国民と維新「ガソリン暫定税率」すれ違いの"必然"

いがみ合いの裏側にはトップ間の因縁も
安積 明子 : ジャーナリスト
2025年03月09日
「維新が言い出した話だが、自分たちがガソリン値下げに足を引っ張ってしまった結果として、ごまかしているように見える」「そもそも維新の(青柳仁士)政調会長も、この議員立法に賛成だと言うから、立憲・国民がこれを提出しようという話だった」。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は3月7日の会見で、日本維新の会を痛烈に批判した。
国民民主党は立憲民主党とともに3月3日、ガソリンに課せられている暫定税率の廃止を含む「所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案」と「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する修正案」を提出した。
一方、日本維新の会は2025年度予算案が採決された3月4日の衆院本会議で、自民党や公明党などと「所得税法等の一部を改正する法律案」に賛成し、可決させた。そして同党の吉村洋文代表は、自民党と公明党、立憲民主党、国民民主党とともに「5者協議体」の設置を提唱し、2026年4月からガソリンの暫定税率廃止を目指すことを提案した。
これに対して、榛葉氏の怒りがおさまらない。「再来年(度)からのガソリン引き下げありきの議論に、何の意味があるのか。今年(4月)から下げられたんですよ、安易な予算賛成さえなければ」。この言葉には、昨年12月に自民党の森山裕幹事長、公明党の西田実仁幹事長と交わした幹事長合意が事実上反故にされた悔しさがにじみ出ている。
半世紀も続く"暫定税率"の重さ
昨年12月の幹事長合意では、給与収入が年103万円を超えると所得税が課税される、いわゆる「103万円の壁」について、178万円を目指して2025年から引き上げることに加えて、ガソリンの暫定税率を廃止することが盛り込まれていた。
だが、自民党の税制調査会が所得税控除限度額の大幅引き上げに強く抵抗。公明党が850万円以下の所得に対して段階的に控除限度額を分ける折衷案を出したものの、国民民主党が納得せず、その間に維新が自公と合意したため、2025年度予算案が衆議院を通過してしまった。
ガソリンの暫定税率は、田中角栄内閣が1974年に“一時的に”道路整備財源として創設されて以来、半世紀以上も存続している。現在ではガソリン1リットル当たり25.1円が課せられており、国と地方に入る税収は約1.5兆円。その廃止を2025年4月から実施するのは時間的に間に合わない、というのが日本維新の会の主張だ。
同党の岩谷良平幹事長は3月7日に配信した動画で、「(2025年4月からガソリンの暫定税率を廃止するのは)混乱が起きることは間違いない。現実的にどうするかということも含めてしっかりと議論し、遅くとも来年4月からやりましょうという提案を与党に投げかけ、法案を提出した。それを議論するために自公と維新で協議体をつくり、国民民主党や立憲民主党にも呼びかけた」と説明した。
阿部司総務会長も「われわれもできるだけ早くやる意思はあるが、パフォーマンスのように『今すぐやれ』というのは責任政党としてとるべき姿ではない」と強調した。
国民民主が前のめりのワケ
一方、国民民主党は「国民の生活を考えると、すぐにやらないといけない」(古川元久・国会対策委員長)と譲らない。
そもそも、暫定税率の廃止にしろ、トリガー条項の凍結解除にしろ、生活を支えるガソリンに関する税負担軽減は国民民主党の党是でもある。同党の向山好一衆議院議員は2月18日の衆院本会議で、ガソリン税に加えてトラックの燃料の大半を占める軽油の暫定税率の撤廃を取り上げ、「物流費が軽減されれば大半の物価も下がる」と主張した。
玉木雄一郎代表は3月6日に、維新の吉村代表のポストに重ねてX(旧ツイッター)で次のように呼びかけている。
「もし、『来年度から』ガソリン減税を実施することが前提であれば(必ずしも4月からでなくても結構です)、喜んで御党との協議に応じます。 『再来年度から』を前提にすると、政府・与党は必ず新たな負担増とセットで求めてくるので、国民の負担軽減にはつながりません」
こうした玉木氏からの提案について、日本維新の会の前原誠司共同代表は6日11時半からの記者会見で「可能性はすべてある。われわれも令和8年(2026年)4月からの廃止の法案を出しているが、(それまでの)1年間何もしなくていいというわけではない。例えばガソリン価格が高騰して国民生活が苦しくなる可能性は十二分にあるわけだし、とくに地域の方、離島の方についてはさらにかさ上げされる部分もある。早ければ早いほどいいという思いが変わっていない」と話した。
ただ、「今年4月1日からだと、穴が開く1.5兆円を含めて混乱は必至だ。そういう意味では令和7年4月1日から(の廃止案)は乗れないが、その幅の中で話をするのはやぶさかではない」とした。要するに、協議はするが、「減税を実現するのは2026年度から」との維新側の主張は変わらず、双方は平行線のままということだ。
両党の関係が平行線をたどる背景
その背景には、今夏に予定される参議院選挙を控えて「独自の政策をどんどん進めていく姿勢を示したい」という国民民主党の主張と、「自公と連携することで政策を実現し、それを実績としたい」という日本維新の会の思惑が見て取れる。
とりわけ、「政治とカネ」問題にあえぐ自民党から離れる票をどのように取り込むかという点では、両者はライバル関係にあるといえる。
もっとも、昨年10月の衆院選で躍進した国民民主党のほうが政党支持率が高く、維新は兵庫県議会の百条委員会をめぐる問題で3人の処分者を出すなど、地方組織に足を引っ張られている印象が強い。それを払拭する役割を担うのが、かつて国民民主党に在籍していた前原共同代表ということになる。
その因縁も含めて、2党のこれからの動向を注視していく必要がある。
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