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「多様性尊重」で逆に炎上、残念ケース増える背景

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「つくり出された炎上」多発、企業の対応も変化

西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授 / 倉沢 美左 : 東洋経済 記者

2024年12月25日

2024年もさまざまな企業で「炎上騒動」が起きた。それぞれの騒動の背景には、社会情勢や消費者心理の変化が透けて見える。印象深かった出来事を振り返りながら、2025年、企業にどんな消費者コミュニケーションが求められるのかを考察する。

※記事の内容は東洋経済の解説動画「【企業の炎上事件簿】取り下げる・取り下げないの基準」から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

撮影・編集:田中険人



「男性差別」の指摘が相次いだ


倉沢美左(以下、倉沢):2024年もジェンダーにまつわる炎上が引き続き増えていると感じます。この領域で何か新しい傾向はありますか?

西山守(以下、西山):ジェンダー関連でいうと、これまでは女性の描き方について炎上することが非常に多かったのですが、最近は男性の描き方について炎上するケースが増えてきました。

象徴的だったのが、しまむらグループが展開するベビー・子ども用品店のバースデイの事例です。「パパはいつも寝てる」といった男性をいじるような文言の入った新商品シリーズを展開したことで、「男性差別だ」という批判を受け、最終的には販売停止に至りました。

もう1つ目立ったのは、牛角の女性限定半額キャンペーン。女性でもかなり限定的な層に向けて条件付きで行われたキャンペーンだったのですが、やはり「男性差別だ」という指摘が相次いだ事例です。

倉沢:企業の事例ではないですが、直近では「40歳を過ぎたパーカーおじさんはみっともない」といった発言でコラムニストの女性が炎上し、論争が巻き起こっていましたね。

西山:同じような話で、男性の体臭について言及したフリーアナウンサーの女性が炎上したケースもありました。

男性を下げる、批判するような発言によろしくない面があるのはもちろんなのですが、以前だったら比較的許されていたのも事実です。それは「男性が強い立場で、女性が弱い立場」という認識が世間で共有されていたからだと思うのですが、今は徐々に「男性も弱者じゃないか」という意識が強まってきており、たたきづらくなってきているわけです。

今後もこの傾向は強まる可能性があるので、女性を優遇するキャンペーンだったり、男性をいじるような広告表現だったりは、炎上が起きやすくなるという点で注意が必要です。



単に多様性を尊重するだけでは反発も食らう


倉沢:ジェンダーを含む「多様性」について、それをどう尊重すべきかをめぐって起きた炎上もいくつかありましたね。

西山:そうですね、ダヴによるルッキズム批判の広告に対しては、「逆にルッキズムをあおっている」といった批判が起きましたし、ワコールがジェンダー多様性に配慮した接客方針の中で「性別にかかわらず利用できる試着室」を打ち出したのには、性被害の懸念などが指摘されました。

企業活動をするうえで多様性は必ず尊重しなければならないのですが、そこで既存の利用者・消費者、とくに女性の利用が制限されるとか、リスクが高まってしまうとか、そういう部分にも配慮する必要があります。単に多様性を尊重するだけでは、現実の利用者の反発を食らいやすくなっているといえるでしょう。

倉沢:西山さんは最近の記事で「つくり出された炎上」が多発していると指摘していますが、これはどういうことでしょうか。

西山:これまで炎上というのは、何千件、あるいは何万件という批判がSNS上で自然に巻き起こってくるものでした。でも近年は、賛否両論がちょっとだけ起きている案件についても、いわゆる「こたつ記事」で「批判殺到」「炎上」みたいに書かれ、それをきっかけに議論が沸騰していくケースが増えてきました。

例えば、丸亀製麺の事例です。上戸彩さんがうどんをすする音について「ヌードルハラスメントだ」という意見が出てきました。また、花王ハミングの動画広告で描かれている夫婦については、妻と夫の年齢差が大きすぎる点に違和感があると指摘されました。

ただいずれのケースも実態を調べてみると、実際に批判している人はそんなに多くありません。一部の意見を切り取った「こたつ記事」によって、炎上がつくり出されているといえます。

企業側の対応も変わってきました。これまでは炎上したら即、その広告やキャンペーンを取り下げる場合が多かったのですが、最近では「これはつくられた炎上では」と考えるようになってきています。自分たちが本当に悪いことをしたのか、検証してから対応するという流れです。



企業に求められる対応は高度化


倉沢:各社とも「炎上慣れ」をしてきて、ちゃんと対処できるようになってきているということでしょうか。

西山:大手企業に限っていうと、その傾向はあると思います。ただやはり、その他多くの会社は炎上にさらされると「どうすればいいんだ」とあたふたしてしまいます。対応自体が高度化している点も無視できません。

倉沢:高度化といいと?

西山:判断が難しくなっているということです。先ほども触れたように、昔であれば炎上した場合「自分たちの発信に何かしら問題があったのだろう」と判断することができたのですが、今は企業側が問題になるようなことをしていないにもかかわらず炎上する、あるいは炎上していないにもかかわらず炎上したと書かれる、みたいな現象が起きているわけです。

それに対して企業側がどう判断するのか。これは以前に比べて難しい部分が増えていると感じます。