ネコウヨの散歩

ネコと憂国

中国切腹後、日本は繁栄と平和的秩序のモデルとなる

(岩田太郎:在米ジャーナリスト)
※「中国切腹日本介錯論」(1)「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党、(2)中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ、(3)仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方、(4)習近平の中国がなぞる大東亜共栄圏の「失敗の本質」、(5)「一帯一路共栄圏」の民心掌握に失敗する中国の末路、(6)中国の覇権的な膨張が「新生日本」の契機になる皮肉も併せてお読みください。
 日本が望まない戦争を中国共産党が仕掛けてきた場合に、いかにして理不尽な状況を最善に変え、さらに「一石二鳥」の効果として、帝国日本の対中侵略と、その結果としての敗戦のしがらみを払拭するチャンスへと変えるか。前回は、近未来に起こるであろう中国の対日侵攻を逆手に取った日本の自立性の回復や、国家のあり方の再定義について考えた。
 最終回の今回は、中国の侵略で日本が中国との「戦争経済」に突入することによる経済格差の解消、そして世界を敵に回す中国に対する包囲網形成を日本が主導することによる新たな地域平和秩序の始まり、さらには中国敗戦による経済繁栄の基礎などについて、一つの予想を提示する。
経済格差の解消は戦争・革命・崩壊・疫病
 戦前の満洲国や戦中の日本における統制経済の実験を手掛け、戦後日本で「貧乏の追放」や「所得倍増」を掲げて高度成長期の礎を築いた岸信介首相の路線を継承した昭和後半の日本は、普通に暮らしていれば誰にでもチャンスがある、世界でも最も経済格差の小さい「一億総中流国家」となった。
 その日本では現在、グローバル化の進行により再び格差の開いた国へと転落しているが、壊された平等社会のルーツは戦前・戦中・戦後における「戦争経済の連続性」と、ガラガラポンをもたらした大東亜戦争にあった。
 スタンフォード大学歴史学部のウォルター・シャイデル教授が著書『暴力と不平等の人類史』の中で、「歴史的に不平等を是正してきたのは、戦争・革命・崩壊・疫病という4つの衝撃だけである」と看破した通りである(「疫病」たるコロナ禍は現在のところ、各国で格差を拡大させていることには注意が必要)。
 覇権国たる中国との戦争を始める時、日本では全国民の協力による国土防衛が最重要課題となる。その結果、経営者と労働者と資本家、生産者と販売業者と消費者の有機的で組織的な協力を重んじる「協調的経営者資本主義」や、統制経済と市場経済のミックスである「混合経済」が見直され、格差の縮小が起こる可能性がある。
 それは、どのような形で進むだろうか。戦前戦中の政策の展開が参考になる。
 一橋大学の森口千晶教授とカリフォルニア大学のエマニュエル・サエズ教授が2008年に発表した、明治から現在に至る日本における所得と富の集中の変化を納税データで実証した共著論文の"The Evolution of Income Concentration in Japan, 1886-2005: Evidence from Income Tax Statistics"では、「戦争遂行目的のため私権や市民的自由を奪った悪法」とされる昭和13年(1938年)の国家総動員法が、戦前に富を独占していた株主・経営者・地主への所得の集中を打ち破る契機となったことが示されている。
悪法「国家総動員法」はどのように格差を破壊したか?
 まず、戦争指導のため「資本と経営の分離(所有と経営の分離)」を目指す政府は、会社の所有者たる株主の取締役兼任を困難にさせる一方で、自己資本比率に対しておよそ10%だった配当の支払いを、昭和15年(1940年)には8%に制限し、敗戦直前の昭和20年(1945年)には5%にまで引き下げた。


 次に政府は、個人・法人所得税を昭和12、13、15、17、19、そして20年(1937、1938、1940、1942、1944、そして1945年)に段階的に引き上げ、結果として株主や取締役に支払われる配当と賞与が抑えられた。加えて、昭和15年(1940年)には取締役のボーナスの上限が設けられた。さらに政府は戦時公債の消化を奨励したため、それが株式や社債の生み出す利益を圧縮した。
 また、昭和13年(1938年)からは食糧増産を目的として、地主から小作人に農地を再分配する政策を採り、昭和17年(1942年)制定の食糧管理法による米の公定価格による買い上げで小作人を有利にし、地主には損を強要した。昭和16年(1941年)には、土地と家屋の賃貸に関して借り主の権利保護が強化され、地価と家主の賃貸収入を押し下げた。これらに加えて、戦争による物理的な破壊が富裕層の財産を破壊し、格差を縮小させた。
 森口・サエズ両教授は、「税務データによれば、所得や富の集中を砕いた最も重要な要因は戦後の米国による占領政策ではなく、第2次世界大戦だった」と指摘している。昭和後半の中流層拡大には、昭和前半の戦争が不可欠だったのである。
 なぜなら、昭和後半における日本の格差縮小は、民主主義の導入や平時の経済成長政策でもたらされたのではなく、戦争遂行のための政府による強制力を伴った所得と富の再分配や、空襲などの暴力的な破壊で実現したものであるからだ。戦争を肯定するのではないが、それが現実である。
 そして今、敗戦から75年以上を経て、中国共産党が日本に侵攻すれば、日本は侵略阻止の戦争遂行のため、経済格差を縮小させる政策を実行してゆくことになろう。それは取りも直さず、「世を經め(をさめ)民を濟ふ(すくふ)」経世済民という経済本来のあり方を、新生日本にもたらすチャンスとなるだろう。
「太平洋の孤島」を死守するため兵力分散の愚を犯した大日本帝国
 準備周到で兵器装備に優る人民解放軍は、コロナ禍で低迷する国内経済の立て直しで手一杯の米国の不介入(あるいは消極策に終始する限定的介入)さえ確保できれば、この先5年間で尖閣や台湾の奪取、さらには10年のスパンで沖縄の分離「独立」に成功すると筆者は見ている。
 わが関東軍が、世界大恐慌への対処で精一杯であった欧米諸国の隙を突いて、昭和6年(1931年)9月の柳条湖事件をきっかけに、列強介入の懸念なく満洲を制圧・支配して華北にまで介入、数年後には支那駐屯軍(北支那方面軍と中支那派遣軍を経て、総軍の支那派遣軍へと再編)が宣戦なきまま華北や華中に進出した流れのデジャブが起こるだろう。
 つまり、中国共産党にとり天祐に思われる当初の成功は、慢心とさらなる領土占領への野望を生み出す。また、「中華民族の偉大な復興」を発展させる上で不可欠な占領地への反攻を抑える意味からも、中国は第1列島線と第2列島線、さらには第3列島線で次々と新たな覇権拡張を試みるのではないか。
 だが、中国による西太平洋地域支配のための「列島線の防衛」は、大東亜戦争時の日本の敗戦につながった「連鎖する太平洋諸島の防壁」の二の舞となる。日本の敗戦後の昭和21年(1946年)に米戦略爆撃調査団が提出した報告は、次のように指摘している。
「(日本が)この『連鎖した防壁』全部を守ろうとしたため、おびただしい兵力が投入された。しかしながら、この結果、大兵力が分散されてしまった。愚かな戦略であった。分散された兵力では、敵軍が一個所に兵力を集中して攻撃してきた場合、防御できるはずがない。この墓場は底なしであった」
中国の全方位的な対外膨張が生む包囲網
 日本側でも、要塞化された太平洋諸島をつなぐ防壁の構想を発展させて、昭和18年(1943年)9月に発表された「絶対国防圏」に関して、陸軍第四航空軍の寺本熊市司令官が当時、次のように看破していた。近未来に長大な列島線と、広大な太平洋の制空権を単独で防御することになる人民解放軍に対しても当てはまる考察だ。
「大本営作戦課は(中略)絶対国防圏と言う一つの線を、千島-マリアナ諸島-ニューギニア西部に引いて絶対にこれを守ると言いだした。一体これは線なのか点なのか。(中略)要するに制空権がなければ、みんな点(孤島)になってしまって、線ではない。(中略)大きな島でも、増援、補給が途絶えたら、その島に兵隊がいるというだけで、太平洋の広い面積からすると点にさせられてしまう」
 それだけではない。現地民心の掌握に失敗する中国は、戦争の泥沼に引きずり込まれて疲弊してゆく。中国共産党というモンスターが他国を飲み込んで漢人支配地域が成長するほど敵も増え、さらに中国に敵対する国同士が結ぶようになるからだ。米戦略家エドワード・ルトワック氏が指摘するように、「中国の全方位的な対外膨張は周辺国の反発を生み、包囲網が築かれる」のである。
 一方、アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一理事長は、「日米が中国を全面的な敵性国と決めつけ、それが中国の排他的民族主義を煽り、双方とも後戻りができなくなる状況」が最も恐ろしいとするが、これは順序が真逆だ。中国が最初に覇権的な中華民族主義を主張し、それに世界が反発して中国を敵視し始めたという歴史があるからだ。
 事実、毛沢東は戦前から大漢民族主義的な「中華民族の尊厳と独立」を主張しており(毛沢東選集 第二巻)、中国共産党が階級闘争と革命的インターナショナリズムを放棄した昭和50年代後半(1980年代前半)には、影響力が強大であった社会学者・民族学者の費孝通が早くも「多くの民族が融合した中華民族」という膨張ナショナリズム的な概念を持ち出し、それが現在の漢人支配膨張の国策である「中国夢」「中華民族の偉大な復興」に発展している。
 いずれにせよ、漢人の好戦的な民族主義は世界にその本質を見抜かれ、どれだけ「一帯一路」や「人類運命共同体」などの美辞麗句で粉飾しようとも、列島線各国の人心は把握できないだろう。そのため、中国の占領・統治コストは各地で跳ね上がり、掃討戦が泥沼化し、中国が大国であっても急速に消耗すると予想する。
 その中で日本は、国際社会を味方にして対中参戦を粘り強く訴える「以夷制夷(いいせいい)」戦略を追求すべきだろう。
新生日本が主導する対中包囲網と戦後処理
 中国共産党において未解決の根源問題である「党の支配の正統性」から目を逸らし、国内問題を侵略で解決するために、党中央軍事委員会の習近平主席は必ず戦争を始める。そうした中、全力で飛び掛かってくる人民解放軍の力を逆手に取り、その勢いを利用して中国を投げ飛ばしてしまう知恵が日本に求められているといえよう。
 具体的に日本は、外交や情報戦を活用して「中露離間」「中印離間」「中蒙離間」「中越離間」「中比離間」「中欧離間」などの工作を行い、戦争被害を受ける各国と手を携えて中国に抵抗し、その資源や国力を浪費させ、戦争や統治のコストを最大限に高めて疲弊させることができる。
 日本が海洋国家から大陸国家へ転換したことが自滅のはじまりであったように、中国が大陸国家から海洋国家へ転換することは、アジアや西太平洋各地の非友好国に制されたチョークポイントを突破しなければならず、中国は勢力圏を拡張し過ぎて自壊する。
 米中戦争については、西太平洋地域の独占支配という強迫観念に衝き動かされた中国が、戦略的に退く米国を深追いする形で勝手にその方向に動いてくれよう。「中華民族の偉大な復興」完成を焦る習近平主席は、中国が米国を国力で上回る前に米国と交戦する過ちを犯すだろう。日本が真珠湾奇襲で米国を本気にさせたような過ちを、中国も犯す蓋然性は高い。
 中露戦争については、ロシアの沿海州における失地回復を狙う中国に、満洲・モンゴルや太平洋・北極海からも将来的に包囲されることになるロシアの対中警戒心を高めさせる戦略を日本は持つべきではないだろうか。
 具体的には、日本が中国を列島線の奥深くまで誘い出すことで「中国にいずれ襲われる将来」「中国一強の世界で圧迫される未来」をロシアに意識させ、本気を出した米国や抵抗する列島線諸国を相手に苦戦する中国を背後からロシアに襲わせれば、さすがの大国である中国も持ち堪えることが困難になる。
 中国はそうした状況を防ぐために、ロシアとあらかじめ不可侵条約を結ぶだろうが、日ソ不可侵条約を破った前科のあるロシアは自国の利益を第一に考えるため、中国を裏切ることには躊躇しないだろう。日本にとりソ連の参戦が敗戦を意味したように、中国もロシアの参戦で崩れよう。そうなれば中国は、「お家芸」の内部分裂を始める。
アジアに安定と繁栄をもたらす戦後構想を
 捕らぬ狸の皮算用になってはいけないが、日本は戦勝国および地域勢力として、すべての戦局展開の可能性を念頭に、アジアに安定と繁栄をもたらす戦後構想を持つべきではないだろうか。
 具体的には、中国の敗戦後に漢人が再び世界の脅威とならぬよう、本来の中原に閉じ込め、チベット・東トルキスタン・内蒙古・満洲・台湾・香港などを解放・独立させるとともに、中原を米国担当地域、インド担当地域、ベトナム担当地域、カザフスタン担当地域、日本担当地域、ロシア担当地域などに分けて分割占領する計画立案も、日本が主導権を発揮できる場面であろう。
 また、モンスター中国の台頭をもたらし、さらに諸国で経済格差を拡大させた新自由主義経済やそれに付随するグローバル化の反省をもとに、戦争のガラガラポンでより平等になったアジアにおいて、「協調的経営者資本主義」や「混合経済」に基づく、平和的な地域経済と交易のモデルを日本が提言できるのではないだろうか。
 そのようにして日本が、戦前の対中侵略とその究極の結末である大東亜戦争の惨敗で生み出された多くの矛盾や縛りから自らを解き放ち、正しい地域リーダーシップを発揮することこそ、先の大戦で亡くなられた300万人を超える英霊や民間人戦没者の前に恥じない「日本の新生」となるように思われてならない。(完)