森永卓郎さん(享年67)が最期に問うた日本人への疑問「高い家賃に少ない手取り、日本はおかしくないですか?」

森永 卓郎 : 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授
2025年05月23日
森永氏が最期に到達した「日本人が生き抜くための"答え"」とは?
余命宣告を受けてから、「忖度なしの活動」を続け、今年1月28日に享年67で逝去した森永卓郎氏。
氏の最期の書き下ろし原稿と、亡くなる1カ月前に行ったインタビューによる“資本主義の闇”に切り込んだ『さらば!グローバル資本主義――「東京一極集中経済」からの決別』が刊行された。同書は発売前に大増刷が決まるなど、早くも話題を呼んでいる。
森永氏が最期に到達した「日本人が生き抜くための"答え"」とは――。
今回は、新刊を再編集したうえで、「高い家賃と少ない手取り」について森永卓郎さんの問題提起を紹介する。
都心ワンルームマンション家賃が「信じられない値段」
いまの家賃相場は、都内23区の利便性のいいエリアでは、信じられないことに3畳とか4畳半程度の、人ひとりが生活するのに最低限の広さのワンルームマンションの家賃が7~8万円することも少なくなりません。
初任給が(最近では上昇傾向にありますが)手取りで20万円程度(中小零細企業、非正規雇用)の若者にとって、それは大変な出費です。
そんな小さな部屋でも、都心で生活するために、若者は冷蔵庫も買わずに近くのコンビニを冷蔵庫がわりにしています。
そのためにさらに食費がかさみ、コンビニ弁当ばかりで野菜やビタミン不足になる。
このような不健康な生活を続けながら、早朝から深夜まで「やりがいのない仕事」で「巨大な組織の歯車」となって、会社や現場に縛りつけられている人も、決して少なくはないのです。
そんななかでiPhoneを買えば、場合によっては2年分割払い契約などとなる。
友達と飲みに行けば、都会の高い酒代を払わないといけないことも少なくない。
たまの休日にデートすれば、高い食費、交通費、入園料などを払わないといけない。おちおちデートもできません。
彼女彼氏がいるならばまだましで、若者たちの結婚率は下がる一方で、結婚しないから出産もない。
2023年の出生数はついに80万人を割りました。戦後のベビーブームのときの約3分の1です。
これでは日本の人口減少の下り坂曲線も急角度になる一方で、ゆるまることも期待できません。
「リモートワーク」も揺り戻しで減ってきている現実
これまでは「トカイナカ」と呼ばれる都心から1.5時間から2時間の中山間などのエリアに住むと「仕事がない」と言われていました。
コロナ禍をきっかけに「リモートワーク」が普及し、以前に比べたら若干条件はよくなって、毎日出社しなくてもいいビジネスパーソンが増えました。
それでもコロナ禍が明けると「揺り戻し」がきて、リモートワークが許されるのは週に3日だけとか、完全リアル出社という会社も増えています。
これでは都会から離れられない。一度はトカイナカに引っ越したけれど、また都会に戻らないといけない。
そんな若者が増える一方です。
結局、別の記事(『森永卓郎さん(享年67)が最期に問うた日本人への疑問「東京にこだわり、高コストで暮らすことが、本当に幸せですか?」』)でも述べたように、手取りが少ない若者も都会にしがみつくことになるのです。
いきなり「トカイナカ生活」に踏み出しても、現金を出して買わなければいけない食物や生活必需品もあります。税金や社会保険料なども考えたら、やはり家族で10万円程度のお金はかかるでしょう。
これだけの現金を稼ぐ「生業(なりわい)」がないと、人はトカイナカに生活できません。
この状況を考えたら、これを一挙に解決するのは「ベーシックインカム」の導入しかないと私は考えています。
若者も「トカイナカ」で人間らしい生活ができる
正確な数字は経済の専門家によっても諸説ありますが、多くの経済学者は「年間30兆円の赤字国債発行ならばまったく問題ない」と語っています。
私は「年間100兆円でも大丈夫だ」と思っています。なぜならコロナが広がった2020年度には、年間約80兆円の「コロナ予算」をしてもびくともしなかったのですから。
これだけの資金的な余裕があれば、消費税は全廃しても、全国民1人当たり5~6万円のベーシックインカムは出せるだろうというのが、私の持論です。
ベーシックインカムは、これまでに世界各国で実験されてきました。その経済実験の結果は、「ベーシックインカムを導入しても、労働意欲は衰えない」。
むしろ安定収入ができて「つまらない仕事を辞められる」方向になるから、多くの人が幸せになるはずです。
たとえば、毎月5万円の支給があったら4人家族で20万円。6万円の支給なら毎月24万円。これだけあれば、トカイナカならば生活できます。多くの若者たちが都会を捨てて「トカイナカ生活」に飛び込めます。
「やりがいのない仕事」を辞めて、多くのメリットがある「トカイナカ生活」に飛び込めるし、飛び込むべきです。
そうすることで若者も「生きがい」を取り戻して、人間らしい生活ができるはずです。
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