Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「一帯一路共栄圏」の民心掌握に失敗する中国の末路

(岩田太郎:在米ジャーナリスト)
※「中国切腹日本介錯論」(1)「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党、(2)中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ、(3)仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方、(4)習近平の中国がなぞる大東亜共栄圏の「失敗の本質」も併せてお読みください。
徐々に拡大している中国の列島線構想
 中国共産党中央軍事委員会主席の習近平氏が政治生命をかける「中華民族の偉大な復興」は、今や(1)「平和的」に中国経済圏を膨張させる一帯一路共栄圏構想と、(2)組織改革や軍備急拡大で統合作戦能力が高まった人民解放軍によるアジア・西太平洋地域の段階的進出という二段構えの様相を呈し始めた。
© JBpress 提供 中国共産党指導部や人民解放軍が想定する中国の勢力圏は拡大を続けている。元米海軍士官で戦略研究家であるウィルソン・ヴォーンディック氏は、中国の列島線構想がインド洋の「第4列島線」や「第5列島線」にまで拡大していると分析している(出典:「増えていく列島線と第3列島線について」 海上自衛隊幹部学校 防衛戦略教育研究部 戦略研究室 山下奈々、リンク:https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-142.html)
 だが、第一段階である一帯一路は、早くも展開先で中国や漢人に対する激しい反感を引き起こしており、現地住民の心を勝ち取ることに成功しているとは言い難い。この状態で近未来に人民解放軍の対外軍事侵攻が行われれば、たとえ緒戦において大勝利を収めたとしても、人心掌握に失敗して統治コストが急騰し、中国の敵たちが互いに結ぶ結末になりかねない。そうなれば、「中華民族の偉大な復興」そのものが崩壊する可能性もある。
 前回では、日本の大東亜共栄圏構想の「失敗の本質」が占領地民心の把握の失敗にあり、それが支配層である日本人の品性の欠如、傲慢、自信のなさに起因することを示した。本稿では、「中華民族の偉大な復興」が抱える類似の構造的な欠陥の実例を分析する。
一帯一路共栄圏に広がる中国嫌悪
 習近平中国国家主席が平成25年(2013年)頃に唱え始めた「一帯一路」は、中国共産党の大目的である「中華民族の偉大な復興」の基礎となる、共栄圏建設のグローバルなプロジェクトだ。
 参加国に多大な経済的な恩恵をもたらすとの触れ込みで、高速道路・鉄道・港湾による効率的な物流システムの構築やパイプラインの敷設などを通して、陸路(一帯)と海路(一路)で結ばれた巨大経済圏を築き上げる、壮大で「平和的」とされる構想である。


 太平洋島嶼(とうしょ)国からアジア、欧州、果てはアフリカに至るまで、すでに120カ国以上がメンバーとなっている。一方、中国の人民元がすでにマレーシアのリンギット、シンガポールドル、タイバーツなど周辺9カ国および一帯一路参加国の通貨と直接取引を実現するなど、圏内の基軸通貨としての基礎を固め始めている。
 ところが、参加国の住民の間では、中国の評判がよくない。2020年5月、アフリカ南部ザンビアの中国繊維企業で、「わが物顔で振る舞う」と現地人に見られた中国人幹部3人が従業員によって惨殺され、焼き打ちにされた工場で遺体となって見つかった。事件に先立ち、首都ルサカでは住民が中国人による不当な扱いについて不満の声を上げ、中国人経営のビジネスを閉鎖する運動を展開していた。
 反中・反新植民地主義運動が広がる国はザンビアだけではなく、ナイジェリア、レソト、アンゴラ、南スーダン、マラウィなど多数に及ぶ。(一方でザンビア政府は6月の国連人権理事会で、香港国家安全維持法に反対する日本などと対照的に、中国を支持している。政府レベルの中国に対する親密さと、民衆の対中嫌悪感情とがかけ離れていることがわかる)。
 またスリランカでは、中国から年率平均6.3%に上る高金利(世界銀行や日本の譲許的な金利は0~2%程度で30~40年の長い返済期間を設ける)で、13億ドルもの融資を受けて2010年に完工した南部ハンバントタ港の借入金の返済が行き詰まり、2017年12月に中国国営企業の招商局港口へ運営権を99年間引き渡す事態になった。一帯一路が掲げる「互恵対等の関係」とは言い難く、「中国による植民地化」に対する国民の警戒や反感が高まる。


 ここで重要なのは中国共産党が、一帯一路の理想と現実の乖離が世界から厳しく見られているという失敗をあまり気にしていないことだ。一応「搾取ではない」との宣伝活動は行うものの、寛大さや誠実さで現地の人心を掌握し、長期的な運営コストを下げるという知恵に欠けている。
 こうした「巨大プロジェクトの借金漬け」を悪用した施設管理権の接収は、中国の新植民地主義の実態の氷山の一角に過ぎない。
 南太平洋のトンガやサモアでは、投資金額に見合う経済的需要やニーズに対応しているのか、また将来的な収益が得られるのかが疑問視される、中国の借款で建設された政府庁舎やスタジアムなどの「箱モノ」インフラの借金返済に苦しんでいる。ケニアにおける鉄道建設なども合わせて「乗っ取られ予備軍」は少なくない。ジブチ、キルギスタン、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、パキスタン、タジキスタンは特に対中債務リスクが高まっている。


 このため多くの一帯一路参加国では、中国による経済性を度外視した巨大プロジェクトの押し付けや債務の罠が有権者に認識され、平成27年(2015年)にスリランカで親中派の大統領が選挙に敗北したのをはじめ、平成30年(2018年)にはマレーシアに続き、モルディブでも親中政権が倒れている。結果として、マレーシア、パキスタン、モルディブ、ネパール、ミャンマーなどが、次々と一帯一路プロジェクトの見直しを始めた。
各国の首脳を前にした漢人外交官の蛮行
 こうした中、平成30年(2018年)9月にナウルで開催された南太平洋地域の太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議で、中国外交部特使団の杜起文氏(元駐ケニア・元駐ギリシャ中国大使)が、格上の大統領や首相たちを差し置いて先に演説しようとして、議長国ナウルのバロン・ワカ大統領(ワンガ、ワガとも表記)に制止され、逆ギレして退場する一幕があった。漢人外交官が品性に欠け、傲慢であることを象徴的に世界に示した出来事である。
 ワカ大統領は、「杜氏は非常に無礼で大騒ぎを引き起こし、一当局者という立場でありながら、かなりの時間にわたって首脳会議を中断させた」「おそらく大国から来たといって、われわれをいじめたかったのだろう」と指摘した。
 ケチ臭く度量に欠ける中国の一帯一路は、米国が第二次世界大戦後に国際的な新政治経済秩序の基礎として立ち上げ、米国の「寛大さ」によって受容された欧州復興援助計画のマーシャルプランに代わるような信用と権威を持つに至っていない。多くの国は朝貢冊封関係を強要されることを嫌がっている。
 事実、平和的で相互に利益をもたらすはずの一帯一路共栄圏は、「参加国の資源が狙い」「土地買収で地元を浸食」「現地人を人間扱いしない」「投資と大量移民による乗っ取り」「縁故主義で腐敗している」「暴利をむさぼる外交」など、全体の評判は散々だ。
 一帯一路で甘い汁が吸える現地の特権階級を除き、中国は現地住民の人心掌握に失敗している。「中華民族の偉大な復興」は、侵略に踏み出す準備である平和的進出の段階において、すでに成功していない。
人民解放軍、好戦的な対外拡張の歴史
 中国共産党中央軍事委員会主席の習近平氏が政治生命をかける「中華民族の偉大な復興」のために覇権的膨張に乗り出す際、前面で活躍することになるのが中国人民解放軍だ。習主席の悲願の実現に向け、武力行使により占領統治を行うようになった際に、人民解放軍は現地住民の民心を把握できるであろうか。
 中国国防白書の令和元年(2019年)版『新時代的中国国防』は、「中華人民共和国は、建国以来 70年が経過したにもかかわらず、一度も戦争や紛争を起こしていない」と主張している。だが現実には、人民解放軍は常に好戦的で帝国主義的であり、しかも占領地の住民を心服させることに失敗し続ける歴史を重ねてきた。
 まず、「中華人民共和国」が成立した昭和24年(1949年)10月の前後にあたる昭和23~26年(1948~51年)、人民解放軍はチベットを侵略した。継続するチベット人との衝突の中で食糧を強奪し、道路建設のため強制労働を強いたため同国は飢餓に見舞われた。
 また、昭和34~36年(1959~61年)のチベット蜂起弾圧作戦でも人民解放軍により約8万6000人のチベット人が虐殺された。こうした残忍な植民地化の経緯もあり、チベット人はほとんどが宗教指導者であるダライ・ラマに忠誠を誓い続けている。人民解放軍は人心掌握に未だに成功していない。
 次に、昭和24年(1949年)に東トルキスタン(新疆ウイグル「自治区」)を制圧した約10万人の人民解放軍兵士は内地に帰ることなく、占領および開発生産を行う「新疆生産建設兵団」として残留し、現在は約250万人にまで拡大している。東トルキスタン人の拘束など人権侵害に積極的に関与し、米国から制裁を科されている。
 一帯一路構想の隠された大目的のひとつは、外地である東トルキスタンの治安の安定である。だがチベットと同じく、侵略から70年以上が経過しても人民解放軍は東トルキスタンで心理的・政治的勝利を収めることができないでいる。
 一方で、人民解放軍はこれらの国に並行して台湾征服も企てていたが、昭和25年(1950年)6月に朝鮮戦争が発生してこれに参戦したため、果たせなかった。しかし、米軍を追いかけて38度線以南の韓国を侵略し、南鮮で国連軍と交戦したことがある。
侵略で一貫した人民解放軍
 インドに対しては昭和37年(1962年)10~11月に、人民解放軍が占拠するチベット「防衛」を口実に侵攻、同国領土を一部占領した。昭和44年(1969年)3月には、満洲黒竜江の支流ウスリー川の中州である当時のソ連領ダマンスキー島を奇襲し、これを奪取している。同年7月には同川のゴルジンスキー島で、さらに8月には東トルキスタン国境でもソ連と交戦している。
 一方、東洋学園大学の朱建栄教授によれば、人民解放軍は同時期のベトナム戦争中に延べ32万人の支援部隊を北ベトナムに送り、ピーク時には17万人の人民解放軍兵士が同国に駐留。人民解放軍は朝鮮戦争に続いてベトナム戦争でも米軍と交戦していた。
 昭和49年(1974年)1月には西沙諸島に駐留する当時の南ベトナム海軍部隊を奇襲し、同諸島を占領している。それだけではない。昭和54年(1979年)2月には「ベトナムによる同盟国カンボジアへの侵攻と国内の華人の追放」を口実に、統一ベトナムの北部五省を侵略・制圧したが、その間に人民解放軍の指揮系統が内部崩壊を起こし、ベトナムに撃退されている。
 一方、中国共産党中央軍事委員会に直接指揮される人民武装警察の下部組織である中国海警局の艦船は近年、ベトナムとマレーシアがそれぞれの排他的経済水域(EEZ)内で行う平和的な掘削活動に威圧的な妨害を加えている。
 そして、2020年5月には占領中のチベットから再びインドに侵攻し、20名のインド兵を殺害。さらに、人民解放軍空軍に所属する2機のJ-20ステルス戦闘機を中印国境地帯に配備するなど、脅威を強めている。
 侵略で一貫した人民解放軍の歴史の中で、同軍が一度たりとも占領地や交戦相手国の住民から尊敬の念を勝ち得たり、心服させていないことには特別の注意を払う必要があるだろう。それは、中長期的な統治における心理戦や政治戦の成功に疑念を抱かせ、「中華民族の偉大な復興」の崩壊を暗示するものだ。軍隊組織が外部から不信感を持たれれば、その段階で作戦・統治コストが跳ね上がり、失敗する可能性もまた上昇するからである。
侵略と表裏をなす弾圧の系譜
 翻って、ドイツの武装親衛隊(SS)が独裁のナチ党の命令で動いたように、独裁の中国共産党の命令で行動する人民解放軍は、平成元年(1989年)6月の六四天安門虐殺事件で自国の人民に銃口を向け、丸腰の学生を戦車で轢き殺し、何千人もの自国人民を葬り去った。中国共産党が、いかに自己の正統性に自信がないかが、党の暴力装置である人民解放軍の使い方で白日の下に晒されたのだ。
 中国の国内では、さらに遡って文化大革命期の昭和40年代(1960年代末から1970年代前半)に、人民解放軍が機能しなくなった各地の地方政府に代わり統治を行ったものの、統一性や安定性を欠き、各地に割拠状況を生じさせて、混乱を作り出す不安定要素となった。人民解放軍は統治の面で弱い。
 文革前夜の昭和39年(1964年)には、人民解放軍の総政治部が兵士向けに『毛主席語録』を編集・出版するなど、後に中国全土を巻き込むことになる文革の権力闘争から生じた人民の災禍の先駆けともなっている。
 一方、昭和53年(1978年)に始まった現在の開放改革路線の時代には、人民解放軍幹部が私利私欲に走り、上の者から下の者まで軍の持つ特権で商売や収賄を行い、腐敗が蔓延した。党中央軍事委員会の習主席の厳しい取り締まりで下火になったものの、こうした組織文化は一朝一夕に変わるものではない。
 また、令和元年(2019年)11月には、香港の街頭で人民解放軍の駐留部隊が清掃活動を行い、地元の物議を醸した。なぜ地元民に喜ばれるはずの奉仕活動が問題になったかと言えば、それが自己犠牲を偽った、民主主義運動や一国二制度に対する「見えない銃、見えない戦車」の威嚇であったからだ。武器の代わりにホウキを構えても、いつでも本来の銃に持ち替えられることが香港人に見抜かれていた。人民解放軍は、中国が「回収」したはずの元植民地においても愛されていない。
 また最近の中国では、人民解放軍の喬良と王湘穂による戦略研究の『超限戦』なる、SFばりの概念が持て囃されている。あらゆる制約や境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法、倫理など)を超越し、あらゆる手段を駆使する「制約のない戦争」を遂行し、正規軍同士の戦いである通常戦のみならず、非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使して、目的を達成しようとする戦略だ。
 しかし、人民解放軍が超限戦で初期の軍事的な勝利を達成しても、占領地住民からの信頼が得られなければ、それは最終的に泥沼化する負け戦だ。中国が望む「短期高烈度決戦(Short Sharp War)」のみでは片付かない問題であり、中国共産党に長期持久戦の覚悟と資源はあるかという疑問にもつながる。
ウソで固められた人民解放軍の出自と性格
 結局、中国共産党が指揮する人民解放軍の正統性や真実性の有無が、究極的な戦争の勝敗ポイントとなる。だが、中国人民解放軍の起源や歴史、人民との関係性はウソに満ちている。
 人民解放軍といえば、「日本敗戦後の国共内戦で土地改革を断行して貧農などの支持を集め、信頼されたことで政権を国民党から奪取できた」という神話で有名である。しかし、東北大学大学院法学研究科の阿南友亮(あなみゆうすけ)教授の広東省に関する研究によれば、少なくとも同省において中国共産党の土地改革は失敗に終わっていた。
 では、なぜ人民解放軍は広東省で勝利できたのだろうか。阿南教授は、国民党と結んだ一族に対抗する別の一族が共産党に集まり、兵を粗末に扱う国民党軍を離脱した脱走傭兵がそれに加わって同省の人民解放軍が構成されたことを実証している。中国古来の政治抗争のパターンをうまく利用したことで人気を得たのであり、社会改革で民心を把握したのではない。人民解放軍は、その「愛された」出自からして粉飾が多いのだ。
 また中国人民解放軍には、「三大紀律八項注意」という建軍の基本原則がある。三大規律は、(1) 一切の行動は指揮に従う、(2) 大衆のものは針一本、糸一筋も取らない、(3) 一切の捕獲品は公のものとする、そして八項注意は、(1) 言葉遣いは穏やかに、(2) 売り買いは公正に、(3) 借りたものは返す、(4) 壊したものは弁償する、(5) 人を殴ったり罵ったりしない、(6) 農作物を荒らさない、(7) 婦人をからかわない、(8) 捕虜をいじめない、である。
 三大紀律八項注意は、連載の前回で見た大東亜共栄圏内におけるわが軍の苛察(かさつ)横暴かつ非寛容な行いの対極をなすような、非常にシンプルで立派な教えだ。しかし、この軍規が作り話の神話に過ぎないことは、人民解放軍の侵略と弾圧と腐敗の歴史や、一帯一路における漢人の傲慢な振る舞いに対する現地住民の反発を見ればわかる。
 習近平・中国共産党中央軍事委員会主席の「中華民族の偉大な復興」の両輪を構成する一帯一路と人民解放軍は、国内外で支持されず、愛されていない。だから、そのような軍隊に依存する習主席の「中国夢」は、必然的に失敗するのである。
面子重視が生み出す弾圧と虐殺のレシピ
 このように、慢心した中国人民解放軍は心理戦や政治戦で、すでに弱みをさらけ出している。占領地統治のコストは非常に高くつき、覇権的な野望を隠すための傀儡を介した間接統治であれ、むき出しの暴力で行う直接統治であれ、過去にその面で失敗した日本の失敗をなぞるだろう。
 これをさらに悪化させるのが、人民解放軍を指揮する中国共産党中央の柔軟性の欠如だ。習近平国家主席は最近、外交や領土主権、内政などあらゆる政策で「ボトムライン思考(底線思維)」を強調する。
 だが、変化に即応できない硬直したものであるため、死守すべき最低ラインを予め定めてしまい、一度でも失敗すれば党の権威が崩壊するとの強迫観念で自縄自縛に陥っている。昭和12年(1937年)の支那事変の対応に関して、「爾後(じご)国民政府を対手とせず」と宣言してしまい、日本の選択肢を決定的に狭めた運命の近衛声明の硬直性を想起させる。
 また、中国共産党内では習近平主席を監視の上、諫止(かんし)できる人物も組織もない。唯一の「正しい考え」を遵守する同調圧力が強く、一党独裁であるために外部からの批判を認めることもできず、都合の悪いことは隠蔽され、求められた成果の達成のため手段を選ばないようになる。こうした構造的なもろさがあるため、外交的にも軍事的にも、失敗につながる集団浅慮が起きやすくなるのだ。
 国益よりも、中国共産党の面子を守る選択を続けて、政治と戦略が合致しなくなる思考法は、占領地で「引くに引かれず」の状況に追い込まれる可能性が高い。それは取りも直さず弾圧や虐殺のレシピであり、現地住民の中国に対する憎しみと反抗を増幅するのみである。
 次回の最終回では、中国がアジア・西大西洋地域で引き起こす「中華民族の偉大な復興」のための戦争において、日本が果たすべき「中国切腹(自滅)の介錯」という役割や、中国が敗戦・分割された「ポストチャイナ」の新たなアジアにおいて、日本が敗戦後75年にわたり自主性も独自の国のビジョンも持てなかった「戦後」を完全に終わらせ、目指すべき国の姿について考えてみたい。(続く)