ネコウヨの散歩

ネコと憂国

大阪大名誉教授・加地伸行 島嶼管理士の創設

 新型コロナ禍報道の日々。それはジャーナリズムの使命であるから当然であるが、その内の論説に欠けている分野がある。
 それはコロナ禍の今こそ災難を逆手(さかて)にとって、日本の将来を良い方向へと持ってゆく強(したた)かな政策は何かという議論である。
 現在、政府は目前のことに追われているが、それは〈行政〉の問題であって、〈政治〉の出動ではない。
 政治は、国家の安全安心の未来像を描くものであり、そこへ向かっての一致団結が現在の苦難を乗り越えるエネルギーとなる。すなわち政治家は可能性のある夢を描くべきである。
 そうした夢の例をここに述べてみたい。
 と言っても、天国や極楽に暮らすような夢物語ではしかたがない。あくまでも、具体的にして現実的な提案である。もっとも以下の主張は、老生がこれまで主張してきた(しかし政治家のだれも顧(かえり)みなかった)ものであるが、あえて再説する。
 例えば、瀬戸内海の鳴門海峡の干満落差(約1・5メートル)を利用しての海流発電の開発。もちろん瀬戸内海にはそうした場所がその他に多くある。
 その開発のために国家が数百兆円を投じてもいいではないか。コロナ禍に依(よ)る事業者等のためのバラマキをするくらいなら。仕事や収入が減ったという人にとっても、その開発事業が雇用創出になるではないか。
 海流発電に成功すれば、石油・石炭入手の費用は不要だ。
 また例えば、7000近くあるわが国の島々に対して、その管理運用を担当する島嶼(とうしょ)管理士という国家資格を創設し、海上保安庁指揮下の警察権の一部を有する公務員を5000人ほど採用してはどうか。
 この島嶼管理士の任務は、担当する島に住み、島内外を巡視管理する。もちろん、尖閣諸島はその赴任の筆頭である。わが国の領土だから当然である。
 この島嶼管理士創設の提案はもう何年も前のことである。オリンピックだの万博だのというお遊び会を開くことなどよりも遙(はる)かに重要である。
 島々だけではなくて、森林も重要であるが、人手が及ばず、荒れる一方である。しかもそれを助長しているのは、山林所有者の手入れ不足である。
 とすれば、森林健全化のための巡察や、場合に依れば正常化(伐採や植樹等)の命令、そして指揮を担当する森林管理士(国土交通省指揮下の公務員)制度を作り、山林の保全・発展を担当させてはどうか。
 海流や離島や深山といった地域を日本人は重視してこなかった。しかし、よくよく考えればこれらの地域は、実は宝の山・海なのである。その下に眠る資源は、未調査・未開発であるが、いつの日かわが国を支えるかもしれないではないか。
 コロナ禍で気鬱(きうつ)に終わるのではなくて、可能性のある夢、現実性のある希望を胸に抱いて進もうではないか。硬軟自在に。
 『礼記(らいき)』雑記下に曰(いわ)く、〔弓をただ〕張りて弛(ゆる)めずんば、文・武 能(よ)くするなし。弛めて張らずんば、文・武 為(な)すなし、と。(かじ のぶゆき)