目玉は参政党、石破首相はなぜ兵庫県に? 各党党首の「第一声」から見えてきた参院選"序盤"の勢力図

7月3日に選挙戦が始まった参議院選挙は、これまでにない、いくつかの要素をはらんでいる。
まずは、与党が昨年10月から衆議院で過半数を制していないため、「政権選択選挙」と位置づけられている点だ。石破茂首相は6月23日の会見で、勝敗ラインを「非改選議席を含めて、自公で過半数」とした。これには自公両党で50議席以上を獲得すればよいことになるが、7月3日と4日に行われた朝日新聞の序盤情勢調査では「自公は非改選を含めた過半数が微妙な情勢」とされた。
第3極の政党の動きが目立つ点も注目しておきたい。国民民主党は昨年10月の衆院選で7議席から28議席に躍進したが、参院選もこれに続けとばかりに玉木雄一郎代表が“強気”の人選を行った結果、同党の政党支持率が大きく低下。再浮上を狙って山尾志桜里氏の公認を見送り、6月の東京都議選では9議席を確保(告示前はゼロ)したが、参院選はどうなるか。
「高齢の女性は子供を産めない」発言はどう影響するか
そして、今回の参院選の目玉となりそうなのが参政党だ。日本維新の会を離党した梅村みずほ氏が6月30日に比例区で出馬することを発表して所属国会議員が5人になり、日本記者クラブ主催の党首討論会への参加資格も得た。東京都選挙区や大阪府選挙区でも1議席を獲得しそうな勢いだ。
ところが好事魔多しということか、同党の神谷宗幣代表は参院選初日の銀座での第一声で、「高齢の女性は子供を産めない」と発言し、女性差別ではないかと問題視された。若い女性に子供を産んでもらうための施策を主張する中で述べられた言葉だが、党の勢いが増す中で、各政党が勝負をかける選挙初日の演説には不要だったのではないか。
思い出されるのが、国民民主党の玉木雄一郎代表が6月24日に日本外国特派員協会で行った会見だ。男性の支持率に比べて女性の支持率が低い理由を問われ、玉木氏は「われわれの(すばらしい)政策は、彼らにとって理解するのは難しい」と英語で答えて物議になった。
これもおそらくは他意はなく、日本語で対応していたら生じなかった問題だ。政治家はリップサービスやら自己顕示やらで、とかく“余計なこと”を言いがちだが、とくに多数が相手の街頭演説では、発する語彙に気をつける必要がある。
その玉木氏が第一声を発したのは、JR新橋駅前のSL広場だった。「新橋は私たちの原点です」と玉木氏が述べたとおり、国民民主党は国会が終わるたび、この場所で演説会を行ってきた。当初は10人程度が立ち止まって聞いていた程度だったが、このときは聴衆が広場のおよそ半分を占めていた。
同じ日に同じ広場をさらに埋め尽くしたのが、日本保守党だ。同党の百田尚樹代表は「日本は本当に壊れかけです」と訴えた。昨年の衆院選で3議席を獲得した日本保守党は、ネット戦略が巧みである点で国民民主党や参政党と似ている。また、斜陽化する自民党から票を奪いつつある点でも共通点が見られる。
石破首相の第一声が兵庫県になったワケ
石破首相が自民党総裁として第一声の場として兵庫県を選んだのは、大阪・関西万博の「ジャパンデー」への出席スケジュールに合わせた以上の意味がある。兵庫県選挙区で苦戦しているのは、自民党の加田裕之氏だけではない。友党・公明党の高橋光男氏は、今回の参院選において党内で最も苦戦を強いられている。
それは翌4日の公明新聞の第1面でも明らかだ。高橋氏の出陣の写真は、最重要候補であることを意味する紙面最上段右側に掲載された。
ただし、高橋氏と一緒に微笑むのは、斉藤鉄夫代表ではなく、石破首相だった点は注目すべきだ。兵庫県は新温泉町や香美町、養父市、宍粟市などが鳥取県に接しているため、同県出身の石破首相に対する親近感をアピールする意図が見える。と同時に、これは自公政権が危機に瀕する中で、自民党と公明党が改めて強い結束を示しているのにほかならない。
自公の過半数割れを狙う立憲民主党の野田佳彦代表は、宮崎県国富町で第一声を発している。32ある1人区のうち野党調整で立憲民主党が獲得した選挙区は10で、宮崎県選挙区はその1つ。立憲民主党の支持が薄いとされる西から勢いを加え、東進しようという思惑だ。
すくすくと伸びた稲が揺れる水田を背に、野田氏は「令和のコメ騒動の震源地は宮崎」と述べて、宮崎県出身の江藤拓前農林水産相を揶揄するとともに、「裏金問題を忘れてはいけない」とも主張。「今回の自民党のライバルは、まさに当事者だ」と、同選挙区で立候補し116万円の裏金問題を抱える長峯誠氏を糾弾した。
日本共産党の田村智子委員長は池袋で、社民党の福島みずほ代表は新宿で第一声を発した。政党要件(所属する国会議員5人以上、もしくは国政選挙で全国を通して2%以上の得票)を懸けた戦いに、社民党はタレントのラサール石井氏を擁立した。
玉木代表は山尾氏を避けて都心部に重点?
また、大阪府選挙区では歌手の世良公則氏が立候補を表明。高市早苗前経済安全保障担当相と動画で共演するなど、保守的な言動で知られる世良氏だが、国民民主党との接点も少なくない。世良氏は「103万円の壁」をめぐる幹事長合意を守らない自民党をX(旧ツイッター)で批判し、東京にある玉木事務所には複数回訪問している。
そして、知名度では石井氏や世良氏に劣らない山尾氏も、東京都選挙区で出馬した。第一声は地元の吉祥寺で行い、「結党時に誓い合った国民民主党ですら、選挙を前にしたら右旋回から逃れられないという状況を中から見ました」と古巣を批判。7月5日には都心に進出し、漫画家の小林よしのり氏の応援を得て、新宿や有楽町で街宣した。いわば、自分を捨てた国民民主党への殴り込みかもしれない。
一方の国民民主党の玉木代表の都内での演説は、3日にはJR山手線の駅前12カ所で行われたほか、5日夕方にはJR上野駅前、6日には武蔵小山、戸越銀座、豊洲、水道橋、お茶の水と、(山尾氏の拠点がある)多摩地区をあえて避けている印象だ。東京に重点を置くのは、「山尾騒動」前の勢いに任せて擁立した候補者2人をなんとか当選させたいとの思惑だろう。
3年前の参院選で比例区8議席、選挙区4議席の12議席を獲得し、比例票では野党でトップを占めた日本維新の会は、今回は元気がない。それでも「社会保障費の負担減」を主張し、戦っている。東京では6年前と同じく、音喜多駿氏と柳ヶ瀬裕文氏がタッグを組み、選挙戦を展開。2017~2022年に東京維新の会の事務局長を務め、「選挙の神様」と言われた藤川晋之助氏が不在の今、本当の実力が試されているのかもしれない。
その他、再生の道やチームみらいが参戦している参院選だが、世界が大きく変わろうとしている現在、既存のしがらみにとらわれない新しい勢力がどのような未来を描き、何を訴えるのかについてはぜひ注目したい。
このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。