ネコウヨの散歩

ネコと憂国

「咄嗟に隠し録りする人」小室圭さんに屈服せざるを得ない秋篠宮家

 その行く末が注目されていた秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚問題。4月8日に小室さんが全28ページに及ぶ文書を発表し、母・佳代さんと元婚約者Aさんとの金銭トラブルに関して、金銭での解決を望まない方針を明らかにした。しかし、その4日後に前言を撤回し、解決金を渡すことで事態を収める方向に進む意思を示した。
 小室家の「お金を返さなくていい」という最大の根拠になっていたのは、Aさんの「返してもらうつもりはなかった」という一言に尽きる。それをもって文書は《母が元婚約者の方へ金銭を返済する義務はなくなった》と説明。そのAさんの発言は、小室さんによって録音されていたという。
 2012年9月13日の深夜。Aさんは佳代さんに「婚約を解消したい」と突然、申し出た。隣で話を聞いていた小室さんは、咄嗟の判断で録音を回し、Aさんの「返してもらうつもりはなかったんだ」という“決定的な一言”が記録されていると、文書に記されている。小室さんの代理人によれば、「録音を相手(Aさん)が認識していたかはわからない」ので、「隠し録りデータ」である可能性が高い。
 しかし、九段下総合法律事務所の伊倉秀知弁護士は「この録音は決定打にはなり得ない」と断言する。
「第一に、一部だけを切り取った録音データは証拠として不充分です。録音データは“すべて出す”ことが大前提。どのような流れでその言葉が出たのかがわからないと、判断のしようがないからです。
 また、この録音が“隠し録音”であることも問題です。当事者間の合意がない録音は証拠として認められないこともあります。そうした性質の録音データなので、法的な証拠というよりも、世間に公表したことを含めて、ある種の“牽制”の材料のようなものになっているといえます」
 それでも公表に踏み切れたのは、眞子さまの存在があってこそではないか。
「眞子さまは借金トラブル発覚後、しばらくして録音の存在を打ち明けられたようです。それをもって“法律の専門家”の小室さんの言葉を信じられ、“お金を返す必要はない”というご意向を持たれたといいます」(皇室記者)
 この録音データは、眞子さまを懐柔しただけではない。宮内庁関係者はいう。
「常識的に、一般の会話のなかで録音する人がどれだけいるでしょうか。よほどの意図がなければ録音するなんて思いもよらない人が大半でしょうが、小室さんは咄嗟に“隠し録り”をする人なのです。小室さんにとって、録音は特別なことではなく、日常的な手段であることが、いちばん恐ろしいことです。
 これまでの眞子さまとのプライベートなやりとりも、音声録音や動画、写真、さまざまな方法で保存されている可能性があります。今後、結婚の行方が小室さんにとって納得のできない事態になれば、それらが暴露されてしまう可能性を、関係者たちは本当に恐れている」
 録音のターゲットになった可能性があるのは、眞子さまだけではないだろう。
「小室さんは何度も秋篠宮邸を訪れています。そこで、秋篠宮さまや紀子さまと交わしたごくごく私的な会話や、結婚に関連するお金の話、金銭トラブル発覚後の相談などが逐一、記録されていたとしたら……。眞子さまから録音データの存在を聞かれ、秋篠宮ご夫妻も強く憂慮されたのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)
「家族全体の苦しみ」美智子さまのご憂慮
 秋篠宮さまは昨年11月、「結婚は認めるが、婚約は別」という見解を示された。
「眞子さまと小室さんは、納采の儀などの儀式を伴わない“駆け落ち婚”をし、1億5000万円ほどの一時金も支払われないだろうという見方が強まっていました。しかし、小室さんが『録音する男』であることが判明した以上、秋篠宮家は小室さんに屈服し、希望通りにせざるを得ないでしょう。一時金は支払われ、儀式も行われると思います。小室さんが準皇族的な活動をしたいと言えば、それも認めざるを得ない。
 最短のスケジュールである10月での結婚で、小室さんと佳代さんはカネも地位も手に入れることが濃厚になってきました」(前出・皇室関係者)
 眞子さまを止められなかった秋篠宮家に、将来の天皇家に声を上げられなかった宮内庁。この結婚に、もう壁はないのか—─。
「皇室のトップである天皇陛下か、平成の30年間で天皇家の要であり続けた美智子さま。おふたりしか、“最後の砦”になり得ません。秋篠宮さまも眞子さまも、おふたりのおことばは受け入れざるを得ないでしょう」(皇室ジャーナリスト)
 陛下は今年2月、眞子さまのご結婚問題について“ご両親とよく話し合うように”と対応を促していた。
「国民との信頼関係を誰よりも大切にされてきた陛下と美智子さまが、国民からこれほど不満が噴出しているご結婚をどうお考えになられるか。当初より、眞子さまのご結婚問題は“家族全体の苦しみ”と捉えられ、いちはやく小室さんの性質を心配されたのも美智子さまでした。
 国民と皇室の結びつきはいま、危機的な状況を迎えているといっていい。国民の抗議がこれだけ宮内庁に届いているのです。“小室文書では国民は結婚を祝福できない”と秋篠宮家周辺に助言され、解決金などのさらなる対応を求められたのは、おふたりのどちらかかもしれないとまことしやかに囁かれています」(別の皇室関係者)
 令和皇室はいままさに大きな試練を迎えている。
※女性セブン2021年4月29日号
 なにを隠し録りされたか知らないが、断固としてはねつけるべし!!

アメリカの復活には「中国の脅威」が必要な理由

神話が支える「暫定協定」で分断や対立を超える
「令和の新教養」研究会
2021年04月15日

バイデン政権の国務長官として来日したブリンケン氏(左)。公聴会に出席した際、トランプの外交政策は対中関係に関する限り正しいと明言した(写真:Bloomberg)


内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の気鋭の論客4名が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
前回に引き続き、トランプ政権の外交基盤となり、アメリカ保守主義再編や欧州ポピュリズムにも大きな影響を与えたといわれるヨラム・ハゾニー氏の新刊『ナショナリズムの美徳』を中心に、国民国家、ナショナリズム、リベラリズムについて徹底討議する。
反グローバリズムの危険な顛末
佐藤:アメリカの現状から浮かび上がるのは、「ナショナリズムかグローバリズムか」という図式で物事を考えることがもはや不適切だということです。2020年の大統領選挙は、ナショナリズムを唱えたトランプの敗北に終わりましたが、だからといってグローバリズム、ないしグローバリストが勝利したわけではない。

『ナショナリズムの美徳』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)


大統領就任演説でジョー・バイデンが強調したのは国民統合です。「アメリカの物語」を一緒に作ろうと呼びかけたのです。現時点で断定はできませんが、過去の民主党政権のようにグローバリズムを推進することはない(あるいはできない)でしょう。
ところが、いま起こっていることはナショナリズムへの回帰でもない。主観的にはナショナリストだと思っている人たちが、ナショナリズムの名において、自国の国民統合を破壊する振る舞いをしているのです。端的な例は、1月に起きたトランプ支持者の議会襲撃。あれはアメリカというネイションの正統性を否定するものと評さねばなりません。
この問題はどのように捉えればよいか。実はこれもヨラム・ハゾニーの議論、より正しくは彼の議論にひそむ矛盾から説明できます。
『ナショナリズムの美徳』で、ハゾニーは国民国家を「帝国」の反対概念と位置づける。ネイションの枠を尊重するか、それを越えた覇権を目指すかの違いです。で、国民国家の長所として、帝国主義的な征服に価値を見出さないことを挙げました(同書第14章)。
しかるにハゾニーは同じ章、それもわずか9ページ後の箇所で、国民国家であったはずのヨーロッパ列強が、アジアやアメリカ、アフリカの人々を征服するという点では帝国主義的だったと述べています。ならば国民国家であることと帝国であることは対極に位置するどころか、何の矛盾もなく両立すると見なければならない。
佐藤:ハゾニーはグローバリズムも帝国主義の一種と規定します。するとナショナリズムはグローバリズム的要素を含んでおり、両者の明確な区分は不可能という話にならざるをえない。さすがにまずいと思ったか、この二面性は「驚愕すべき」(原文では「ぎょっとさせられる」)ことだなどと書いていますが、驚愕しようがしまいが現実は否定できません。
19世紀イギリスの名宰相ベンジャミン・ディズレーリは、労働者階級の利益のためにも帝国主義が必要だと主張しました。ネイションの福利を最大化したければ、国民国家は世界規模の覇権を追求すべきだと説いたのです。ディズレーリがキリスト教に改宗したユダヤ人なのにいたっては、ほとんどできすぎの感がありますね。
ナショナリストは「部族主義」に走る
現代でも事情はさして変わりません。先進国同士は、互いに相手を自由なネイションとして尊重するか、とりあえずそのふりをします。ただし先進国のレベルに達していないと見なした国に対しては、平気で帝国主義的な態度を取る。国民国家か帝国かというハゾニーの二分法は、観念としてはともかく、現実には成り立たないのです。

佐藤 健志(さとう けんじ)/評論家、作家。1966年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。1990年代以来、作劇術の観点で時代や社会を分析する評論活動を展開。『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)など著書多数。オンライン講座に『痛快! 戦後ニッポンの正体』(経営科学出版)、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』(同)がある(写真:佐藤健志)


ゆえに「アメリカ・ファースト」というトランプ式のナショナリズムも、すぐジレンマにぶつかる。ディズレーリにならえば、アメリカというネイションの福利を最大化するためにも、グローバリズムは無視できないのです。しかしハゾニー的な二分法を信じるトランプ支持者にとって、これはまことに都合が悪い。彼らの視点に立つかぎり、ネイションがグローバリストに乗っとられているとしか見えないでしょう。
このジレンマをどう解決するか。既存のネイションは信用できない以上、「グローバリズムを全否定できるネイション」の存在を新たに想定、ないし夢想するしかない。
それはアメリカというネイションより小規模になりますが、「トランプ派のネイション」と言ってもいいし、ハゾニーの議論を踏まえて、ネイションの下位集団、トライブ(部族)と規定することもできます。ナショナリズムを信奉しているつもりのトライブが、ナショナリズムの名のもとネイションを壊しにかかった、これが議会襲撃事件のメカニズムです。
佐藤:現在起きているのは、グローバリズムとトライバリズム(部族主義)によって、ネイションが引き裂かれる事態なのです。議会襲撃の直後、ワシントンの議事堂には州兵が入って警備する事態になりました。南北戦争以来のことと伝えられますが、あれはアメリカが分裂の危機に瀕した戦争でしたから、事の本質を表しています。「ナショナリズムを唱える者ならネイションを肯定するはずだ」という考えは、甘い幻想として捨て去らねばなりません。「反グローバリズムはトライバリズムへの道」が2020年代の真実です。
中野:確かに議会を襲撃した人たちの中には、部族の格好をした人もいましたね。まさにトライバリズムです。
佐藤:彼は「ジェイク・アンジェリ」を名乗る人物(本名ジェイコブ・A・チャンスリー)で、「Qアノンのシャーマン」とも呼ばれます。あの場には迷彩服を着て武装した人たちもいましたが、アンジェリのほうが注目を集めた。彼が象徴するトライバリズムこそ、トランプ支持者の本質だと見なされたのでしょう。
しかもアンジェリは「天使」の意。近代的・合理的な世界に、神話的・宗教的な世界が乱入したのです。私はちょうど、オンライン講座「自滅的改革が支持されるメカニズム」で、時代や社会は神話で動くと論じたところですが、きれいに裏書きしてくれましたね。
コンサバティブの利点
中野:もともと国民国家は非常に脆弱なものです。何か確固たる根拠のもと成り立っているのではなく、統合や分裂を繰り返し、たまたま現在のようになったというのが実情です。

中野 剛志(なかの たけし)/評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学工学研究科大学院准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『小林秀雄の政治学』(文春新書)などがある(撮影:尾形文繁)


イギリスを例にとると、4つの国からなる連合国ですが、明確な根拠があって1つになったわけではありません。さまざまな歴史的経緯の中で現在の形に落ち着いただけです。
そのため、「国民国家の根拠は何か」ということを争えば、無根拠性が暴かれ、バラバラになってしまいます。国内に複数のトライブ(部族)を抱えていれば、トライバリズムに向かっていき、社会が分裂する恐れもあります。そうした事態を避けるためには、国家の根拠を問うことをやめ、いまある国家秩序をひとまず受け入れるしかありません。
ハゾニーはこの問題を、「政府の哲学」と「政治秩序の哲学」という区分を用いて説明しています。「政府の哲学」とは、内部が統合されて安定した独立国家を前提とし、そのもとで政府の最良の形態を究明しようとする政治哲学のことです。例えば、リベラリズムは政府の最良の形態として自由の保障を求めるものですから、「政府の哲学」に当たります。
中野:もっとも、「政府の哲学」はあくまで安定した独立国家の存在を前提としています。そのため、「独立国家はいかにして可能か」という問いに対しては適切な答えを出すことができません。
これは民主政治について考えればわかりやすいと思います。民主政治とは、簡単に言うと「みんなで話し合って物事を決める政治」のことです。それでは「みんな」とは誰のことか。「みんな」が誰かを決めなければ話し合いは始まりませんが、「みんな」の範囲を「みんな」で話し合って決めることはできません。
この点を追究するのが「政治秩序の哲学」です。先ほど述べたように、国民国家の範囲は歴史的経緯の中で決まったのであって、自律的な個人の合意や民主的手続きなどによって決まったわけではありません。
ハゾニーが主張しているのは「保守主義の利点」
これに対して、ハゾニーは、現在の秩序には明確な根拠はないけども、いまのところバランスがとれているのだから、この秩序を維持していこうと考えます。いわば「暫定協定」として政治秩序を守ろうとするわけです。このような思想は保守主義と言っていいと思います。
仮にトランプ派と反トランプ派が内戦を起こせば、アメリカという国民国家は分裂しますが、トランプ派のネイションからなる国民国家と反トランプ派のネイションからなる国民国家ができるだけの話で、国民国家そのものが消えるわけではありません。
しかし、ハゾニーはそれをよしとしているわけではありません。彼は国民国家一般を擁護しているのではなく、現に存在する国民国家を擁護しているのです。彼は現在の政治秩序を重視し、それを守ることに利益を見出しているのです。だから彼が主張しているのは、「ナショナリズムの美徳」というよりはむしろ「保守主義の利点」なのです。
佐藤:ただし国民国家という「暫定協定」には、論理とは異なる無意識的な基盤があります。つまり神話。神話とは、無意識の願望を言語化・物語化することで、意識的に共有できるようにしたものです。多分に偶然によって成立した国民国家の枠が、こうして「必然的なもの」と見なされるようになる。暫定協定の永続化が図られるわけです。「神話を学ばなかった民族は例外なく滅ぶ」とは、アーノルド・トインビーの名言とされる言葉ですが、神話が共有されればネイションはまとまり、共有されなくなれば解体する。
中野:アメリカだと、リンカーン像などが非常に神々しく作られていますね。また、ジョージ・ワシントンが子どものころに父親の桜の木を傷つけてしまったことを正直に告白した話が語り継がれています。あの話自体はつまらない訓話ですが、国をまとめるにはあの手の神話が必要なのでしょう。
施:そうですね。歴史的に見ると、ネイションは30年戦争という宗教対立が終わったあとに台頭しました。当時のヨーロッパ人は神学論争やイデオロギー対立に疲れ果て、精神的安定を欲していました。そのため、イデオロギーや階級対立を超えて人々をまとめるネイションが求められたのです。ネイションが神話のようにフィクショナルなものだとしても、人々はどうしてもネイションを必要とするのです。
国民国家が生き延びる道とは
柴山:中野さんのおっしゃるとおり、国民国家はさまざまな歴史を経て現在の形になりました。私たちはそれを「暫定協定」として受け入れてきました。これに対して、いま起こっているのは、その歴史を道徳的な悪をたっぷり含んだものと考え、過去を断罪する運動です。

柴山 桂太(しばやま けいた)/京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は経済思想。1974年、東京都生まれ。主な著書にグローバル化の終焉を予見した『静かなる大恐慌』(集英社新書)、エマニュエル・トッドらとの共著『グローバリズムが世界を滅ぼす』(文春新書)など多数(撮影:佐藤 雄治)


日本でもしばしば報道されているように、アメリカでは奴隷制度に関わった人物の銅像が次々に打ち倒されています。同様のことはイギリスでも起こっています。先日、イギリスのエディンバラ大学の留学から帰ってきた学生に聞いて驚いたのですが、エディンバラ大学にあった「デイヴィッド・ヒューム・タワー」の名前が変わったそうなのです。18世紀の哲学者ヒュームの名前を冠した大学の中心的な建物ですが、ヒュームがあるエッセイで黒人差別的な文章を書いたことがあったため、問題になったようです。
中野:実にばかげていますね。
柴山:ヒュームが活躍したのは、いまから200年以上前の話です。社会規範が今とはまったく違った。たとえそれが許しがたいことだったとしても、歴史とはそういうものだから、そこは与件として見なければならないはずです。
しかし、人権問題を重視する人たちは、そうは考えない。現代のリベラルな価値観を過去にも遡行的に適用しようとしている。もちろん、そうした反省に意味がないとはいいませんが、この流れでいくと、従来の「暫定協定」をそのままの形で維持することはできないでしょうね。
佐藤:国民国家の中には、グローバリズムに進む方向性とトライバリズムに進む方向性がともに潜んでいる。両者が同時に勢いづいたら、「暫定協定」が崩れるのは避けられません。それがいま起きている事態です。国民国家が生き延びる道があるとすれば、両方の要素を取り込んだ新しい「暫定協定」を作るしかない。2020年代は、ネイション(国民)とステート(国家)をめぐる新たな神話が必要とされる時代なのです。

施 光恒(せ てるひさ)/政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授。1971年福岡県生まれ。英国シェフィールド大学大学院政治学研究科哲学修士(M.Phil)課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。著書に『リベラリズムの再生』(慶應義塾大学出版会)、『英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる』 (集英社新書)、『本当に日本人は流されやすいのか』(角川新書)など(写真:施 光恒)


施:私もそう思います。グローバリズムとトライバリズムの両方を意識し、どちらか一方に傾くことなく、うまくバランスをとることが重要です。
中野:アメリカは世界中の国々をリベラル化することを使命とし、そういうリベラリズムをナショナル・アイデンティティーとしてきました。そのため、国力がどれほど落ちこもうが、中東にも首を突っ込まなければならないし、ロシアにも首を突っ込まなければならない。ミャンマーにも首を突っ込まなければならない。自らのアイデンティティーを強調すればするほど、オーバーストレッチになって自滅する構造になっているのです。自分で自分の足を食ってしまうようなところがあるわけです。
しかし、だからと言って、この使命を放棄し、トランプ支持者たちのようにトライバリズムを進めていけば、それはそれでネイションの崩壊を招きます。これまで議論してきたように、リベラリズムであれトライバリズムであれ、いずれにせよアメリカという国家の内部崩壊を招く危険性があるのです。
アメリカが再びまとまるのは、共通の敵が出現したとき
それでは、アメリカが統一を回復するためにはどうすればよいのか。情けないことに、いくらアメリカが自ら統一を回復しようとしても、アメリカ自身にはそんな力は残っていません。私が思うに、もしアメリカが再びまとまるとすれば、共通の敵が出現したときでしょう。
その典型が9・11テロです。当時もアメリカは多くの問題を抱えていましたが、あのテロをきっかけに一気に国内がまとまりました。日米戦争の際もアメリカは国内が1つにまとまりました。アメリカは共通の敵がいれば団結する国です。もっというと、国が分裂しそうなときはあえて共通の敵を作り出そうとすることさえしかねない国なのです。
現在のアメリカにとって共通の敵とされているのは、中国です。そういう意味では、トランプもバイデンも同じように中国を脅威と見なしているのは非常に興味深いことです。バイデン政権で国務長官に就任したブリンケンは、公聴会に出席した際、トランプの外交政策は対中関係に関する限り正しいと明言しました。
これはリベラル派にとっては気に入らないでしょうが、アメリカがまとまるためには中国の脅威が必要なのです。したがって、習近平がもっと頑張ってアメリカを脅かすことが、アメリカの復活のためには最も望ましいというのが私の結論です(笑)。
(構成:中村友哉)


【図解】ヒマラヤの巨大ダム計画 中国

© LAURENCE CHU / AFP 中国・チベット自治区のヤルツァンポ川の上流と支流に位置する主要ダムを示した図解(2021年4月12日作成)。
【AFP=時事】中国で今年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、「メトク(Medog)ダム」の建設計画が発表された。
 メトクダムは、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)のヤルツァンポ川(雅魯蔵布江、Yarlung Zangbo River)に建設予定で、世界最大の発電所「三峡ダム(Three Gorges Dam)」の3倍の電力を供給する見込み。ヤルツァンポ川のインド名はブラマプトラ川(Brahmaputra River)。
 ヤルツァンポ川上流とその支流に位置するダムをまとめた。
【翻訳編集】AFPBB News


ダムを爆破すればバングラデシュは壊滅、インドも相当の打撃を受けるな。