国家プロジェクトの「MRJ」が解体された…貴重な教訓の結晶なのに 米国のリスナーから届いた衝撃写真
私が担当しているニッポン放送の情報番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」は、地上波のAM、FMの放送のほか、ポッドキャストやユーチューブなどを利用して、いつでも・どこでも聞くことが可能です。私が入社した約20年前には考えられないことですが、今は全世界からメッセージが届きます。

米ワシントン州のモーゼスレイク空港で解体される旧MRJ=今年3月、Wade J.Sackett氏撮影© zakzak 提供
番組スタートから丸5年、少しは覚えてもらったのか、海外からニュースを提供してくれる方も出てきました。
先月のある日、メールに添付された写真には衝撃を受けました。ある航空機の写真なのですが、ちょっと様子がおかしい。細長い機体が後方で2つに折れていて、垂直尾翼と水平尾翼は無残に転がっています。最初は、どこかの空港での航空事故かと思いました。しかし、機体の脇には重機の姿も見えます。
純白の機体に赤・黒・金のライン、どこかに見覚えが…と思ってメール本文を見ると、米シアトル近郊在住のリスナーさんからでした。航空関係のエンジニアをしている彼が、友人が撮影した写真を義憤とともに送ってくれたのです。
そう、壊されていたのは、わが国が「国家プロジェクト」として取り組んでいた、小型ジェット旅客機「MRJ」の飛行試験機でした。
この一文だけでも、いくつもツッコミが入りそうです。
まず、国家プロジェクトではなく私企業、三菱重工業が開発していたものだし、名称も最後はスペースジェット(SJ)と改称しました。
しかし、われわれが慣れ親しみ、その飛行を夢見たのは「MRJ」という飛行機です。税金も投入されて、政府のバックアップもあったわけで、私企業の枠を超えて「国家プロジェクト」だったと私は思います。ここをごまかしてはいけません。
というのも、それだけのプロジェクトの奮闘と挫折を身にまとった機体は、失敗したとはいえ記録として残すべきではないでしょうか?
折しも、先月末、経産省が「検証のための会議を立ち上げる」と報道されました。「商業飛行に必要な型式証明のノウハウが不足していた」とか、「900を超える設計変更を余儀なくされたのが頓挫した原因」とか、「米航空当局が自国産業を優先するため証明を出し渋った」など、被害妄想まで言われます。
型式証明を取るのが難しいのは、最初から分かっていたはずです。ある関係者は「政治家も役人も企業も、まったく航空機の世界を理解せずに飛び込んでいったのが今回の結果」と評しました。
確かに、貴重な教訓の結晶である機体をシレッと壊してしまうように、失敗を無かったことにする風土そのものが敗れた一因でしょう。
件のエンジニアは「解体するのは数日で終わりますが、航空機産業を立て直すには数十年の歳月が必要です」と記していました。せめて、経産省の検証は、企業も省庁も横断した実のあるものになることを期待します。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!Cozy up!」(月~金曜朝6―8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。
失敗自体はやむをえないかもしれない。しかし、教訓を活かされることもなく、存在自体を抹消されてしまう機体は無念だろうな…
このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。