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安倍総理の志は死なない!!

メディアが隠す「トランプ支持者」多様化の実態

民主党の牙城ロサンゼルスで見た驚きの光景
長野 美穂 : ジャーナリスト
2020年11月03日


トランプ支持者があふれるビバリーヒルズのサイン前を観光バスが通る(写真:筆者撮影)
「ビバリーヒルズにトランプ支持者が集結してる。老若男女、あらゆる人種がいる。とにかくすごいことになってる」。トランプ支持者の情報源からそんな電話があり、10月24日の土曜日午後3時に行ってみた。
ビバリーヒルズと言えば、ご存じ「ロデオドライブ」で世界的に有名な高級ショッピング街だ。集結と言っても、せいぜい十数人のトランプ支持者がいるのだろうと想像しつつ現地に着くと、とんでもない光景に度肝を抜かれた。サンタモニカ大通りの沿道に大漁旗のような「TRUMP」と描かれた青い旗が数百枚はためいている。少なく見積もっても1000人以上のトランプ支持者が道を埋め尽くしていた。
支持者は白人男性だけではない
「あと4年!あと4年!」
「USA! USA!」
大きな声がうねりとなって交差点に響き、通行する車がひっきりなしに“応援”のクラクションを鳴らす。トランプ旗と「アメリカ・ファースト」サインを大型トラックにつけて走る男女や、巨大なトランプ旗で身体を包んで歩く若者など、まるで7月4日の独立記念日のパレードのようなお祭り騒ぎだ。


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民主党の牙城のはずのカリフォルニア州ロサンゼルスに、これだけ多数のトランプ支持者が存在していることに驚愕する。目を見張ったのは、彼らの多様性の豊かさだ。トランプ支持者は中高年の白人男性ーーそんな定説を打ち崩す光景がそこにあった。
「ベトナム系アメリカ人たちよ、トランプに投票しよう」という旗がついた小型飛行機が上空を飛ぶ。その下の沿道にはLGBTQの象徴である「レインボー旗」が多数くくりつけられたブースがある。メキシコ国旗を持って闊歩する褐色の肌の若者がいる。その横を「看護師は警察官の味方。トランプはまだ私の大統領」という文字が描かれたSUVを運転して手を振る白人女性。


「オール・ライブズ・マター」のプラカードを持つ黒人女性(写真:筆者撮影)
「トランプを支持するサーファーたち」と書かれたサインを持つ男性の横を「Women for Trump」のロゴ入りのピンクのTシャツを着た女性が犬を連れて歩く。サルサ音楽が流れ、踊り出さんばかりにノリノリの人々。
有名な「ビバリーヒルズ」サインの前は、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系、老人、子供、中年、若者など、あらゆる人種、年齢の人々が集まり、ごったがえしている。
「こんなの、見たことない」。ルイ・ヴィトンの買い物袋を持った女性がスマホでこの光景を写真に撮り、観光客を乗せた赤い屋根なしの観光バスがトランプ支持者の海の中を走る。
これだけクレイジーな光景なのにテレビ局の取材班はまったくいない。
「フリーダムが嫌いな奴は、とっとと中国に引っ越せ!」。そんなメガホンの声に合わせて、一同が「そうだ!」と叫び、トランプ支持者たちが一斉にロデオドライブの商店街を行進し始めた。多くの人がマスクをせずに大声で叫んでいる。新型コロナウイルスのスーパースプレッダーになりうる集会だ。
近くに寄って写真を撮りたいが、さすがに感染が怖い。ギリギリの距離を取って歩道の脇で写真を撮っていると、ロデオドライブのブティックで働く黒人男性がこう言った。「僕は、大統領選はバイデンに投票するけど、毎週土曜のこの光景を純粋にショーとして楽しんでる。長期のロックダウンを強行したカリフォルニア州知事とロサンゼルス市長には僕も不満があるからね」。 


LGBTQの権利を象徴するレインボー旗を身体に巻き付けたトランプ支持者(写真:筆者撮影)
ロデオドライブではコロナ禍で閉店が相次いでいる。ヴィダルサスーン美容室の看板がある店の中をのぞくと、がらんどうの空室になっていた。
別のブティックで働く黒人女性は「トランプに投票する女性がこれだけ多数いるという事実が恐怖。女性をさんざん軽視してきたトランプによく投票できるなと唖然とする」と厳しい顔をしていた。
そんな中、トランプ支持者のひとりは嬉しそうにこう語った。「大統領がコロナに罹患した頃から、隠れていたトランプ支持者が次第に“カムアウト”してきた。もうおそれて隠れなくていいんだという共通認識だ。何十年も民主党が牛耳ってきたこの街で。これはレボリューション(革命)だよ」。
ロスに住むトランプ支持者の本音
ラストベルトや「赤い州」ではない西海岸のロサンゼルス在住のトランプ支持者とは、いったいどんな人なのか。2人の支持者にじっくり話を聞いてみた。
    
「私が今回トランプに投票すると伝えたら、妹2人が激怒して、口をきいてくれなくなった」。サンタモニカ在住のジェシカ・アパリシオさんはそう語る。31歳の彼女は医療機器メーカーで働くメキシコ系アメリカ市民だ。
2016年のトランプ氏当選時、彼女はトランプ支持者ではなかった。「メキシコ国境に壁を作る。費用はメキシコに支払わせる」「ドラッグの売人やレイピストの入国を防ぐ」。そんな公約を掲げたトランプ氏が当選すると、ロサンゼルスのメキシコ人たちは激怒し猛反対した。
アパリシオさんも彼の当選に衝撃を受けた1人だ。「トランプはレイシスト(人種差別者)」。これがメキシコ人やメキシコ系アメリカ人の一般的な共通認識だと彼女は言う。5歳の時にメキシコから両親に連れられてアメリカ移住したアパリシオさんは、一家で合法移民したケースだ。
家族全員が正式に滞在許可を得て入国し、順番を守って永住権を申請した。母はホテルのコックとして、父は重機を扱う技師として、身を粉にして朝から晩まで働いた。アメリカで生まれた2人の妹たちは誕生した瞬間からアメリカ国民だが、アパリシオさんは5歳で移住した時から英語をゼロから学び、その後は永住権保持者として働きながらカリフォルニア大学のリバーサイド校に通った。


メキシコ系アメリカ人のジェシカ・アパリシオさん(写真:アパリシオさん提供)
いつかアメリカ国民になろうと、市民権の申請費用をコツコツ自力で貯めた。「貧困生活からなんとか脱出してアメリカで家族をまともに食べさせたいと願う多くのメキシコ人の親の気持ちは、私にも痛いほどわかる。私もメキシコの農場で育ったから」と彼女は言う。
「違法で国境を越えて入国する以外の手段がなかった知り合いもいる。幸運だった私は彼らをジャッジするつもりはない。でも、アメリカが国境を警備し、合法移民のみを受け入れる方針は、人種差別でもなんでもない。メキシコからドラッグ売人やギャングがこの国に違法入国しているのは事実。国境に壁を作るのは、国の安全を守るための当然の行動だと思う」
カリフォルニア州に対する不満
職業政治家ではなくビジネスマンだったトランプ大統領の発言は、彼女には「新鮮な風」が吹いてきたように感じられた。
自身を「伝統的なファミリーの価値観が大好きな典型的な真面目な長女気質」と称する彼女は、2018年にアメリカ市民になり、投票権を得た。そして、これまで以上にトランプ大統領の政策を細かくチェックするようになった。
トランプ大統領が、黒人大学生への金銭的支援を制度化し、スモール・ビジネスへの減税を実行し、さらに40万ドルの大統領年俸のほとんどを寄付し、毎年1ドルだけを受け取っているーー。それらの事実を知ると、なぜCNNなどのメディアはそれを伝えないのか、と疑問を感じるようになった。
保守派のFOXニュースも一部視聴するようになったが、すべては信じていない。つねに自分で情報に当たり、数字をチェックして判断するようにしているという。
中でも彼女を悩ませているのは、カリフォルニア州の所得税の高さだ。全米でもトップクラスの税率が生活を圧迫する。彼女は大学を卒業し、インターンを経て、スポーツクリニックの医師の受け付けの仕事を得たが、金銭的にはずっとカツカツだった。家賃が高騰するロサンゼルス市内でひとり暮らしできる余裕はまったくなく、オレンジ郡の親元に住んで長時間通勤でロサンゼルス市内の職場に通った。
「必死に働いてもいつも経済的に厳しかった。これが祖国を離れてまで両親が私に望んだアメリカン・ドリームの実態なんだろうかと愕然とした。民主党が牛耳る州で、私たち労働者は高額の税金を搾り取られている。しかし、街にはホームレスがあふれ続けており、問題が何年も何年も解決されない。どう冷静に考えても、リベラルの政治がこの街で機能していないことを実感した」
サンタモニカのがん専門の医療機関に転職し、その後は医療機器メーカーに転職。医療業界で必死に働き、キャリアの階段を上った。「私の肌はダークな色だし、見た目は完全にラティーナ。でも、白人中心の医療の職場で、ドクターたちから不当に扱われたことは今までない」。
両親を安心させたい、経済的に自立したい、という強い思いを抱く彼女は、「かわいそうなマイノリティたちの救世主と崇められていたオバマよりも、口は悪いけれど、経済の規制をとっぱらい、減税を実行し、国民に富を直接還元するトランプの行動のほうが、実際にマイノリティを幸せにしているのではないか」と感じるようになった。
白人男性と婚約し、トランプ支持を妹に伝えると、ふたりの妹は、姉が白人男性に洗脳されてしまったと嘆き、姉を「レイシスト」と呼んだ。「つらいけど、妹たちいもいつかわかってくれると信じるしかない。リベラルな人々はいつも多様性を強調するけど、私のような保守派の価値観を非難し、意見を変えろと怒り、自説を押し付けてくる。つまり本当の多様性を認めていないのでは」。
4月に結婚する彼女は、将来、自分の子供が生まれたら「マイノリティという弱者として助けてもらうだけの存在であってほしくない」と感じている。「だから子供を育てるにしてもトランプ政権がいい。バイデン政権になったら、カリフォルニアから脱出するしかないかも」と語る。
「白人ストレート男性」であることのつらさ
「白人のストレート男性というだけで、レイシストだと思われるのは、もう、まっぴらごめんなんだ」。そう語るのはロサンゼルス在住の役者兼ユーチューバーの40歳のクリス・コールズさんだ。
オレゴン州セーラム出身の彼は黒人がほとんどいない、白人が圧倒的に多い地域で育った。「うちの両親も自分もクリスチャン。隣人を愛し、汝の敵を愛せよ、という聖書の教えに従う教育を受けた。だから黒人を差別するつもりなんて、自分や家族には微塵もない」。


クリス・コールズさん(写真:コールズさん提供)
そんな彼がハリウッドの世界でオーディションを受けてシットコムのドラマなどに出演する度に、感じたのは「白人ストレート男性」としての肩身の狭さだという。「すでに有名になっている白人男性以外、現在のハリウッドは白人男性を極力雇わない方向だ。アカデミー賞の規定が改正される前からもうずっとそうだ」とコールズさんは断言する。
女性とマイノリティを積極的に起用しなければというプレッシャーが強い映画・テレビ業界で、白人男性というだけで起用率が減るという。さらにハリウッド内で保守派であることや、トランプ支持を表明することはリベラル派の監督から嫌われ、「職を失う」自殺行為を意味すると言う。
そんな中、保守派を公言し「ミスター・レーガン」というユーチューブ・チャンネルを立ち上げた彼は、ロサンゼルスのエンターテインメント業界の異端児と言ってもいい。「女性の監督、女性の脚本家を採用し、女性パワーを強調しなければいけないこの業界では、実は多くの男性脚本家がゴーストライターとして“女性の企画”に送り込まれている。自分の名前がクレジットに載らない完全なる裏方の仕事だ。それが嫌なら海外で働くしかない」。
そんな彼の発言は、ポリティカリー・コレクトではないとされ、自身のユーチューブ番組にリベラルな友人をゲストで呼ぼうとしても全員から断られ続けている。「保守派の番組になんか出たら、ハリウッドで2度と働けなくなるし、友人を全部失うから勘弁して」と友人たちに言われた。
「自分が住むダウンタウンはブラック・ライブズ・マター(BLM)のデモによる略奪で店がたくさん燃やされた。でも、白人男性がそう主張するだけで、レイシスト扱いされかねない雰囲気だ。事実を伝えているだけなのに」とコールズさん。
彼がトランプ大統領を支持するのは「実行力があり問題解決が早いからだ」と言う。一番評価しているのはトランプ大統領が規制緩和を推し進めてきたことだ。「エネルギー業界の規制を取り払い、中東和平交渉もやる。50年近くワシントンにいたバイデンができなかったことをわずか3年でやった」。
大統領選のディベートで、石油の油田の付近に住む人々の環境被害や健康被害が問われたとき、トランプ大統領は「油田の仕事で彼らは金銭的に潤っているじゃないか」と語り、バイデン氏は「いや、彼らはがんに罹患するなどの被害を受けて苦しんでいるのだ」と答えた。
ディベート放送後「大統領には人々の苦しみに共感する力が欠けている」と批判が起こった。それを受け、コールズさんは言う。
「共感力?そんな乙女チックな甘い言葉でいったい何人の国民が騙されてきたと思う?選挙前に優しい言葉をかけるだけで、実際は何もしない。それがリベラルの常套手段だ。トランプは、言っていることはきついが現実的だ。油田の側に住んで、油田で働いて大金を儲けると決めたのは、住民の選択だ。嫌なら他の土地に移住すればいい。炭鉱で働くのだって、リスクを取って金を儲けるという個人の選択。誰も強制していないんだ」
ユーチューバーになって生活水準が上がった背景
役者だけをしていた頃は、仲間とアパートをシェアして暮らすのが精一杯だったが、保守派ユーチューバーとなってから、25万人の登録視聴者を得て、広告収入により金銭的に潤い始め、ダウンタウンの高層賃貸マンションに引っ越した。つまり、それほどの数の人々が、ロサンゼルス在住の保守派の彼の声を聞きたがっているということの証明でもある。
彼がユーチューブでリベラル政治家を徹底的に叩くことで生計を成りたたせている以上、リベラル政治家の存在は彼の稼ぎに必須なのでは? と聞くとこう答えた。
「いや、たとえユーチューバーとして稼げなくなっても、リベラル政治家が全員落選してくれることの方が、自分にはありがたいね。トランプは自己愛が強すぎると言われるが、そうではないと思う。彼は自分をブランド、つまり商品として捉え、自分を買ってくれと国民に叫んでる。わかりやすさと実行力、これが彼の強みだよ」
反マスク派のコールズさんは、店に買い物に行く以外にマスクはしない。そのかわり何度もコロナ検査を受けてチェックしている。「スウェーデンのように、ロックダウンなど一切なしの政策を自分は望んでる。トランプもさすがにそこまで過激にはできなかったようだが。ロックダウンで経済が破壊されるのをこのまま黙ってロサンゼルス市民が耐え続けるとは自分にはとても思えない」。
世界で最も多様性に富んだ街、ロサンゼルス。そこに住むトランプ支持者たちは民主党の強い州内では圧倒的に少数派であることは自覚している。だが、確実に「カムアウト」する流れを作り出し、それに乗っている。もし例えトランプ大統領が今回の選挙で負けても、すでにカムアウトした彼らの存在は今後も残る。そこが2016年とは決定的に違う。