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中国人のむごいアフリカ人差別、コロナ禍で露骨に

(福島 香織:ジャーナリスト)
 中国の広州で新型コロナウイルス感染症に伴うアフリカ系住民に対する差別が横行し、その実態が米国メディアに取り上げられた。これをきっかけに中国とアフリカの鉄壁の友好関係にヒビがはいるかもしれない。
 CNNが4月11日に、こうした差別に直面するアフリカ系住民へのインタビュー取材を報じた。それによれば、以下のような扱いを受けているという。
・突然、大家から家を追い出されり、ホテルから退去を言い渡されたりする。
・抵抗すると警察を呼ばれ、拘束され、屈辱的な尋問をうける。
・症状もなく、患者と接触した覚えもないのに、強制検査を受けさせられ、14日間隔離される。
・行くところがなく、道端に寝ているアフリカ人も街にあふれている、など。
 CNNが広州の12のホテルにアフリカ人の宿泊の可否を訪ねると、10のホテルが外国人の宿泊を受け入れないと返答した。
 またCNNは、アフリカ人を助けるボランティアが撮影した動画を紹介している。その動画では匿名のアフリカ系住民が「中国に暮らすアフリカ人として本当に怖い。アフリカ系住民の居住区をウイルスのスケープゴートにしないで」と訴えていた。こうした報道を受けて米国務省の報道官は「恥ずべき排外主義」と批判し、「中国とアフリカの協力関係というのは非常に浅薄で空洞的なものだな」と嫌味を言った。
地元住民の不満や怒りの矛先がアフリカ人に
 中国の広東省広州にはもともと1990年代からアフリカ諸国のバイヤーたちが集中して居住する地域ができていた。地元中国人は彼らの肌の色から「チョコレート街」とやや差別的に呼んでいる。製造業の拠点であり、貿易もさかんな広東省の省都・広州では年に2回大型交易会が開かれ、世界中からバイヤーが往来する。広州には合法的な外国籍の定住者が2017年当時で8万8000人いるが、その17%がアフリカ系だ。短期にビジネスで出入りする人を含むと約32万人のアフリカ系の人たちが広州経由で中国に入国していると新華社が報じている。
 背景には中国とアフリカ諸国の伝統的な外交関係がある。とくに習近平政権になってからはアフリカ諸国を「一帯一路」構想の中に組み入れ、一層、積極的に投資、援助を行ってきた。それに伴い人的往来も活発になった。
 だが、中国人はもともと肌の色の濃い人間に対して差別的な感情が強く、地元の中国人とアフリカ系住民との間には感情的対立があった。また、地元庶民としては、自分たちも決して豊かとは言い難いのに、中国政府がアフリカ諸国に対してはチャイナマネーのバラマキ外交を行ってみせるのも、潜在的な不満の理由となっていた。
 2017年には広州の定住アフリカ人の三非問題「非法入境、非法居留、非法就労」(=不法入国、不法残留、不法就労)が治安や公衆衛生の悪化、麻薬密売の原因だとして全国政治協商委員会で議題として提出されるほどに、中国人とアフリカ系定住者の感情的対立は深刻化していた。
 一方で中央政府は、アフリカ各国を中国の味方につけて国際政治での優位を得るため、地元広州や中国国内のアフリカ諸国人への反感を抑え込もうとしてきた。中央政府としては、広州のアフリカ系住民は社会的弱者であるとして擁護する立場に立っている。
 こうした状況下で、新型コロナウイルス感染症が拡大し、都市封鎖や移動制限が長期にわたって行われたことで、中国人の不満が増大し、広州ではその不満や怒りが都市の弱者であるアフリカ系住民に集中的に向けられたと思われる。
ネットで告発が相次ぐ差別の実態
 その差別状況が広く知られることになった事件が4月1日に起き、4日に報じられた。新型コロナウイルスに感染したナイジェリア人男性が中国人女性看護師を襲い、負傷させたというのだ。この看護師は、広州の隔離病院から逃げ出そうとしたナイジェリア人患者を阻止しようとしたところ、殴られ、押し倒されて顔を噛まれたという。
 広東省は3月初めから海外からの渡航者に対する強制隔離措置をとっていた。だがこの事件以降は、広州のアフリカ系住民に対する強制検査、隔離措置を実行。これがSNSで拡散され、現地の中国人とアフリカ系住民の対立が一気に緊張した。
 さらに4月7日に、広州のレストラン関係者の5人のナイジェリア人が新型コロナに感染していることが明らかになったと広州当局が発表。環球時報が、広州のアフリカ人居住区で感染が拡大していると報じた。4月7日のこの日、広州市では111例の外来新型コロナ肺炎が確認されており、そのうち28例が英国からの入国者、18例が米国からの入国者だった。だが、広州を訪問中の米国人や英国人は「強制検査は受けておらず、差別もされていない」と、後にCNNに対して述べている。
 ネットでは、広州のアフリカ系住民1000人に新型コロナ肺炎の陽性結果が出た、というデマが流れた。これが、広州市民のアフリカ系住民差別に拍車をかけた。
 広州のアフリカ系住民に対する差別の様子を撮影した動画も次々と上がった。市内のレストランで入店を断られるアフリカ系住民や、ホテルやアパートを追い出されて、行くところがなく、路上に大挙して座り込むアフリカ系住民の様子などもSNS経由で流れた。新型コロナ禍で苦しむ広州のアフリカ系住民を支援するボランティアたちが、彼らの受ける差別の実態を告発する動画もあった。
 SNSで流れたある動画では、「黒人の入店お断り」との張り紙を出した広州のマクドナルド店舗が告発された。マクドナルド中国公司は、この動画を受けて、SNS上で謝罪、「特定の人々に対するいかなる差別にも反対する。差別的言動を絶対許さないものとして、さらに教育を強化し、4月12日からこの店については半日閉店して、関連の教育研修を行い、類似の事件の再発を防ぐ」とした。
 だが広東省政府は、こうした国際社会の批判にむしろ反発。広東省公安庁の副庁長の楊日華は記者会見で、「感染拡大防止の期間、広東省の外国人は新型コロナ肺炎検査を必ず受けねばならない。そして隔離治療などの防疫措置を受けねばならない。拒否すれば、公務執行妨害に当たり、法に基づき処罰する。深刻な状況であれば、強制退去か刑事責任を問うこともある」と発表した。
 また広東省は、4月13日時点で累計111人のアフリカ人が新型コロナ肺炎に感染しており、このうち19人が渡航者だと報じた。これは4月4日以降、市内のアフリカ人4553人にPCR検査を強制的に実施した結果、明らかになったという。
 さらに中国外交部報道官の中でも反米的言動が目立つ趙立堅は4月13日の定例記者会見で、「米国が中国とアフリカの友好関係を壊そうとしても無駄だ」と発言し、CNNの報道や米国務省報道官の批判は「米国の妄言」と非難。「中国政府は中国人も外国人も同様に扱っている。・・・アフリカの兄弟を差別することはない」と反論した。
 こうしたことから、目下、米国の在広州領事館は、アフリカ系アメリカ人は広州市に来ないように警告している。
黙っていないアフリカ諸国
 中国衛生健康委員会によれば、中国では新たな感染者が増加しており、4月12日は108人の感染者が出た。うち98人が海外からの渡航者だった。本土内での感染者10例はロシア国境の黒竜江省(7例)やアフリカ系住民の多い広東(3例)で発生した。こうした発表により、今の中国の新型コロナ肺炎は外国人からもたらされるものだ、という印象が広まった。
 だが、そうだとしても、外国人に対する差別の言い訳にはならない。中国政府は中国人民に対しても非人道的な人権侵害をしているが、たとえそれが中国のスタンダードだとしても、民主主義国家からみれば異常なのだ。
 広州のアフリカ系住民差別は、米中の価値観対立を激化するだけにとどまらなかった。中国に対する怒りの声がアフリカで沸き起こったのだ。
 ナイジェリア衆院議長のフェミ・グバジャビアミラは4月11日に駐ナイジェリア中国大使の周平剣と会見し、ネット上で拡散しているある動画について対応するように要請した。その動画には、広州市の防疫工作の職員が広州居住のナイジェリア人3人を隔離のために連行しようとし、パスポートを取り上げる様子が映っていた。その後 広州のナイジェリア総領事館の職員が現場に行き、パスポートを取り返したという。ナイジェリア総領事館職員は、自称・広州外事弁公室主任の中国人男性に対して中国側の対応が国際規定に符合していないとして抗議文を出していた。
 アフリカ各国政府は、広州におけるアフリカ人差別と虐待に対して次々に抗議を表明。ガーナ外相のシェリ・アヨコー・ボチュウェイは中国大使を呼び出し、ガーナ人およびその他のアフリカ国家の国民に対し非人道的待遇をしないように厳粛に要求。アフリカ連盟委員会委員長のムーサ・ファキ・マハマッドも中国大使と会談し、広州のアフリカ人の問題に言及した。ケニアの外務省も、中国がアフリカ諸国公民の合法権益を保障するように求めた。
中国は火消しに懸命
 これまで、チャイナマネーにおもねっていたアフリカ諸国のこうした反発に、さすがに中国側も動揺しているようだ。
 王毅外相はアフリカ駐在の大使からの個別の要請を受けて、火消しに懸命だ。アフリカ連盟委員会委員長のムーサ・ファキと4月13日に電話会談し、中国における外国人の健康と安全を守るために尽力する、いかなる差別もありえない、と約束。中国とアフリカの伝統的友誼は一時の影響を受けることもないし、某勢力の挑発に妨げられるものでもない、と強調し、「中国とアフリカは全面的戦略パートナーであり、中国が感染症と戦って大変な時期に、アフリカ連盟とアフリカ諸国が中国側に声援と支援を送ってくれた。感染症の政治化に明確に反対する」などと、とりなした。
 またアフリカの感染者数がすでに1万3000人を超え、WHOがアフリカ農村部への感染拡大懸念を表明する中、習近平は南アフリカ、エジプトなどアフリカ諸国の元首に電話し、慰問と支援を持ちかけ、G20の特別サミットの場でもアフリカへの支援を呼びかけている。王毅はこのことをファキとの電話会談でも言及、アフリカの兄弟に大量の防疫物資や医療チームの派遣を約束した。
 だが、エジプトでは、米国の中国に対する新型コロナ禍の損害賠償請求訴訟の動きをみて、習近平国家主席を相手取り10兆ドルの損害賠償を起こそうという民間の動きもある。パンデミックが拡大する中、経済活動の復活もままならない中国に対して、アフリカは友誼にこだわるのか、あるいは米国式の訴訟で賠償金を手に入れる方が早いとみるか。
 中国とアフリカの関係は国際社会における米中ヘゲモニー対立の鍵でもあるだけに、単なる「中国の人道問題」という以上の関心をもって、各国が事の成り行きに注目している。