Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「人間力」「一対一」で首脳との関係強化 安倍元首相〝秘話〟トランプ氏に拉致問題提起を依頼 G20で発揮した外交の真骨頂

ネコウヨ

安倍晋三元首相が、奈良市での参院選の街頭演説中に凶弾に倒れてから、間もなく9カ月となる。安倍政権で外相を務めた岸田文雄首相は、日韓首脳会談(3月16日)や、ウクライナ電撃訪問(同月21日)で内閣支持率を上昇させ、来月19~21日に地元・広島で開催するG7(先進7カ国)首脳会議に臨む。安倍氏は「自由で開かれたインド太平洋」を提唱して、民主主義陣営の共通理念として幅広い支持を得た。各国首脳と強い信頼関係を築き、国際会議で調整役を担う存在となった。安倍氏を官房副長官時代から20年以上取材してきたジャーナリストの岩田明子氏は、「さくらリポート特別版」として、3日連続で「安倍氏の秘話」を披露する。初回は「安倍外交」を振り返り、「岸田外交」を分析する。
「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、日本政府の最重要課題である拉致問題を直接提起してほしい」
史上初となる米朝首脳会談(2018年6月12日)が開かれる5日前、安倍氏は米ワシントンで、ドナルド・トランプ米大統領(当時)に一対一で向き合い、こう依頼したという。
安倍氏が政治家になる前から取り組んでいた拉致問題。「今度こそ、解決のチャンスにしたい」との思いがあった。北朝鮮が対米関係の改善を最も重視するなか、米朝の距離感が接近したのは16年ぶりのことだ。
安倍氏は、拉致被害者家族に長年寄り添い、被害者の帰国を政治的使命と考えていた。その思いの強さに、トランプ氏は理解を示した。
米朝首脳会談当日、トランプ氏は2回にわたって拉致問題を提起した。
結果的に被害者奪還には結びつかなかったが、安倍氏が「テタテ(=通訳のみを入れた首脳2人の会談)」を通じて強固な信頼関係を構築したからこその、トランプ氏の行動だったといえる。
日本外交では従来、外務省が相手国と事務レベルの交渉を行い、首脳会談は事務方が用意した交渉事項を最終的に確認する「儀式」の意味合いが強かった。
だが、安倍氏は「真の外交は、首脳自身が相手国の感触をつかむことから始まる」と強く意識していた。その実践が「テタテの最大活用」で、それこそが「安倍外交」の核だったと考えている。
一対一の会談で相手国首脳の本心をつかみ、真意を伝えて、譲歩を引き出す。安倍氏はこうした「ディール(交渉)」を得意としていた。
さらに、安倍氏は、周囲を楽しませ、場の空気を明るくする「人間力」も持ち味だった。観察力も長(た)けていた。普段の会合でも、出席者一人ひとりに声をかけ、誰もがなごめるように気を配っていた。安倍氏の人間的個性は、外交の場で首脳の心をとらえるのにも生かされた。
安倍氏は17年11月5日、埼玉県川越市の霞ヶ関カンツリー倶楽部で、初来日したトランプ氏とゴルフのラウンドをともにした。このとき、安倍氏がバンカーで突然、後方にひっくり返るアクシデントが起きた。安倍氏がすぐに起き上がって笑顔を見せると、トランプ氏は「どの体操選手よりも素晴らしかった」と声をかけた。
トランプ氏はこのエピソードが気に入ったようで、その後の首脳会談でも、「あのバック転は十点満点だった」とジョークを飛ばした。安倍氏も「あそこは、『シンゾーバンカー』と呼ばれているそうだ」と切り返し、場を盛り上げた。
形式的に一対一の会談を重ねるだけでなく、「ゴルフ外交」で人間的交流を図ることで、日米首脳の信頼関係は深まっていった。
トランプ氏をはじめとする各国首脳との個人関係強化は、多数の国々が参加する国際会議でも生かされた。
安倍氏は外交戦略として、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」という理念を掲げていた。その真骨頂を発揮したのが、G7やG20(20カ国・地域)首脳会議、いわゆる「サミット」だった。
G20サミットで発揮した安倍外交の真骨頂
日本が初めて議長国として迎えた19年6月の「G20大阪サミット」は、安倍外交の成果の一つといえる。前年にカナダで開かれたG7サミットでは、トランプ氏が閉会直後、「あんな首脳宣言は認めない!」とツイッターに投稿して結束の乱れを露呈していた。
安倍氏は、事前の日米首脳会談で、貿易分野の書きぶりについてトランプ氏を説得し、首脳宣言をまとめあげた。環境分野についても、欧州各国の首脳たちと個別に交渉し、各国から要望を受けるかたちで、トランプ氏を説き伏せた。
「テタテ」であらゆる国との二国間関係を強めたことが、「安倍外交」の存在感を高めていたことの表れといえる。
安倍氏は、G20の晩餐(ばんさん)会なども最大限活用した。米中の貿易摩擦が激化するなか、トランプ氏と、中国の習近平国家主席に雑談を促し、翌日の米中首脳会談実現につなげた。
岸田首相は来月のG7広島サミットで、議長国の首脳として「外交力」が問われることになる。ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、西側諸国と、対抗する中露、さらには南半球の途上国を中心にした第三の勢力「グローバルサウス」が存在感を増している。
岸田首相は、安倍政権時代、外相を歴代最長の4年7カ月も務めた。複雑化する国際情勢のなかで、安倍外交の遺産を生かしきることができるのか。自身のウクライナ電撃訪問をテコに、G7のメッセージを国際社会に発信し、覇権主義の拡大を食い止める力量が問われている。
いわた・あきこ ジャーナリスト、千葉大学客員教授、中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。昨年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。外交、安倍晋三元首相に関する月刊誌などへの寄稿も多数。
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