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安倍総理の志は死なない!!

「夢の超特急」新大阪駅発着500本 死傷事故ゼロ・ダイヤ守るプロフェッショナル集団

新大阪駅の輸送主任として列車を発着させる高木友博さん。指差しと目視で安全を確認する=JR新大阪駅(竹川禎一郎撮影)
新大阪駅の輸送主任として列車を発着させる高木友博さん。指差しと目視で安全を確認する=JR新大阪駅(竹川禎一郎撮影)
© 産経新聞
東京と新大阪を高速で結ぶ「夢の超特急」として昭和39年10月に誕生した東海道新幹線。今年で開業60年を迎える日本の大動脈は、これまで約68億人が利用し、乗客が死傷する列車事故はゼロを続けている。安全、安心に加え、年間の平均遅延時分はわずか1分余りという驚異的なサービスは、多くのプロフェッショナルたちによって守られている。西の一大拠点の新大阪駅(大阪市淀川区)、鳥飼車両基地(大阪府摂津市)など、関西で新幹線を支えるJR東海の「仕事人」を紹介する。


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10号車付近の操作盤でホームドアの開閉などを行う高木さん。緊張の瞬間だ =JR新大阪駅(竹川禎一郎撮影)
10号車付近の操作盤でホームドアの開閉などを行う高木さん。緊張の瞬間だ =JR新大阪駅(竹川禎一郎撮影)
© 産経新聞
1日500本発着
大勢の乗降客でにぎわう新幹線の新大阪駅。東京方面から博多行きの「のぞみ」が定時通りに21番ホームに滑り込んでくる。「定着」と声にしたJR東海輸送主任の高木友博さん(43)にとっての「緊張の2分間」が始まる。


輸送担当として10号車付近に立ち、15秒単位で決められたダイヤ通りの運行に集中力を高める。指さしとともに目視、そしてホーム上部に設置されたモニターで何度も何度も前方、後方の安全を確認する。荷物が大きいため、乗車に手間取る外国人客がいれば、駆け寄って手助けすることも。


発車30秒前に予告ベルを鳴らす。「安全よし」。今度はブザーを押し、列車の扉を閉めてもいいと車掌に合図。「のぞみ」が動き出すと再び、前後を目視。遠ざかる「のぞみ」に「後部よし」「列車よし」。ダイヤ通りに博多へ向かった。


新大阪駅の輸送担当は約60人。基本的に午前9時からの24時間勤務で、日勤を含めた1日15人がホームに立つ。新大阪駅における営業列車の発着本数は今年の年始で約500本。これに回送列車が加わる。


始発と終着しかない東京駅と違う点は山陽、九州新幹線と接続しているため、短時間での発着を繰り返すことだ。高木さんは「右から左から列車がやってくる感じ」。さらに編成も16両の「のぞみ」と8両の「さくら」「こだま」などが混在。当然、乗車位置が異なる。「さくら」の自由席に乗るのに「のぞみ」の乗車位置で待っている乗客がいると、構内放送で正しい位置へ誘導しているという。


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新大阪からは「のぞみ」「ひかり」「さくら」とさまざまな列車が発着する
新大阪からは「のぞみ」「ひかり」「さくら」とさまざまな列車が発着する
© 産経新聞
乗客がホームドアと列車の間に閉じ込められた場合など、列車の運行にかかわるアクシデントが発生した場合はどうするか。輸送担当者を管理する新大阪駅輸送科長の平尾徹也さん(50)は「非常停止ボタンを押す」。これを押すと停止信号が流れ、新大阪駅のすべての列車がストップする。緊急停車から列車が動き始めるまで少なくとも数分程度かかり、列車の遅延につながるが、平尾さんは「列車が止まっているのが最も安全」。事故を防ぐため、ためらうことは絶対にない。


輸送担当の仕事は神経を使うとともに、体力勝負でもある。ホームは夏は猛暑、冬は氷点下になるぐらいの酷寒だ。夏は40度を超える。車両の下にある冷房の室外機からの風がさらに体感温度を上げる。高木さんは「水分だけでなく、塩分補給が欠かせない。テニスで体づくりをしたり、勤務の前は早めに休んだりしている」と話す。


平尾さん、高木さんとも新幹線の運転士、車掌を経験している。運転台には、車両の扉がすべて閉まり、発車可能になったことを示すランプがあるという。高木さんは「ランプがつくということは、ホームの安全を輸送担当や車掌が確認したからと感じていた」。


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新幹線が多いときで1日約500本が発着する新大阪駅
新幹線が多いときで1日約500本が発着する新大阪駅
© 産経新聞
東海道新幹線の平均遅延時分は1・1分。乗客が死傷する列車事故は開業以来起こっていない。世界に誇る安全性と正確さは、さまざまな仕事の積み重ねが支えている。


出会いと別れも見守る


輸送担当のホームでの仕事で徹底されているのは基本動作だ。しっかりと指さし確認を行い、はっきりと声を出す。毎月、駅事務室エリアの部屋などで訓練が行われ、若手社員に直す点があれば、高木さんらがアドバイスを送っている。


平成4年度、JR東海に入社した平尾さんも延べ9年ほど、輸送担当をしていたことがある。「ホームドアもモニターもなかった時代」と振り返る。


新大阪駅で勤務したときの思い出として挙げるのが「シンデレラ・エクスプレス」。離れ離れに住む恋人たちが週末に出会い、日曜日の夜に最終新幹線で再び離れてしまうという設定で、社会現象にもなり、テレビCMも放送された。「列車の各ドアにカップルがいて、別れを惜しんでいた」。それでも安全のため「心苦しかったが、離れてくださいと声をかけた」。新幹線は今も昔も出会いや別れに深くかかわっている。