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「円安のデメリット」ばかりが叫ばれる背景事情

ネコウヨ

円安が物価上昇の要因というのは間違いないが…
森永 康平 : マネネCEO/経済アナリスト
2022年11月01日
円安のデメリットばかりを強調して報じられることが少なくありません。経済アナリストの森永康平氏の著書『大値上がり時代のスゴイお金戦略』から一部抜粋し、円安のメリットとデメリットを両面から解説します。
円安のメリットとデメリット
物事にはメリットとデメリットがあります。これは当たり前のことだと思いますが、意外とこのことを理解しないままに議論をしようとする人がいます。特にSNSを見ているとまともに議論ができない人が多いなと思うことが多々あります。黒か白か、ゼロかイチか、という議論ばかりして、揚げ句の果てには人格攻撃を始めて終わるというものです。
何事にも黒と白という両極端があって、実はその間の灰色の部分に最適解があり、しかもその最適解は周辺環境の変化に応じて変わっていくということを頭に入れておかないといけません。
あえて意図的にメリットかデメリットの片方にだけ焦点を当てて、世論を操作しようとする有識者やメディアも存在しますから、情報があふれる現代のネット社会では情報を選別するメディアリテラシーも重要となります。
少し話がそれましたが、なぜこのような話をしたかというと、円安についてもメリットだけを主張したり、デメリットばかりを喧伝する人やメディアが多く目につくため注意喚起したかったからです。私たちはつねに冷静に物事を捉えなければいけません。それでは、まず円安のメリットについて考えてみましょう。最もよく耳にするのは「円安は輸出企業に追い風になる」というものではないでしょうか。その理由はステップを踏んで考えれば理解できるはずです。
たとえば1ドル=100円のときに、国内で100万円で売っているものをアメリカに輸出した場合、いくらで売ることになるでしょうか。ここでは議論を簡単にするために、関税や輸出にかかるコストなどは一切考慮しないものとします。1ドル=100円ですから、国内で100万円で売っていたものはアメリカでは1万ドルで売ることになります。
それでは、少し極端ですが計算を簡単にするために1ドル=200円と円安になった場合はどうでしょうか。国内で100万円で売っているものはアメリカでは5000ドルで売ることになります。この結果、作っているものは何も変わっていないのに、アメリカ人から見ると値段だけが半額になり、とてもお得に見えるわけです。
また、この理屈を少し変えて考えると、アメリカで100ドル稼いだ企業が円安になったタイミングでドルを円に転換して国内に資金を戻すと、円換算したときに稼いだ時点よりも多くの金額を手に入れることができるのです。このように、為替の影響で出た利益を「為替差益」と呼んだりします。
他にも日本に来る外国人からすれば、円安になると自国から持ち込んだお金を日本円に両替したときにたくさんの円を受け取ることができますから、訪日外国人観光客が増える可能性があることも円安のメリットといえるでしょう。
それでは、円安のデメリットとはなんでしょうか。外貨に対して円の価値が下がるのが円安だと考えればわかることですが、海外から輸入をするときに必要となる円が増えてしまうのです。海外から1ドルのものを輸入するときに、1ドル=100円のときは100円で輸入できますが、1ドル=200円だったら、200円必要になると考えれば簡単に理解できますよね。
このように、円安にはメリットもデメリットもありますし、立場によって円安がいいことであると感じる人もいれば、円安は困ると考える人もいるということです。何度も繰り返しますが、メリットとデメリットの両方をつねに意識して、明らかにどちらか一方にかたよった情報に振り回されることがないようにしましょう。
逆に「円高のメリットとデメリットは何か」と気になる人がいるかもしれませんが、これは円安のメリットとデメリットを反対にして考えてもらえればと思います。
なぜ「悪い円安論」が叫ばれるのか?
円安の報道が増えると同時に、もうひとつ頻繁に報道されていたことがあると思いますが、何かおわかりですか。それは「値上がり」です。これはみなさんも実感があるのではないでしょうか。筆者も自分でご飯を作ることも多く、子どもたちと出かけたりもするので、頻繁にスーパーやコンビニに行って買い物をしますが、本当にいろいろなモノの値段が上がっているなと実感します。
モノの値段が上がっても、給料が同様に上がっていけばそれほど大きな問題はありませんが、ご存じのように日本では多くの人の給料がほとんど上がっていません。そのような状況下でモノの値段だけが上昇すれば、当然家計は苦しくなりますし、少しずつ不満も積もっていきます。国民の不満が高まれば犯人探しが始まりますから、メディアはその犯人を集中的に報道して視聴数などを稼ぎにきます。
為替レートはさまざまな要因で動くという話をしましたが、モノの値段も同様です。さまざまな要因でモノの値段も変化していきます。今回の物価高の理由も複数あるのですが、いくつか紹介しましょう。ひとつにはやはりコロナの影響が大きいと考えます。新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に起こるなかで、日本では緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され、行動制限がかかりましたが、海外ではさらに強制力が高いロックダウン、いわゆる都市封鎖が行われるなどしました。
その結果、飲食店や宿泊施設などでは営業ができなくなったり、はたまた工場でラインが停止したり、港湾や空港も利用頻度が落ちたことで、これらの産業に従事していた一部の方たちが解雇されてしまいました。その後、コロナに対する知見もたまり、コロナとの共生方法を見出した各国が徐々に"ウィズコロナ"という発想のもとで経済活動を再開したところ、一気に需要が回復したわけですが、コロナ禍で生じていた人手不足、半導体不足、コンテナ不足など、あらゆる供給制約が生じていたことで、物価が一気に上昇しました。
そこに加えて、2022年2月下旬にロシアがウクライナに侵攻すると原油価格をはじめ、食料や非鉄金属など多くのエネルギー・資源価格が上昇しました。つまり、今回の物価高というのは景気が良くて旺盛な需要に供給が追いつかないことで物価が上昇したということではなく、あくまで人手不足や資源不足によって供給が減少し、一方でエネルギー・資源価格が上昇することでモノを作る際のコストが上昇し、それが販売価格に転嫁されたという流れなのです。
物価高にはいくつも要因がある
また、日本にはさらなる値上がり圧力が発生しました。それが円安です。日本は食料自給率もエネルギー自給率も低く、その多くを海外からの輸入に依存していますが、すでに見てきたように、円安になれば海外から輸入したモノの値段(輸入価格)は上昇します。それを価格転嫁すれば、当然ながら国内の物価上昇圧力となるのです。このように多くの日本国民を苦しめている物価高にはいくつも要因があるのですが、そのなかでも最も影響が大きいのはエネルギー・資源価格の上昇です。そして、次点として円安という為替要因がくるわけです。
それにもかかわらず、「円安のせいで物価が上昇して国民が苦しんでいる!」として、いわゆる「悪い円安論」を喧伝する人が多いのですが、タチが悪いと思うのはそれ自体はウソではないということなのです。たしかに、円安が物価上昇の要因であることは間違いありません。しかし、それだけが理由ではないうえに、円安のメリットも同時に考えなければフェアではないでしょう。
円安にもメリットがあるにもかかわらず、デメリットばかりが叫ばれる背景には、やはりコロナの影響があるのかと思います。
前述のように、円安になれば訪日外国人観光客が増えることが期待されますが、コロナ禍においては水際対策の一環として入国制限をしていましたから、どれだけ円安が進めど外国人観光客は増えませんでした。つまり、円安のメリットが享受できない環境だったのです。他にも円安のメリットが語られない要因は考えられます。それは、2011年前後に生じた急激な円高局面で、多くの輸出企業が生産拠点を海外に移したことにより、逆に今回の円安局面ではメリットを享受できないケースが多発したということもあります。
このように、円安のメリットを享受しにくい状況下ではデメリットばかりが目立つため、結果として「悪い円安論」を喧伝するメディアや有識者が増えたということなのでしょう。そして、もう少し穿った見方をすると、「円安にはこれだけデメリットがあるのだから解消しましょう」という展開にして、「解消するためにこうしましょう」という提案をすることでそれに賛同する人を増やして世論形成、世論誘導したいという思惑があるのかもしれません。
マクロ経済の観点では好まれる円安
円安のメリットとデメリット、そしてなぜ円安のデメリットばかりが喧伝されているのか。それぞれについて確認してきました。ここまで読んでいただいた方ならデメリットが重点的に報じられた背景に納得できたところもあるでしょう。しかし、それでも円安のデメリットばかりを報じることには違和感しかありません。筆者の専門はマクロ経済ですが、その観点からすれば円安は日本経済にとってはプラスの影響が大きいと考えているからです。
このような意見をネット動画で配信したところ、SNSで「円安が日本経済にプラスというのは、あなたの感想ですよね?」などをはじめ、かなりの批判的な意見をいただきました。しかし、残念ながら筆者個人の感想であるだけでなく、国内でも海外でもそのような計算結果は出ているのです。
たとえば、内閣府が2018年9月に公表した「短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の構造と乗数分析」のなかでは、10%円安になった場合、輸入物価が上昇することで初年度は消費が0.01%だけ下押しされるものの、実質GDP(国内総生産)は0.22%押し上げられると試算されています。
特に円安のプラス効果は2年目から顕著となり、それは3年目にも継続されます。この押し上げ効果を生じさせるのは設備投資の回復です。同様の結果は、OECD(経済協力開発機構)が2010年の5月に公表した「The OECD's New Global Model」というワーキングペーパーにも記載されています。
本書は経済学の専門書ではありませんから、彼らのシミュレーションのモデル式や変数について解説はしませんが、筆者の個人的な意見であるだけでなく、多くの専門家も同様の見解を示していることを共有しておきたかったのです。
円安が経済全体に好影響を与える理由
難しい話をしなくとも、円安が経済全体に好影響を与える理由はわかるかもしれません。たとえば、いわゆる円安の恩恵を受ける輸出企業には大企業が多く該当します。大企業は単体で商品すべてを製造していることは稀で、多くの場合は中小零細企業と取引をしています。大企業が円安を背景に業績を向上させることで、中小零細企業にも一部の恩恵が流れてくることは期待できます。
ここで、「一部」とか「期待できる」としたのは、筆者自身がいわゆる「トリクルダウン」という考えを心から支持していないからです。
トリクルダウンというのは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」という考え方です。現実世界では一部の富裕層が富を独占して格差が拡大するという現象も起きています。
しかし、大企業が儲からないなかで、大企業と取引をする中小零細企業が儲かるということは考えにくいですから、少なくとも円安で追い風を受ける大企業が儲かることで増加した売り上げの一部が中小零細企業にも波及し、結果として日本経済全体を成長させる可能性はあるのです。