Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

米国の日本専門家が安倍首相に送る最大級の賛辞

(平井 和也:翻訳者、海外ニュースライター)
 7年8カ月にわたる第2次安倍政権の業績は、海外でどう評価されているのか? 「過去数十年の日本の指導者の中では最も多くの成果を上げた」──米国ワシントンD.C.に本部を置く著名シンクタンクの研究員はこんな賛辞を送っている。
 8月28日に安倍晋三首相が持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由に辞任する意向を表明した。国内外のメディアは安倍首相の辞任を一斉に速報で伝え、その後、安倍政権を総括する記事を続々と発表している。
 朝日新聞の世論調査によると、第2次安倍政権の7年8カ月の実績評価として、「大いに」(17%)と「ある程度」(54%)を合わせて、71%が「評価する」と答えたという。
 このように国内外のメディアが報道する中で、戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長兼日本部長のマイケル・グリーン氏と日本部所長補佐兼シニアフェローのニコラス・セーチェーニ氏は8月28日に共著論考を発表し、安倍政権の7年8カ月を好意的に評価・分析している。マイケル・グリーン氏は、ブッシュ政権下で大統領補佐官(アジア担当)兼国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務めた、日本の安全保障政策の専門家である。以下にその概要を紹介したい。
「最も記憶に残る日本の首相」
 グリーン氏とセーチェーニ氏は、安倍首相の政権運営全般を次のように高く評価し、吉田茂に匹敵する首相だったという見方を示す。
「安倍氏はおそらく、戦後日本の復興の立役者である吉田茂以来の最も重要な日本の首相だったと言えるだろう」
 とくに高く評価するのが、安倍首相の外交政策である。
「安倍首相は、米国、インド、オーストラリアが熱心に支持し、南アジア、東南アジア、欧州の多くの国々も歓迎している“自由で開かれたインド太平洋の大戦略”を確立した」
「海洋民主主義国の緊密な協力によって支えられた自由で開かれたインド太平洋に対する安倍氏のビジョンは重要な意味を持っており、米国、オーストラリア、インドのアプローチを組み立てる役割を果たした」
「安倍氏は過去10年間よりも安定した日中関係を築いた状態で辞任することになる。北朝鮮、韓国、ロシアとの間では前進は見られなかったものの、それをより困難にした原因はこの3国の指導者の側にあったため、それは安倍氏の後継者にとっても引き続き課題となる」
「2015年8月に行った第2次世界大戦終結70周年記念の安倍氏の声明も注目すべきものだ。同声明は、戦後の首相の中で最長かつ最も包括的な内容を含むものだが、安倍氏は、これを日本の首相による包括的な謝罪として最後にすべきだと述べた。複数の世論調査によると、南アジアおよび東南アジアで、日本は今や世界で最も信用される国とされている」
 また、防衛政策についても次のように高く評価している。
「安倍氏は、日本の集団的自衛権の行使を可能とする法制を整備することによって、日米同盟を強化し、国際的な安全保障に対する日本の貢献範囲を拡大しようという取り組みを行ったことに対して、最も記憶に残る日本の首相となるだろう。憲法改革によって日本の軍事的な役割を明確にするという安倍氏の目標は果たされなかったが、日本周辺の安全保障環境が激しさを増す中でこれからも続いていくであろうしっかりとした防衛政策論議を主導した」
後継者に残された経済政策の課題
 安倍首相の後継者の課題としては、グリーン氏とセーチェーニ氏は次のように言及している。
「安倍氏は経済の復興についても公約した。日本経済は新型コロナウイルス問題が起こるまでは徐々に回復を見せており、TPP(環太平洋経済連携協定)やインド太平洋の経済統合促進策を通じた貿易に関する地域政策論議を牽引してきた。安倍氏の国内経済改革は、東京の株式市場と観光や女性の経済的自立などの分野に新たな活力をもたらしてきたが、多くの国民がもっと思い切った再編策を望んでおり、安倍氏の後継者には具体的な経済政策の処方箋が求められるだろう」
 だが安倍政権にそうしたやり残した課題があることも踏まえたうえで、グリーン氏とセーチェーニ氏は本論考を次のように締めくくっている。
「安倍氏は、必ずしもすべての政策目標を達成することができたわけではないが、過去数十年の日本の指導者の中では最も多くの成果を上げたと言える。その中でも特に、安倍氏は日本が他国をリードすることができることを実証した。この遺産を引き継いで前進させることができるかどうかは後継者たちにかかっている。安倍氏の後任候補の中には、同氏と違う方向性を提示している者は一人もおらず、それこそが、安倍氏の遺産を示す最も重要な証拠と言えるかもしれない」
 以上のように、グリーン氏とセーチェーニ氏は安倍首相の安定した政権運営や外交政策を高く評価している。特に吉田茂以来の最も重要な日本の首相だったという見方は、海外の専門家による歴史的な評価として注目に値するものではないだろうか。