国防最前線 国産化の動きは今や〝国防そのもの〟防衛産業強化法案成立へ 「武器で儲ける」ではなく衰弱した体を健康体近付けるイメージ

海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」。カナダが後継潜水艦の候補にしているという© zakzak 提供
防衛産業強化法案が成立する見込みだ。「強化」とあるので、「武器を売って儲けようとしている人の思惑がある」などという批判がある。しかし、実際は弱るに任せて衰弱しきっている体を、少しでも健康体に近付けるイメージだ。
今、この法案が必要なのは、自国の防衛産業をこのまま衰退させてしまえば、私たちの平和が脅かされる事態になるからである。自国で装備を作れず他国依存になれば、経済的負担もより大きくなる危険性があるからだ。
近年、諸外国が「生産の自律性確保」にかじを切っている。「経済的手段による外的脅威の顕在化」が顕著になっているのだ。外国の市場なしでは自国企業が存続できない。あるいは武器を輸入に頼ることで、国の意志がいつのまにか他国に支配される現象が起きている。
インドが国連総会で、ロシアのウクライナ侵略を非難する決議案に棄権票を投じたのは、インドの装備品の約7割がロシア製であるからだ。
こうした状況に陥らないために、多くの国が国内産業を強力にサポートする施策に着手している。国産化の動きは今や「国防そのもの」となってきているのである。
日本はようやく対策をしようとしている段階だ。依然として継続が危ぶまれている分野もあり、輸出などほとんど経験もないのに「武器で儲ける」などというのは、おこがましい表現ではないだろうか。
さらに、事業撤退が相次いでいることから、国が施設を保有する事実上の「国有化」も同法案には盛り込まれている。これに対し、何年経っても引き取り手が見つからなかったらどうするのか、といった批判がある。
確かに、その事業を継承しても何のメリットもなければ、手を挙げる企業はいないだろう。これを解決するには、簡単に言えば防衛事業の「安定性」が約束されることだ。
こうしたなか、「防衛装備移転3原則」運用指針見直しの自公協議が行われていることから、指針緩和で防衛事業の魅力化を図るつもりだという報道もある。
しかし、「殺傷兵器」を外国軍に売っているなどという看板をつけられて、日本の企業が喜々として乗り出すのだろうか。「殺傷兵器」の表現を改めるか、その定義、範囲を新たに作り直すことから始めた方がいいように感じている。
そもそも、この議論はウクライナ支援を念頭に始められたはずで、まずは、防衛産業問題とは切り離して議論すべきだ。まして、ウクライナ支援は防衛産業支援ではない。同国では今も多くの人々が命を落としているのであり、同じように論じるのはむしろ非常識だろう。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書・共著に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気』(PHP研究所)、『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)、『陸・海・空 究極のブリーフィング』(ワニブックス)など。
このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。