【お金は知っている】「対中包囲で結束」報道は甘すぎる 目を引く対中証券投資の急増…米英は国際金融資本の投資を制限すべき

産経新聞社 【お金は知っている】「対中包囲で結束」報道は甘すぎる 目を引く対中証券投資の急増…米英は国際金融資本の投資を制限すべき
対中国包囲に向けた日米欧の結束の流れができつつあるという、国内メディアの報道が目立つ。本当にそうなのか。
日本の連休期間中には欧州で対中政策をめぐる会合が相次いだ。5日には主要7カ国(G7)外相会合が閉幕し、共同声明をまとめた。
日経新聞電子版は6日付で「G7の外相や首脳級のもので初めて台湾問題にも言及した」「東シナ海や南シナ海の情勢にも触れ『一方的行動に対する強い反対』を強調した」とし、「対中包囲網づくりに欧州も足並みをそろえた」と意義を強調した。いかにも米英主導で日米欧による対中包囲網が形成されると思わせる内容である。
他方で、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は7日付社説で「欧州、対中国で見え始めた変化」と論じた。欧州連合(EU)は昨年12月に、中国との「包括的投資協定」で基本合意したものの、EU内では批准に慎重意見が増えていることを指したものだ。
だが、同社説はEUの盟主ドイツのメルケル首相について、時代遅れの「貿易を通じた変革」幻想を抱いていると厳しく指摘した。メルケル氏が中国市場にどっぷり浸かるドイツ産業界の利害に沿って、対中投資協定批准に依然として熱を上げている現実を重視したのだ。
中国・武漢発の新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)のもと、世界でいち早く感染拡大を抑え込んだ中国は経済のプラス成長を続けている。西側はコロナ禍肥りの中国市場に対する依存度をかつてなく高めている。上記のメルケル氏のように、中国の人権侵害批判に口先では同調しても、ビジネスを優先するのが西側リーダーの本音なのだ。
日本も、先の日米首脳宣言のように宣言文では「対米協調」していても、習近平政権による香港の自治剥奪と市民弾圧や新疆ウイグル自治区でのすさまじい人権抑圧に対しても、何一つ制裁行動を取ってはいない。2020年度の貿易統計では日本の中国向けの輸出は15兆8996億円と9・6%増えた。全輸出に占める中国の比率は22・9%と過去最高で対米を抜き最大となった。
「対中包囲網」を主導する米国の対中貿易はどうか。今年3月までのコロナ禍の1年間では、前年比で輸出33・8%増、輸入12・9%増と大きく増え、貿易赤字は5・1%増とそれまでの減少基調が反転した。
日米欧は貿易面ではすっかり習政権に手玉をとられている、というのが実相なのだ。中国市場に各国産業界がのめり込んでいる以上、対中包囲で各国の足並みは乱れよう。どうすべきか。
グラフは中国の対外資産・負債と、対外負債を構成する外国の対中証券投資と直接投資(いずれも残高)の前年比増減額の推移である。
コロナ禍の20年で目を引くのは対中証券投資の急増だ。西側からの投資が外貨に依存する中国に金融パワーを付け、対外資産投資を急増させている。証券投資の主役は米英の大手国際金融資本である。米英が習政権の増長を食い止めるためには、膝元の国際金融資本の対中投資を制限すべきなのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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