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トランプ氏は「平均的な米国人」 安倍晋三前首相インタビュー

 米大統領選の結果をなかなか受け入れないトランプ米大統領。国内外を引っかき回した感があるそのトランプ氏と、安倍晋三氏は蜜月関係を築いた。そんな安倍氏には「猛獣使い」とのニックネームも。インタビューでは、同盟関係についてトランプ氏から「挑戦」を受け、国論を二分しながら成立させた安全保障法制を前面に出して反論した逸話を明かした。(共同通信=倉本義孝)
© 全国新聞ネット 2016年11月の初会談前、握手を交わす安倍首相(左)と当時のトランプ次期大統領=ニューヨークのトランプタワー
―日米関係を常に重視してきましたね。トランプ氏と、どういう風に付き合おうと考えていたのですか。
 基本的なところから話したい。なぜ日本は日米同盟を重視しているのかと言えば、米国は日本が侵略された時に、唯一日本のために戦ってくれる同盟国だからだ。これは、域内いずれかの国が攻撃された場合、共同で応戦・参戦する北大西洋条約機構(NATO)と違うところだ。
 だから当然、日本の首相は米国の大統領と信頼関係を持つ。そして、信頼関係を持っていると国際社会が認識する。私は、そういう環境をつくっていくことが日本の首相の責任であると思っている。
 大統領が、どなたであれだ。2016年、トランプ氏が大統領に選出されたのは、日本の外務省にとっても予想外の出来事だった。どういう考え方を持っているか、なかなか手探りの状況だった。こうした状況の中では、まず早めに私の考え方を示すのが重要と判断した。そこで、インド太平洋地域の状況がどうなっているか、ということを最初にトランプ大統領に話をすることにした。
―インド太平洋地域の状況とは中国の話ですか。
 そうだ。中国の軍事力の増強について、その時の軍事費、あるいは海軍力、空軍力など、海外との比較も含めて説明した。表とグラフを持って行って示しながら。日米同盟が強固でなければ、この軍事バランスが崩れると。逆に、軍事バランスがとれることによって、インド太平洋地域が安定し、平和なものになっていくという話をした。


 ▽日本の投資は米に貢献
―トランプ氏は不動産で成功した資産家、実業家だが、国家間の駆け引きや外交の経験は浅かった時期だと思います。首相の説明を、どういう様子で受け止めていましたか。
 彼はずっと私の話を聞いていましたね。真剣に質問しながら。8割ぐらいは私がしゃべっていた。トランプ氏は、ずっと聞いていた。この時、私には三つ目標がありました。
 一つは、先ほど述べた、インド太平洋の安全保障環境について、トランプ大統領に理解をしていただくと。もう一つは、日米間の貿易不均衡(インバランス)に関する、日本の考え方の説明だった。不均衡にだけフォーカスするべきではなくて、日本がいかに米国に投資しているか、そして、その投資が、どれだけ、米国での雇用に貢献し、米国が海外に輸出する車の生産につながっているか、説明した。
 ある国の投資は、新たな雇用を生んでいない。一方、日本は工場を造って、米国人を雇って製造するわけですから、大きな利益をもたらしているという話をした。最後の一つは、ゴルフの約束をするという。これも重要だと思っていた(笑)
© 全国新聞ネット 5回目のゴルフ、カートで移動する2人=19年5月、千葉の茂原カントリー
 ▽首脳間の信頼関係だけでもだめ
―集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制は、国論を二分しました。不可欠と考えた理由を、改めてお聴かせください。
 まず、安全保障環境が厳しくなる中で、日米同盟が本当に機能するかどうかということについての危機感です。条約というのは、紙に書いてあるからその通りになるっていうことではない。首脳間の信頼関係だけあれば、いいということでもない。
 民主国家においてはその国の兵士が命を懸けるということを、その国の国民が、承諾しなければならない。その中で、米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約5条が発動されるかもしれない、米軍と自衛隊の共同対処が起こり得ることが、抑止力となっているわけです。 
 もちろん日米安保条約6条において、われわれ日本は、基地を提供し、バランスをとっています。けれども、米国民の立場からすれば、米国が日本防御のために、武力攻撃事態になる前に、日本海などで任務に当たっている際に、攻撃されたときに、自衛隊が米軍を助けなかったなら、その瞬間に、日米同盟は終わると思っています。そうした考えの中、集団的自衛権行使の憲法解釈の一部変更を行った。
▽日米安保「不公平」とトランプ氏
―トランプ大統領とは、安全保障を巡ってどんなやりとりをしてきましたか。
 トランプ大統領から何回も、チャレンジされたんです。「安倍さん、日本が北朝鮮から攻撃されたら米国は戦うよ」「でも私たちが、もし中国に攻撃されたとき日本は何もしないんだろう」「不公平じゃないか」と。
 私はトランプ大統領に「だから、私は憲法解釈を変えて、平和安全法制をつくりました。私は、内閣支持率を10%それで下げた」と答えた。すると「すごい、侍だ」と彼は言った。
 集団的自衛権の行使とは違うけど、武器等防護を可能とする自衛隊法改正で、自衛隊は今や、米国の航空機、艦船を何回も防護していますよ」と、具体的な話もしました。そうすると、彼はちょっと驚くんですよね、何回も同じ話をした。
―安全保障の日米協力で、日本がどんなことをしているか、トランプ氏はあまり知らなかったんですね。


 トランプ氏の考え方というのは、ある意味彼だけの考えではなくて、平均的な米国人の考え方と言ってもいいと思うんですよ。ワシントンの一部の人達は、これまで積み重ねてきた日米安保の議論、つまり日本がどれだけ協力できて、何が協力できないか、分かっているけれども。
 そうではない多くの米国人が持つ疑問を、ぶつけているんですから、それに答えられなくては、同盟は持たない。特にトランプ大統領が誕生し、そういう疑問を率直にぶつけるようになった。この流れは変わらないと思いますよ。今後もね。
(共同通信=倉本義孝、小笠原慎二、蒔田浩平、杉田雄心、編集は西野秀)