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安倍総理の志は死なない!!

菅氏と小池氏のかけ引きに見る、「東京のGo To停止」があり得ない理由

なぜGo Toは停止にならなかった?
菅首相と小池知事のわかりにくい合意
 12月1日、菅義偉首相と小池百合子東京都知事の会談が行われ、焦点となっていた東京都におけるGo Toトラベルの扱いをどうするかについて、「65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人」に自粛を呼びかけることで、合意しました。
 わかりにくい合意に見えますが、ひとことでまとめれば、東京発着のGo Toトラベルの割引については、継続判断が合意されたということです。もちろん「自粛を呼びかけることで利用についての一定の歯止めになる」という政府や都の主張は理解したうえでの話ですが、それでも今回の合意の最大のポイントは「東京についてはGo Toトラベルは停止にならなかった」ということです。
 先に「本当はGo Toを停止すべきだったのか?」について事実だけ申し上げます。予めGo Toトラベルの一時停止判断をする基準としては、6つの指標が決められており、「それらの指標が『ステージ3相当』となった場合に総合的に一時停止を検討する」とされていました。
 現実には、東京よりも先に一部運用停止となった札幌と大阪では、すでに4つの指標でステージ3ではなく「ステージ4」に到達しており、その指標を踏まえてのそれぞれの知事による運用停止判断は、妥当だといえるでしょう。
 では、東京はどうかというと、11月27日時点で厚生労働省が公表した指標では、やはり4つの指標でステージ4になっています。中でも、東京が北海道や大阪よりも上回っているのが重症者の確保想定病床使用率で、50.0%に達しており、医療現場から「何とかしてくれ」という悲鳴が上がっていたというのが、合意直前の状況でした。
 ルール上は運用停止を検討する水準をすでに超えている東京都について、なぜ菅首相も小池都知事も停止を判断しなかったのでしょうか。それぞれの言い分と、これまでの経緯、そしてこれからどうなるのかについて、まとめてみたいと思います。
 菅義偉首相がGo Toトラベルの運用見直しを表明したのは、11月21日でした。国の肝入りの経済政策であり、観光業関係者が越年できるかどうかの生命線を握るGo Toトラベル事業なので、その見直しには大きな影響があります。
 しかし、この段階では見直しの中身は決まっておらず、しかも停止などの見直しについては「都道府県知事が判断し、政府が最終決定」するということで、その判断を知事に求めるという内容でした。
 この方針を受けて、大阪府の吉村洋文知事は「大阪は当てはまると思うので、その方向で進めていきたい」と述べる一方で、北海道の鈴木直道知事は、当初は停止に反対しました。しかし道内の感染者が連日200人を超え、「大変苦しい判断だが、やむを得ない」と、札幌市をキャンペーンの対象から除外するよう、正式要請しました。
国と都道府県のどちらがやるべき?
「Go To停止判断」の3つの論点
 この大阪と北海道の判断とは対照的に、「国が判断すべき」と声を上げたのが小池百合子東京都知事でした。国と都道府県のどちらが判断すべきかの主張について、論点は3つあります。
 1つ目は、東京都が「Go Toトラベル」事業の開始当初に、国による判断と決定で対象地域から除外されたという事実です。当時は「再流行は東京問題だ」という論調もあり、都は感染拡大の責任の矢面に立たされていました。これまでも国が判断してきた国のキャンペーンについて、今回だけ判断を都道府県に投げるのはおかしいのではないか、という論点です。
 2つ目に札幌、大阪の判断の非合理性です。札幌市や大阪市を目的地とする旅行への補助は停止になったものの、札幌市民や大阪市民がGo Toトラベルを利用して他の地域に旅行することは可能という決定になったのですが、これでは感染拡大の防止にならないという指摘です。
 3つ目に、政府がGo Toトラベルとコロナ第三波の流行は関係がないという説明を繰り返している点です。菅首相は衆議院予算委員会の集中審議で、「(Go Toトラベルが)原因だというエビデンスは存在しない」と発言しています。延べ利用者4000万人に対して感染者は202人に過ぎない、というのが政府の主張です。
「感染が拡大している地域への観光と、そうした地域からの旅行の両面を、行く場合と来る場合と、発着で止める必要があるのではないか、そうした全国的な視点、両方から止めるということについては、全国的な視点から国が判断を行うということが、筋ではないかというふうに考えております」
 これが11月28日の段階における小池都知事の発言であり、その論拠から「国が判断すべき」と強く主張したわけです。
よく考えると見えて来る
「停止」と「自粛」の効果の違い
 そして、逼迫する医療現場の悲鳴を受け、急遽菅首相と小池都知事の会談が行われたわけです。そこで都知事は、東京におけるGo Toトラベルの一時停止の判断を国に求めたということです。しかし、国は停止判断をしなかった。これが冒頭にお話ししたトップ会談の結果でした。
 国の主張では、単なる自粛でも感染拡大防止にとっては一定の抑止策になるといいます。制度の細部は会談を受けて観光庁が急ピッチで詰めている最中ではありますが、論理的には自粛か停止かで、次のような違いが出てきます。
 制度が一時停止になると、その期間に予定していた旅行に出かけても割引が受けられなくなります。だから、キャンセルが相次ぐ。そのキャンセル料は国が負担する方向で、キャンセルを促すように舵をとる。これが一時停止です。
 一方で自粛の場合は、旅行を決行した場合、行き先が大阪か札幌でなければ割引は予定通り受けられます。ただし、高齢者が不安を感じた場合、中止にしてもキャンセル料は政府が負担してくれます。そうなると若者は、予定通り12月から1月にかけて旅行を楽しみ、高齢者の一部だけが旅行をキャンセルする方向にインセンティブが働く。これが自粛で起きることです。
 旅行業界の立場から見れば、GoToトラベルがうまく回り出したのは10月に東京が対象になってからでした。現実には、東日本の道県民の国内旅行では、行き先の大半は東京で、それらの道や県に来訪する観光客の多くも、東京からの観光客です。
 したがって、旅行業界から見れば、今回の自粛判断は「切れかかっていた最後の蜘蛛の糸が、何とか繋がった状態で留まった」と言えるでしょう。そう考えれば、経済を考えた国の判断の背景がよく理解できます。
今より事態が悪化した場合、
「Go To停止」はあり得るのか
 では今後、事態が一歩進んだ場合に「東京ではGo Toトラベルを停止する」という判断になるのでしょうか。
 あくまで私の予測ですが、そうはならないでしょう。その代わりに次のステージでは、「Go Toトラベルは全国一斉に停止し、期間を来年夏まで延長する」という宣言が下されるはずです。
 今回の都道府県知事に判断を委ねるという騒動は、一歩引いて見れば、国民の間に議論を起こし、世論の問題意識を喚起することにあったのだと思います。そこに大阪の吉村知事、北海道の鈴木知事が応えたことで、政府は第一段階の目的は達したと思えます。
 そして次の段階は、この冬、本格的に新型コロナ感染が拡大して、病床がどうしようもなく逼迫した段階です。そのときに判断すべきはGo Toトラベルといった個別政策ではなく、緊急事態宣言の是非でしょう。そして緊急事態宣言が下されれば、自動的にGo Toトラベルも全国的に一時停止になる。ただし、観光業界の救済のために停止したGo Toトラベルは来夏まで延長される。こういったシナリオがすでに検討済みなのではないかと、私は捉えています。
 結局、首相も都知事もお互いに判断を押し付け合ったこと、そして抜本的ではない合意に至ったことは、いずれにしても国民にはわかりにくい状況でした。けれど、政治ゲームの当事者同士にとっては、意味のあるやりとりだったのだと思います。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)


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