『SpO2モニター』という機器を指先に装着してもらっていますが、深夜3時、4時に勝手にモニターを外して病室にあるシャワーを浴び始めたこともありました。すると、ナースステーションにあるモニター計から反応が消えるので、急変したんじゃないかと看護師が慌てて病室に様子を見に行かないといけません」
「お弁当が食べたい」「炭酸水を飲みたい」
 コロナ病棟を担当した別の20代の女性看護師Bさんも「苦しんでいる人を救いたい」という一心で看護に取り組んでいたが、彼女が強いられたのは医療とはかけ離れた“コロナ患者の世話係”だったという。
「軽症だったホストのコロナ患者からは、『食事が足りない』『味付けが薄い』と不満が出ていました。夜勤中だった深夜2時にナースコールがなり、『お腹が空いたからカップラーメンを買ってきて』『お弁当が食べたい』『炭酸水を飲みたい』などと言われることが何度もありました。コロナ患者は自由に院内を移動できないため、紙に要望を書いてもらい、セーフティーゾーンの看護師に代理を頼んで院内にあるコンビニへ買い出しに行ってもらうことになります。
 病室にはお湯がないので、ナースステーションからポットにお湯を入れて病室に持っていき、防護服を着ながらカップラーメンの容器にお湯を注いでいるときは、『私は何をしているんだろう』と涙が溢れてきました。本来であれば、入院している身なのでカロリー計算されている病院食のみを摂ってもらうのが原則です。しかし、他の病棟の患者は我慢しているのになぜかコロナ病棟だけは、そんなワガママに応えることがまかり通っていました。しかし、私たちは医療従事者であって“お手伝いの人”ではありません」
 ホストのコロナ患者と話す中で、Bさんは新宿・歌舞伎町で感染が絶えない原因として、彼らの生活環境が大きく影響していることに気付いたという。
「入院中のホスト患者が話していたのですが、若手のホストは新宿にある寮のようなマンションの一室に5人くらいで共同生活しているそうです。そこで咳や熱があったりする人がいるのに同じ空間で食事をしたり、雑魚寝したりしている。退院してもお金に困窮しているホストは生活がかかっているので、その足でお店に行ってしまうんです。これでは入院と退院の繰り返すばかりで、歌舞伎町の『負の連鎖』は終わるはずがないんです」
 現場からの悲鳴は、病院側に届いているのだろうか。
【400人退職希望の実態】東京女子医大コロナ看護師「メンタルは限界で給料は3万円以上減額。病院には怒りしかない」 へ続く
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))