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安倍総理の志は死なない!!

フランス〝裏切り〟懸念 台湾めぐり中国の罠、経済武器にG7を切り崩し 島田洋一氏「対中包囲網の抜け穴になる可能性」

フランス紙「レゼコー」が、エマニュエル・マクロン大統領の驚くべきインタビュー発言を報じた。台湾情勢について、欧州は対立する米中両国のどちらにも「追随」すべきでないとの考えを示したというのだ。マクロン氏は今月、中国に国賓として招かれ、習近平国家主席から異例の厚遇を受けたという。中国共産党政権が経済を武器に、G7(先進7カ国)の切り崩しを進めているとの指摘もある。中国軍は10日も、国産空母「山東」を参加させ台湾周辺で軍事演習を続けた。「台湾有事は日本有事」とされるなか、マクロン氏の発言は「裏切り」のようにも感じる。岸田文雄首相は来月、広島で開催されるG7首脳会議で、「自由」「民主」「人権」「法の支配」という共通の価値観を持つ自由主義陣営の結束を示す必要がありそうだ。
「最悪なのは、欧州がこの問題(=台湾情勢)で、米国のペースや中国の過剰反応に追随しなければならないと考えることだ」「私たちの優先事項は、他国の予定に合わせることではない」
レゼコーは9日、マクロン氏の発言をこう伝えた。インタビューは5日から7日までの訪中の間に行われたという。
マクロン氏は7日、習氏との2度目の夕食の席で、台湾情勢を話し合ったという。
大統領府筋によると、協議は「濃密かつ率直」で、マクロン氏は「中国が攻撃を仕掛ける意思を持たないよう(情勢悪化を招く)偶発事故や緊張激化への注意が必要だとの認識を抱いた」という。
中台関係をめぐっては、台湾の蔡英文総統が5日(米西部時間)、米ロサンゼルス郊外で、米下院のケビン・マッカーシー議長と会談した。
両氏は、「(米台協力の強化は)自由な世界のために重要で、経済的な自由や平和、地域の安定を守るのに不可欠だ」(マッカーシー氏)、「(米議会)超党派の揺るぎない支援は、台湾が孤立していないことを示した」(蔡氏)などと語り合った。
これに対し、中国政府は6日、一斉に非難の談話を発表した。
中国外務省の報道官は「(台湾は)中国の核心的利益の中の核心で、中米関係において第一の越えてはならないレッドライン(譲れない一線)だ」と主張した。中国国防省は「中国人民解放軍は高度な警戒を保ち、国家主権と領土保全を断固として守り抜く」と表明した。
中国軍は8日から3日間、中国初の国産空母「山東」をはじめ、多数の艦船、戦闘機、爆撃機などが台湾周辺で軍事演習を行った。報復措置の一環とみられる。
マクロン氏の冒頭の発言は、中国共産党政権の軍事的覇権拡大から距離を置いているようにも感じる。
ロシアによるウクライナ侵攻についても、マクロン氏は6日、習氏との会談で次のように発言していた。
「ロシアに正気を取り戻させ、みんなを交渉の場につかせるため、中国を頼りにしている」「中仏はともに独自性を重んじる国。国際秩序を維持するため一緒に働ける」
マクロン氏の中国訪問について、中国共産党政権は異例ともいえる厚遇でもてなしたとの報道がある。
ロイター通信は、習氏が7日、マクロン氏のために、習氏の父親が広東省トップ時代に使っていた公邸で茶会を開いたことを挙げ、「訪中した外国の指導者を、習氏がここまで親密に接待するのは極めて珍しい」と伝えた。
その狙いについて、複数の外交官から「米国の動きに反対する際に支持してくれる国を探すなかで、EU(欧州連合)の主要メンバーであるフランスとの関係を重視している姿勢が浮き彫りになった」との見方が示されているという。
中国に接近しているのはフランスだけではない。EUからは昨年秋以降、ドイツのオラフ・ショルツ首相や、スペインのペドロ・サンチェス首相らが中国を訪れている。
いずれの国も中国市場への期待感が強い。
ドイツの自動車産業にとって、中国市場は欠かせない。スペインは、新型コロナウイルス禍後の中国人観光客の復活に期待を寄せる。今回のマクロン氏訪中には、航空大手エアバス、フランス電力など仏企業トップらが同行した。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「基本的にG7の中で、欧州の主敵はロシアで、中国については日本と米国に『頑張ってくれ』という認識だ。ロシアに対する制裁を続けざるを得ない中で、中国にまで制裁という話になると、ヨーロッパとしては経済的につらくなるため、中国との関係を強めているのではないか。ただ、フランスなどの動きが対中包囲網の抜け穴になる可能性があり、日米としてはしっかりと不快感を示すことが必要だ」と話す。
日本では来月19~21日、広島市でG7首脳会議が開かれる。議長国の首脳として迎える岸田首相は、G7の結束が乱れつつあるなかで、どう対応すべきか。
島田氏は「中国やロシアとの取引に頼らなくても、G7で埋め合わせる経済協力ができるという方向に持っていくことが大事だ。中国との関係が切れたとしても、G7を中心とした自由主義圏で、市場やサプライチェーンを確保できる態勢をつくれるよう、岸田首相がリーダーシップを取る必要がある」と話した。