ウクライナ戦争の現状と大局

ロシアがウクライナに侵攻して、もうすぐ半年になります。
現状はどうなっているのでしょうか。
▼戦局
まず戦局を見てみましょう。
約半年が経過し、現状ロシア軍は、
ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州
を支配しています。
ただ、ドネツク州、ザポリージャ州は、州全域を支配でき
ているわけではありません。
ウクライナ軍は現在、クリミアのすぐ北にあるヘルソン州
を奪還しようとしています。
そして、最近クリミアで、爆発が相次いでいます。
これは、クリミア→ヘルソンの補給をたつためのウクライ
ナ軍の攻撃を見られています。
プーチンは当初、FSB第5局からの情報を基に、「3日で首
都キーウを落とせる」と考えていたそうです。
しかし、現実は、かなり厳しいことがわかってきました。
▼停戦へのウクライナとロシアの立場
停戦について、ウクライナとロシアは、現状どのような立
場なのでしょうか?
ロシア側は、積極的に停戦交渉したいと考えています。
ただ条件は、「ロシア軍が占領した土地は、ロシアのもの」。
つまり、ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン
は、
ルガンスク、ドネツクのように独立するか、
あるいは、ロシア領になる。
なぜ、こういう話になるのでしょうか?
ロシア国民は、ウクライナ侵攻前から、ルガンスク人民共
和国、ドネツク人民共和国は、「ロシアの属国」であるこ
とを理解していました。
ですから、「ルガンスク、ドネツクの独立を勝ち取った」
だけでは、数万人のロシア兵が死んだ意味がわかりません。
だから、ザポリージャ、ヘルソンも必要なのです。
ただ、ロシアがザポリージャ、ヘルソンを編入すると、世
界中のロシア擁護派が困ることになります。
なぜでしょうか?
ロシア擁護派は、
「プーチンがウクライナに侵攻した理由は、ルガンスク、
ドネツクのロシア系住民をジェノサイドから守りたいだけ
だ。
プーチンに領土的野心はない!」
などと主張していたからです。
彼らは、ロシアがザポリージャ、ヘルソンを併合したら、
今度はどうやってプーチンを擁護するのでしょうか?
一方、ウクライナは、停戦交渉を拒否しています。
なぜでしょうか?
ゼレンスキーは、大統領として、
・クリミアはロシア領
・ルガンスク、ドネツクは、独立国
・ザポリージャ、ヘルソンはロシア領
といったロシア側の条件を受け入れることは、決してでき
ません。
いえ、もしロシア軍が各地で圧勝していて、ウクライナ軍
は手も足もでずボロボロであれば、受け入れるかもしれま
せん。
しかし、ウクライナ軍は、欧米からの軍事支援で、ロシア
軍と互角に戦っている。
「勝ち目がある。クリミアも取り戻すことができる!」
と多くのウクライナ人が考えているので、
停戦交渉の必要性を感じないのです。
ウクライナもロシアも、「勝ち目がある」と考えている。
それで、ウクライナ戦争は長期化しています。
▼欧米の立場
ウクライナを支援する欧米ですが、大きく二つの陣営にわ
かれています。
すなわち、「プーチンロシアを打倒せよ派!」と「停戦交
渉派」です。
「プーチンロシアを打倒せよ派!」は、
アメリカ、イギリス、ポーランド、バルト三国などです。
アメリカ、イギリスは現在、ウクライナ戦争が原因のイン
フレで苦しんでいます。
しかし、「ウクライナが勝つまで支援する」という立場は
揺らがないでしょう。
イギリスのボリス・ジョンソン首相はまもなく引退します
が、
新首相が誰になっても変わらないはずです。
ポーランドとバルト三国は、なぜ強硬なのでしょうか?
「ロシアがウクライナに勝てば、次はポーランド、バルト
三国に攻めてくる」
と恐れているからです。
そして、その恐れは正当なものでしょう。
「停戦交渉派」は、ドイツ、フランス、イタリアです。
彼らは、「ウクライナが領土の一部をロシアに譲ってもい
いから、早く停戦してほしい」と願っています。
理由は、エネルギー(特に天然ガス)のロシア依存度が高
いからです。
2020年時点で、ドイツは58%、イタリアは40%、フラン
スは20%でした。
ユーロ圏のインフレ率は7月、前年同月比で8.9%でした。
それでも、バルト三国やポーランドのように、「ウクライ
ナが負ければ次は俺たちだ」という危機感があれば、ロシ
アに対して強気を維持できるでしょう。
しかし、ドイツ、フランス、イタリアは、
「ウクライナが負けても、ポーランドがある。
ポーランドはNATO加盟国。
ロシアでも、NATOを敵に回すようなことはしないだろう」
と考えている。
それで、ドイツ、フランス、イタリアは、ロシアに融和的
なのです。
▼中国、インドは?
中国とインドは、しばしば「ロシアの味方」と報じられま
すが、「中立」といえるでしょう。
中国のロシア産原油輸入は5月、前年比で55%も増加して
います。
インドは、もっとすごいです。
インド商工省によるとロシアからの原油輸入は2021年の
日量9万バレル(輸入の2%)から、2022年4月には日量
39万バレル(同8%)に増加しました。
こちらは、4.3倍増です。
なぜ、中印はロシア産原油を買うかというと、安いから
です。
〈 平時であれば、中国の原油の輸入価格はロシア産もサ
ウジ産も大きな差はない。
だがロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、両者の価
格差は月を追うごとに拡大している。
具体的には、中国が6月に輸入したロシア産原油の平均価
格は1バレルあたり94.6ドル(約1万2946円)と、サウジ
産の同116.6ドル(約1万5957円)より18.8%も安かった。〉
(東洋経済オンライン2022年8月9日)
一方、中国は、対ロシア輸出を減らしています。
ロイター7月13日を見てみましょう。
<中国の6月の対ロシア輸出は4カ月連続で減少した。
ロシアからの輸入は高い伸びを維持した。
中国税関総署が13日発表した統計を基にロイターが算出
した。>
<6月の中国の対ロ輸出(ドル建て)は前年同月比17%
減。
5月は8.6%減だった。
6月のロシアからの輸入は56%増。5月も80%増加し
ていた。>
輸入が高い伸びなのは、原油、天然ガスの輸入が増えてい
るから。
では、対ロ輸出は、なぜ減っているのでしょうか?
<国際的な対ロシア制裁が響き、低い伸びにとどまった。>
(同前)
そうなのです。
中国は、欧米からの「二次的制裁」を恐れ、ロシアへの輸
出を減らしているのです。
要するに中国は、
ロシア産原油は安いから買う。
でも、二次的制裁のリスクがある製品は、ロシアに輸出し
ない
というのが基本的な立場です。
中国は、ロシアを助けているのではなく、中国自身をたす
けているのでしょう。
元モスクワ国際関係大学教授ソロヴェイ氏によると、
「プーチンは、習近平が助けてくれないので激怒している」
そうです。
▼まとめ
ここまでをまとめてみましょう。
・ロシア軍はルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘル
ソンを支配している。
(ただし、ドネツク、ザポリージャは州全土を支配してい
るわけではない。)
・ロシアは、「今支配しているところは、ロシアのもの」
という原則で停戦交渉を行いたい。
・一方、ゼレンスキー政権は領土を譲る気が全然なく、
「クリミアも奪還してやる!」と決意している。
・当然、ウクライナは、停戦交渉に消極的。
・ウクライナ政府と同じ強硬な立場なのが、アメリカ、イ
ギリス、ポーランド、バルト三国など。
・一方、停戦交渉をすべきと考えているのが、ドイツ、フ
ランス、イタリア。
・中国、インドは、ロシアの味方ではなく中立。
・中国、インドは、ロシア産原油の輸入を増やしているが、
それは単に「ロシア産が今安いから」。
・一方、中国は、二次的制裁を恐れ、対ロシア輸出を減ら
している
となります。
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