Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

露は国連の悪用をやめよ 遠藤良介

2020/11/10 09:06


 ロシアに2008~12年、メドベージェフという大統領がいたことは、多くのロシア人もあまり覚えていない。10年11月、北方領土の国後島にロシアの国家元首として初めて不法上陸した迷惑な人物である。
 最高実力者のプーチン氏は08年、当時の露憲法が大統領の連続3選を禁じていたため首相に退いた。
 メドベージェフ氏は大統領を1期だけ務めて退任し、プーチン氏に大統領職を譲った。
 メドベージェフ氏が当初から1期で辞める「つなぎ役」だった可能性は高い。他方、国連安全保障理事会の1本の決議がプーチン氏の逆鱗(げきりん)に触れ、メドベージェフ氏は不本意に退任させられたとの説もある。
 安保理は11年3月、米英仏の対リビア軍事介入に道を開く決議を採択し、結果としてロシアと友好関係にあったカダフィ・リビア政権が崩壊した。当時のメドベージェフ政権が決議案に拒否権を行使せず、棄権したことをプーチン氏は重大な失策だと考えていた。
 その国連は10月下旬、創設から75年を迎えた。近年は、安保理常任理事国として拒否権を持つ中露と米国などが対立し、機能不全が甚だしい。だが、ロシアにとっては、その状態こそが望ましいのだといえる。
 プーチン政権は、米国主導の世界秩序を弱体化させ、自らの「勢力圏」を拡大するために拒否権を使い倒すべきツールだと考えている。第二次大戦の戦勝国として得られた常任理事国の地位は、ロシアが「大国」を自任する上で数少ないよりどころでもある。
 安保理では15~19年に拒否権が16回発動されたが、うち9回はロシア単独、5回は中露両国によるものだった。ロシアはクリミア半島を併合し、中国は南シナ海の軍事拠点化を進めて国際法を踏みにじっている。この両国が、平和維持に責任を負う安保理で大きな権限を持っているのだから理不尽きわまりない。
 ロシアは国連憲章も悪用しようとしている。ラブロフ露外相が日本との北方領土交渉で、しばしば憲章の旧敵国条項を持ち出しているのがそうだ。
 ラブロフ氏は、北方領土は「第二次大戦の結果」としてロシア領になったとし、「大戦の結果は国連憲章で確定している」と主張する。日本は憲章を受け入れて国連に加盟したのだから、北方領土を要求する権利はないという。
 ラブロフ氏が念頭に置いているのは、旧敵国条項と呼ばれる53条や107条だ。53条は、旧敵国の侵略再現に対しては安保理の許可なく武力行使が可能だとしている。107条は、憲章の各条項が戦勝国の戦後処理を無効にしないと規定している。
 ラブロフ氏はとりわけ107条を曲解し、「戦勝国のしたことは神聖で揺るぎないと書かれている」などと主張する。だが、どこをどう読んでも、条文はそんなことを意味していない。
 日本は1956年の日ソ共同宣言でソ連との国交を回復し、国連に加盟した。共同宣言の署名時に北方領土交渉の継続を約束させた。91年の日ソ共同声明は「旧敵国条項は意味を失った」との認識を盛り込んでいる。95年には国連総会で旧敵国条項の削除を求める決議が採択されている。
 日本はしっかりとロシアに反論し、国連の「戦勝国」中心主義についても変革を求めていくべきだろう。(論説委員)