石破茂首相が辞任しない理由

自民党は伝統的に、選挙で大きな敗北を喫した党首は辞任してきた。石破首相はそうした前例に倣うつもりはない。
日本の政治における従来の認識では、7月の参院選で自民党が大きな敗北を喫した石破茂首相は辞任すべきだと考えられている。首相就任以来、石破氏は昨年10月の衆院選、6月の東京都議選、そして今回の参院選と、3つの重要な選挙で連続して敗北している。 「三振でアウト」―自民党元幹事長の茂木敏充氏はそう表現した。彼は党幹部の中で最初に石破氏の辞任を公然と求めた一人だった。
歴史的に見て、参院選で過半数を失った自民党首相は、いずれもその直後に辞任している。1989年の宇野宗佑氏、1998年の橋本龍太郎氏、そして2007年の安倍晋三氏だ。読売新聞や毎日新聞といった主要紙は、石破氏の辞任は時間の問題だと報じている。
しかし、石破氏の公の発言を見る限り、辞任の意向は見られない。選挙結果が確定した翌日、石破氏は米国との関税交渉の継続と悪化する安全保障環境を前に、政治の停滞を防ぐ決意を表明した。これは、政権に留まるという公の宣言と広く解釈されている。
それ以来、報道機関や国会審議で問われるたびに、石破氏は首相を辞任する意向を一切否定し、メディアが自身の立場を誤報しているとさえ非難している。党員の怒号を浴びせられた後も、石破氏は少なくとも今のところは、首相の座に就く決意を固めているようだ。
厳密に言えば、日本の首相は参院選の結果で決まるわけではない。首相は、衆院選後、あるいは内閣総辞職後に召集される特別国会で選出される。自民党内には、党則に「リコール条項」があり、総裁選をやり直して新たな総裁を選出できるとの声もある。しかし、この規定は一度も試されたことがなく、施行には高いハードルが課されている。2007年に石破氏が当時の安倍首相について語った言葉を引用すると、「辞任したいと言わない限り、正当な手続きを踏まない限り辞任させることはできない」ということになる。
しかし、石破首相が辞任を迫る最大の批判者、主に保守派を無視する勇気を持つには、もっと本質的な理由があるかもしれない。
一つはメディアによる強力な擁護バリアである。いわゆる世論調査によると、回答者の過半数が石破首相の退陣は不要と考えている。自民党支持者に限定すると、その割合はさらに高くなる。NHKによると、支持者の69%が石破政権の継続を望んでいる。
メディアの支持が、石破氏に政権継続への責任感を植え付けたのかもしれない。
皮肉なことに、自民党の保守派議員たちは石破氏の辞任を求めているものの、その努力は自らの主張を損なっている可能性がある。20年近くにわたり、日本の保守派は石破氏の最大のライバルであり、両者の間には相互不信が存在する。報道によると、石破氏を権力の座から引きずり下ろそうとする彼らの試みは、石破氏の残留への決意を強めるだけかもしれない。石破氏は、保守派が自民党の最近の選挙での敗北の主因であると考えているからだ。特に、多くの保守派議員が裏金問題に関与していると疑われていることを考えるとなおさらだ。
それにしても、石破氏が政権運営の責任を果たす上で、多くの障害が待ち受けている。第一に、衆参両院の敗北は、もはや責任のベールに隠れることができないことを意味する。野党にさらに譲歩せざるを得なくなるだろう。一部の政党は石破氏への協力を公然と拒否しているが、もし石破氏が自分たちの要求を全面的に受け入れれば方針を転換する可能性を示唆している。例えば、国民民主党の玉木雄一郎代表は、「公約を果たさない石破政権とは協力しない」と述べており、石破氏が玉木氏率いる国民民主党に便宜を図れば、協力の余地を残している。
しかし、野党の影響力が拡大するにつれて、参院選後、巨額支出政党の1つとなった石破氏は、財政タカ派的な姿勢が選挙の敗因となったとも言えるが、法案成立や自身の看板政策への予算配分を望むなら、苦い試練を覚悟しなければならないだろう。自民党幹事長の森山裕氏は、党内で最も影響力のある人物の一人である。事実上のナンバー2であるだけでなく、国対委員長時代に培った人脈を活かし、議員連盟を構築し、衆院で過半数の議席を得ずに予算と関連法案を成立させた。事実上、森山氏が事実上の首相になったという見方もある。
党内では、選挙敗北の責任を誰かに取らせるべきだという声が高まっている。選挙運動の陣頭指揮を執った森山氏は、広く「いけにえの子」とみなされており、自らの運命を理解しているようだ。
仮に森山氏が辞任した場合、両院における野党勢力の統制において石破氏を補佐できる、同等の実力を持つ政治家が後任に就けるかどうかは極めて疑わしい。仮に後任が見つかったとしても、沈没船と化しつつある石破政権にその人物が身を委ねるのは危険だろう。
石破氏が本気で言っているかどうかは、本人以外には誰にも分からない。彼はいつ辞任するかわからないが、名誉ある終局に向けて動いているように見える。敬虔なクリスチャンである石破氏は、現在の状況を神の召命と捉えているのかもしれない。注目すべきことに、首相就任前に出版された選挙運動本の副題は「我が政策、我が運命」だった。
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