Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

池上彰、東京五輪「来年の開催は無理」 小池都知事の今後を予想

2020/07/28 08:00
「人類がコロナに打ち勝つ証しとして」(安倍晋三首相)、来夏開催予定の東京五輪の行方、そして開催を公約に掲げて再選した小池百合子都知事の今後は――。ジャーナリストの池上彰氏と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が語り合った。
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佐藤:今後のコロナ関連の国際ニュースで注意したほうがいいのは、まず北朝鮮。一連の南北共同連絡事務所爆破とか。おそらく今度は(南北経済協力事業の)金剛山(クムガンサン)観光地区と開城(ケソン)工業団地を爆破するんだけど、これは、コロナでアメリカのトランプ大統領が自分のほうを振り向いてくれないから、僕のほうを向いてくださいという求愛ですよね。求愛を恫喝(どうかつ)で表すという形になっている。コロナが北朝鮮に大きな影響を与えているということなんです。これでもトランプ大統領が手いっぱいで関心を持たないと、少しずつエスカレートさせてきますからね。そうすると、日本の上を飛んだ中距離弾道ミサイルが、また飛んでくるかもしれません。あるいは核開発をするとか騒ぎだしたりして、また面倒くさいことになる。朝鮮半島情勢が緊張するかもしれない。
 もう一つ注目しないといけないのは、ウクライナ情勢ですね。トランプ大統領が思いつきで、G7サミット(主要7カ国首脳会議)の拡大とか言うから。そうすると、これはロシアが冷ややかですが、対中国包囲網を作るということよりも、ウクライナ問題に焦点があたっちゃうんですよ。ロシアがサミットから追い出されたのは、ウクライナ問題でしょ。国際政治に影響を与えるのは北朝鮮に、ウクライナ、イランの三つです。
池上:コロナ関連のニュースでは来年夏の東京五輪についてもよく取り上げられていますが、年内にワクチン開発ができても開催は無理ですね。できるわけないです。
佐藤:ワクチン次第というよりも、ワクチンができたところで、世界に普及しているかどうかが重要。あとは、選手たちが来るか。五輪を実現した場合は、日本は空前のメダル数じゃないでしょうか。
池上:それはそうでしょうね。みんな来ないですからね。
佐藤:国体(国民体育大会)とどこが違うんだということを言う人も出てくると思うけど、メダルの獲得ということからすると、大きいチャンスが来ると思います。
池上:つまり、ワクチン開発がうんと早くても、年内にできるかもしれないけど、世界中の選手たち、あるいは選手団の関係者みんなにワクチンの投与ができてはじめて、じゃあ東京に行こうか、ということになる。本当に限られた先進国の選手は来られるかもしれないけど、世界中の、東南アジアだったり、アフリカだったり、中東だったり、そういう人たちにまでワクチンが行き届いていますか、といったらあり得ないですよね。
佐藤:それから、あと一つは黄禍論(19~20世紀にあった黄色人種への差別)の影響がありますからね。アメリカ、ヨーロッパあたりでも「私は失礼させていただきます」という選手は出てきますよ。(クルーズ船)ダイヤモンド・プリンセス号のイメージが国際的に非常に大きくなっていますからね。ああいうところにあまり行きたくない、というような感じになった場合は、首に縄をつけてこられないですから。それからロシアも来ないですからね。これは別の理由(組織的なドーピング問題)で。
池上:そうですね。来られないですからね。
佐藤:中国は国威発揚のために選手団を送ってくるでしょう。だから、メダルを中国と日本で分けるというような、そういう状況になるのでしょう。
池上:来年の夏は無理です。再来年の夏ならぎりぎり間に合うかもしれませんけど。
佐藤:でも、ケチがつきましたね。1940年(日中戦争拡大で返上)と2回もなくなるなんて。これはやはり他の国では類例をみない。やはり特別な国だということで、日本はスゴイのです。
池上:東京五輪にまたケチがついたと。2回目ですからね。
佐藤:しかし、東京五輪ができないということになると、五輪をやるという公約で東京都知事選に再選した小池(百合子)さんは、都知事の座を投げ出して国政に打って出るいい口実になる。IOC(国際オリンピック委員会)と日本の国の壁によって、五輪をやりたいのに実現できなくて、都民に公約を果たせなかった──。私は都知事を辞めて、こういう形で国政に打って出る形で、きちんと約束を守る政治をしたいと思うと。出てくるかもしれないですね。
池上:(笑)
佐藤:そうすれば、東京五輪の後始末をしないで済みますからね。
池上:そうですね。
佐藤:私が小池さんだったら、そうしますね。今、スリム化した五輪をあえて公約に掲げていても、できないのはわかっているはずですから。だから、できないと決まった時に人のせいにして、総理を狙うというのはいい選択ではないか、と考えていると思いますね。
(司会・二階堂さやか)
※週刊朝日  2020年7月31日号より抜粋