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安倍総理の志は死なない!!

自民党・厚労省が検討する「金融所得で保険料アップ」の悪手 「社会保険料は税金じゃない」の理屈で新NISAの配当金も標的になる可能性

 厚生労働省は、自営業者らが入る国民健康保険、75歳以上の後期高齢者医療制度や介護保険の社会保険料の算定対象を広げ、株の配当など金融所得を反映する仕組みの検討を始めた。4月25日に自民党の部会で検討案を示した――と新聞各紙は一斉に報じている。この制度変更が実施されれば、国民生活に大きな打撃となることは必至だという。


 現行制度では株や債券などの配当や利子による金融所得について、確定申告をすれば国民健康保険などの保険料に反映されるが、申告しなければ保険料に反映されない仕組みになっている。そのため、「申告の有無で保険料負担が変わるのは不公平ではないか」との指摘があったという。そこで厚労省は金融機関が国税庁に提出する報告書類を活用し、確定申告していない金融所得を把握する方法などを考えているとされる。


 国が検討を進める今回の制度変更について、社会保障制度に詳しいファイナンシャルプランナーはこう話す。


「会社員らが入る健康保険は、確定申告の有無にかかわらず給与の額を基準に保険料が決まるため、ひとまず今回の検討対象にはなっていないようですが、自営業者や国民健康保険に加入するリタイア世代にとってはとんでもない話です」


 一体、何が起きようとしているのか。


現行制度は“不公平”なのか?
 前出のファイナンシャルプランナーはこう続ける。


「現行制度において、金融所得を確定申告するかしないかは選択が可能です。たとえば、複数の株式を保有していて配当による利益と売却損が混在している場合、確定申告をすることでそれらを相殺する『損益通算』などができるので、確定申告する人がいる。そういう人たちは社会保険料の算定対象になっても、そのほうが得だと考えているわけです。


 一方で、配当を受け取る際には基本的に所得税と住民税が源泉徴収され、すでに税金を納めているので、配当収入のみならわざわざ確定申告する必要はないと考える人が多いのが実態です。株を売って大儲けや大損したならいざ知らず、株を長期保有してコツコツと配当を受け取る人からすれば、わざわざ確定申告して保険料の負担を増やしたくないという考えになるわけです。


 あるいは扶養されてきた妻が確定申告をすると、発生した金融所得の金額次第では扶養から外れ、社会保険料負担が増すこともある。高齢者の医療費の自己負担割合は原則1割か2割ですが、金融所得が加算されて所得が一定額を超えれば3割負担になる可能性もある。


 いずれにしろ、それぞれの立場で国民が選択できる制度になっていて、誰かがズルをして得しているといった類の話ではない。別に制度を利用している国民の側が“不公平”と感じているわけではなく、保険料を徴収する側が取れるところから少しでも取るために国の側が“不公平”とあげつらっているだけではないか。違和感は大きい」


新NISAブームにも冷や水
 問題はそれだけではない。


「岸田政権は『資産所得倍増プラン』をぶち上げ、今年1月から運用益などが無期限で非課税になる『新NISA』を恒久化して、“貯蓄から投資へ”の流れを本格的に進めようとしている。多くの人が新NISAによる自助努力で資産を増やそうとしている矢先に、金融所得も社会保険料の算定対象にするというのは、冷や水を浴びせる以外のなにものでもない。政策として悪手としか思えない。


 さすがに“非課税”を謳っている以上、『新NISA』での譲渡益や配当に税金がかかるという話にはならないと思いますが、“社会保険料は厳密には税金じゃない”といった理屈で、新NISAで得られた配当なども社会保険料算定に用いられる可能性だってある。“非課税ですよ”という誘い文句で制度を利用する人を増やしておいて、後から社会保険料を徴収するという話になるなら、悪徳商法のようなやり口です。


 さらにいえば、現時点では会社員の健康保険は賃金のみで決まっていますが、これに金融所得が加算される可能性もゼロではない。今回の検討開始が“アリの一穴”となってなし崩し的に対象範囲が拡大されかねません」(同前)


 政府は昨年末に閣議決定した社会保障の改革工程で、国民健康保険などの保険料負担を巡る不公平な仕組みの是正について、「2028年度までに実施について検討する」としている。国民のささやかな自助努力まで踏みにじるような“改悪”にならぬよう、議論の行方を注意深く見守る必要がある。