ネコウヨの散歩

ネコと憂国

実現しない外資土地買収規制、「私権」が壁に 問われる政府の本気度

 外国人らによる防衛施設周辺や国境離島などの土地買収は長く問題視され、議員立法が模索されてきたが、いまだ日の目を見ていない。私権の制限につながるとの懸念が最大の原因だ。その間にも外国資本による土地買収は進み、実態把握は困難とも指摘される。深刻化する事態に後押しされ、政府が法整備に乗り出す形だ。
 土地取引をめぐっては、実態把握のための制度が整備されていない。不動産登記法では、登記は所有権に争いが生じた際に権利を明確にするのが主な目的で、更新は任意となっている。国籍の記載は不要で、国籍を確認できる住民票は地方自治体ごとに管理され、登記情報からたどることはできない。
 水源地を含む山林は、平成23年の森林法改正で所有者に自治体への事後届け出が義務付けられたが、国籍の欄はなく、所有者の調査は自治体に委ねている。国境離島については28年に有人国境離島法が成立し、国が買い上げを進める努力規定が盛り込まれたが、基本的に売買は自由で、防衛施設や原発の周辺の土地取引については何も規定がない。
 実態把握に向けた法整備は20年ごろから自民党を中心に何度も議員立法での提出が模索されてきたが、これまで実現していない。
 一因は国際ルールとの整合性だ。日本政府は7年、世界貿易機関(WTO)協定の一部「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)に加盟する際、諸外国と異なり、外国人による土地取得を規制する留保条項を盛り込まなかった。外資呼び込みを優先したとされ、外務省や経済産業省は規制に消極的とされる。
 公明党や自民党の一部にも、私権制限に後ろ向きな声が根強い。中国や韓国との経済的結び付きを重視するあまり、及び腰になる傾向も否めない。
 議員立法が進まない状況の中、安倍晋三前政権はようやく7月の骨太方針で、安全保障の観点から関係府省が連携して「土地利用・管理等の在り方について検討し、所要の措置を講ずる」と明記した。菅義偉(すが・よしひで)政権が継承し、法整備に乗り出す形で、実現すれば菅政権が掲げる縦割り行政打破の一環ともなる。
 外国資本の土地取引に詳しい姫路大学の平野秀樹特任教授は「この10年で事態は悪化し、もはや全体像の把握は困難なほどだ。まずはどれだけ買われたのか調べること。問題が表面化していないから何もしないというのは政治の仕事ではない」と警鐘を鳴らしている。(市岡豊大)