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厄介な人物 小池百合子

小池百合子氏は「火消し役」、職場にもいる評価が高いけど厄介な人たち


中野豊明


2020/07/22 06:00


今回の東京都知事選でも圧勝した小池百合子氏。新型コロナウイルス対策や学歴詐称問題など、最近は何かと話題の小池氏だが、一連の発言やその後の物事の進め方を見ていると、どこの会社にでもおそらくいるであろう「火消し役」と呼ばれるリーダーの存在を想起してしまう。火消し役は、マネジメント層の評価は著しく高いが、現場の人々から見るとかなり厄介な側面を持つ。(経営コンサルタント、元アクセンチュア マネジング・ディレクター 中野豊明)


小池百合子氏を見て思う
職場で「火消し役」と呼ばれる人の存在
 周知の通り、7月5日に投開票された東京都知事選は過去最多の22人の候補によって戦われたが、「信任投票」と揶揄(やゆ)されたとおり、現職の小池百合子氏の圧勝に終わった。
 小池百合子氏のこれまでの発言や振る舞いについては、豊洲市場移転時の土壌汚染の件や新型コロナでいち早く感染爆発・重大局面として庶民の耳目を集めるやり方が「最初に恐怖に訴えかける手法」などといわれている。また、東京アラートやウィズコロナなどカタカナを使った分かりやすい表現にも特色があるという。
 小池百合子氏の政治家としての手腕や功績について、本稿で述べるつもりはないが、私は小池百合子氏の一連の発言やその後の物事の進め方を見ていると、どうしても想起せざるを得ない存在がいる。
 それは、どこの会社にでもおそらくいるであろう「火消し役」と呼ばれる人たちである。
 火消し役は、プロジェクトがうまく進行しなかったり、業務が著しく停滞したりするとその場を収拾してうまく軌道に乗るまでの旗振り役を務める。
 その役回りについては、そのままそのプロジェクトのリーダーとして活動をするか、また次の作業に移るかなど、ケース・バイ・ケースだろうが、多くの場合、社内で同様の「火事」が起きると再び請われて火消し役を務めるような人材である。
 そして、当然のことながら社内、特にマネジメント層の評価は著しく高い。皆さんの周りを見渡しても思い当たる人物がいるのではないだろうか。
「凡庸なリーダー」や「一般的なリーダー」は、うまくいっているプロジェクトや仕事は切り盛りすることができるが、ひとたびトラブルが発生すると立ちすくんでしまう。
 火消し役が「一般的なリーダー」と異なるのは、その名の通り、とにかくトラブルが出た場合、その大小にかかわらず沈静化できる手腕にある。


腕の立つ火消し役は皆、全く同じ手法を取る
 実は、腕の立つ火消し役は皆、全く同じ手法を取る。
 第一に「現状の問題点」を洗いざらいあぶり出す。
 プロジェクトの火消しの場合には、まずはプロジェクト管理の問題点として「進捗管理」や「課題管理」など、「見える化」しやすい部分から着手する。
「実際の進捗と報告されている進捗が異なる」
「進捗管理されていない作業があり、その部分がひどく遅れている」
「課題管理表に記載されていない課題がある」
「重大な課題が納期を過ぎても完了されていない」
「見落としているリスクがある」
 などなど……。
 労務管理もこうしたトラブルプロジェクトの場合、「例外なく多大な残業が発生しており、36協定上の問題がある」など、コンプライアンス上の重大課題がある。
 さらに、コストも残業の発生などが原因で、その時点までに本来使ってよいコストを莫大に超過している。万が一、消費したコスト実績が予定通りだったとしても、火消し役は、「もし成果物が予定通りに作成されていれば、予定コストを大幅に超過していた」とすることを忘れない。
 これら課題の数々を速やかにマネジメントに報告し、彼らに「危ないとは思っていたが、まさかこれほどとは…」と思わせる。


現状を総否定して恐怖心をあおる手法が似ている?
 こうした火消し役による現状を総否定してマネジメント層の恐怖心をあおる手法が、小池百合子氏の手法と似ていると私は思うのである。
 こうなると既存のリーダーや主だったチームのサブリードなどプロジェクトを管理する役割のメンバーは立つ瀬が全くなくなってしまうが、火消し役はその点には全く情状酌量しない。
 現状のリーダーシップを少しでも肯定してしまうと「火消し役」としての自分の価値が相対的に下がってしまうからだ。また、自分が火消し役としてリーダーに就任した場合には、現職のリーダーやプロジェクト管理チームは総取り替えする腹積もりなのだから、彼らにはどう思われようとかまわないのである。
 一方で、プロジェクトの成果物を作成するメンバーには最大限の配慮をする。
 彼らにそっぽを向かれると成果物が作れず、今後のプロジェクトが立ち行かなくなってしまうからだ。なので、よほどの場合を除き、成果物の品質が低いことはメンバーのせいにはせず、レビューをするリーダーやプロジェクト管理チームに責任があるとする。


火消し役はコストが増えても気にしない理由
 次に、火消し役が取り組むのはプロジェクト完了までの工数やコストの再見積もりとスケジュールの再立案だ。
 このとき、コストは当初のコストの2倍になろうと3倍になろうと意に介さない。
 なぜなら、火消し役が入った時点で既に予定コストを大幅に超過しているからだ。また、必要なコストが仮に2倍とした場合に、火消し役がマネジメントに申告するのは概ね2.2~2.5倍だ。プロジェクトが完了したときに実際に使ったコストを当初の2倍に収めて、残りの0.2~0.5分は余りを出すことでマネジメントからより高い評価を得るためだ。
 スケジュールは、当初のスケジュールを順守することが多いが、スケジュール順守のためにリスクの高い作業を削り、より確実な成果に絞り込むことを忘れない。
 こうした無茶な交渉をマネジメントに納得させるには「最初の恐怖心」に訴える手法が極めて有効なのである。
 そうして、トラブルの多いプロジェクトを「ブラックホール」とか「炎上プロジェクト」と名付けて、いかに大変な状況なのか誰が聞いても一瞬で分かるようにし、また、その火消しをすることがどれだけ大変なのか印象付ける。
 この点もまた、小池百合子氏のネーミングのやり口を彷彿させるのである。


厄介事の尻拭いは「素直に引き取っては損」という考え方
 他人がしでかした厄介事の尻拭いをしなければならないときは、素直に引き取っては損である。そこには有効な戦術があるし、その戦術を駆使する火消し役の手腕は見事である。
 要するに、火消し役と呼ばれる人々は、「見せかけ」や「説得」のテクニックに、ずば抜けて長けているのだ。
 しかし、真に有能なリーダーとは、最初から必要なコストとスケジュールをマネジメント層に説得することができる人であろう。
 もし、あなたが真の有能なリーダーを目指すならば、どうすべきか?
 仮に必要なコストが150だった場合、マネジメントからの押し付けで100として始めてしまい失敗し、火消しに頼ることで200を会社に使わせるよりは、当初から150で説得し将来会社に損をさせるであろう50をセーブできた方がはるかに有能であることは明らかだ。もしくは、予算が100しかないならば、成果の範囲を100でできる「質と量」に限定することだ。