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安倍総理の志は死なない!!

首都4知事に「不協和音」生んだ小池知事の独善 軋轢の遠因となった4知事の経歴と個人的関係

 コロナ禍での緊急事態宣言への対応をめぐり、小池百合子都知事を中心とする首都圏4知事の間の不協和音が表面化している。


 「ワンチーム」と「ワンボイス」を旗印に、政府のコロナ対応への影響力を誇示してきた4知事の仲間割れに、菅義偉首相らの反応も複雑だ。


 政界では「首都の女帝とよばれる小池氏の独善的行動に対する他3知事の不信感が原因」(自民幹部)との見方が支配的だ。その背景には宿敵とされる菅首相と小池氏の主導権争いがあるとみられており、感染リバウンドに怯える国民の不安も拡大させている。


黒岩知事が暴露した小池知事とのやりとり
 騒ぎの発端は3月7日の神奈川県の黒岩祐治知事の発言だった。同日午前の民放報道番組に出演した黒岩氏は、緊急事態宣言再延長をめぐる小池氏とのやり取りの詳細を暴露した。


 黒岩氏によると、3月1日に小池氏から「延長せざるをえない」との電話があったが、黒岩氏は「もうちょっと数字が見たい」と態度を留保した。しかし、2日に小池氏が「2週間の延長要請」を記載した文書を示して「他の知事も賛成している」と通告。千葉県の森田健作、埼玉県の大野元裕両知事に個別に電話確認したところ、「黒岩さんが賛成だからと言われて賛成した」と答えたという。


 黒岩氏が3日の4知事オンライン会議で、「こういうことをやられると信頼関係が薄れる。こういうのはダメだ。おかしい」と直接抗議すると、小池氏は「ちょっと先走って、ごめんなさい」と謝罪したという。


 小池氏は3日のオンライン会議後、「国としっかり連携し、1都3県で連携しながら進めていきたい」と4知事の結束を力説。8日には「私は森田知事には直接連絡はしていない」と指摘したうえで、「準備段階の中でいろいろあり、事務方も含めてやり取りをしていた。そういう中で信義則は守っていきたいと思う」などと述べ、黒岩氏を暗に批判した。


 一方、埼玉県の大野氏は、2日に黒岩氏から問い合わせがあったことを認め、「『(宣言延長の要請について政府に)お話しするという話は知りません』などと答えた」と説明。小池氏が強引に、1都3県知事による2週間延長要請を決めようとしたことが浮き彫りとなった。政界では「まるで出来の悪いコントだ」(自民幹部)などと揶揄されている。


 そうした中、菅首相は小池氏に先手を打つ形で、3日夜に2週間程度の緊急事態宣言の延長を明言し、そのまま5日に2週間延長を正式決定した。官邸サイドは「菅首相が小池氏の動きを事前に察知し、黒岩氏が再延長に慎重なら対応は決まらないと判断して素早く動いた結果だ」(政府高官)と明かした。


 菅首相には1月7日の緊急事態宣言の再発令が、小池氏ら4知事の要請に屈した格好となって後手批判を拡大させたというトラウマがある。今回の宣言再延長でも、「菅首相は最後まで慎重」(側近)とされたが、首都圏4知事が小池氏主導での宣言再延長を要請すれば、「1月と同じ構図になるとの焦りから、急きょ方針転換した」(同)とみられている。


注目された4知事の個人的関係
 2020年末以来の小池氏の対応について、政府諮問委員会の尾身茂会長は5日、「政府と自治体が一体となったメッセージが重要」などと提言した。永田町では「駆け引きを優先する小池氏への批判」(官邸筋)というのが大方の受け止めだ。


 そこで注目されたのが、4知事の個人的関係と政治家としての経歴だ。小池、黒岩両氏は民放テレビ番組のキャスター出身で、ともに1988年にキャスターとしてデビューした。小池氏は女性キャスターの草分けだが、黒岩氏も若くして民放テレビの報道記者からキャスターに転身して注目された。


 また、森田氏は歌手、俳優に司会もこなすマルチタレントとして、1992年の参院選東京選挙区に無所属で出馬して初当選。日本新党比例代表で参院議員に当選した小池氏とは当選同期で、どちらもタレント議員としての政界入りだ。その後、森田氏は旧民社党を経て自民党に入り、時期は違うが、小池氏も衆院に転身後、保守新党などを経て自民党入りした。


 一方、外交官出身の大野氏は、2010年参院選埼玉選挙区で旧民主党公認として初当選。民主党政権崩壊後は中東外交専門家としてテレビのコメンテーターとして活動し、当選2期目の2019年夏に埼玉県知事選に出馬、自民候補を僅差で破って当選した。


 元官僚の大野氏以外は、テレビ出演などでの知名度を利用して政界入りした点で共通する。もともと1都3県の知事選は「巨大な無党派層の支持を得るためのタレント性がカギ」(選挙アナリスト)とされ、小池、黒岩、森田3氏は「知事としては同類」(同)ともみられている。


 ただ、47都道府県知事の構成をみると、官僚出身が目立つ。地方自治も含め行政の実務経験を有権者が評価していることが背景にある。今回、緊急事態宣言の対象となった10都府県をみても、首都圏以外の6知事のうち5人が官僚出身だ。このため、「首都圏知事は4人中3人がタレント出身なので、対応もパフォーマンス優先になる」(政府筋)との指摘もある。


 一方、4知事と菅首相の個人的関係はバラバラだ。5年前の都知事選以来、「菅、小池両氏の敵対関係は隠しようがない」(自民幹部)が、黒岩、森田両氏は菅首相との関係の深さが目立つ。特に黒岩氏は、菅首相の選挙区が神奈川2区のため「神奈川連合として、常時連絡を取り合う親密な関係」(神奈川県幹部)とされる。


 残る大野氏は、参院選、知事選でいずれも自民党候補と対決して来た経緯もあり、菅首相とは一定の距離がある。このため、菅首相をめぐる4知事の立場は「『小池・大野VS黒岩・森田』の構図」(政府筋)とされ、「それが今回の宣言延長をめぐる不協和音につながった」(同)との見方にもつながる。


 ただ、今回の4知事の不協和音騒ぎは「国民にとってどうでもいい話」(閣僚経験者)でもある。政府与党内からは「小池氏のやり方も悪いが、わざわざ舞台裏を暴露した黒岩氏も大人げない」(公明幹部)との声が噴き出す。


感染再拡大なら菅首相の政治責任
 さらに、森田、大野両氏についても「自分の意見はないのか」(同)との批判が相次ぐ。「(4知事の不協和音は)出来の悪いコントをみるようで、菅首相はもとより、関係者全員にとってマイナスばかり」(首相経験者)との指摘も出る。


 再延長された緊急事態宣言の期限は21日。ここにきて1都3県の新規感染者数は下げ止まりが目立つ。諮問委員会の尾身会長も「状況次第で再々延長もありうる」と国会答弁するなど危機感を隠さない。


 苛立つ菅首相は「ずるずると再々延長するわけにはいかない」と周辺に漏らしているとされるが、「期限どおり解除して、数週間後に感染再拡大となれば、今度こそ政治責任を問われる」(自民長老)のは避けられない。


 小池氏も「次は簡単に再々延長要請などできない」(自民幹部)とみられている。政府部内では「そもそも、小池氏が感染拡大防止策を徹底しきれなかったのが感染下げ止まりの原因」(政府諮問委メンバー)との批判が渦巻いているからだ。


 しかも、21日には森田氏の後任となる千葉県新知事が選出される。政府は17日か18日の対策本部で4都県の宣言解除か再々延長かを決定する予定だが、菅首相が解除のカギと位置づける「病床の逼迫度」が一番高いのは千葉県で、知事交代の影響も考慮せざるをえない。


 東京での桜の開花宣言の予想は14日か15日。「21日に宣言解除となれば、満開の桜のお花見や卒業式などの年度末行事で、首都圏の人出は倍増必至」(都幹部)。国民の間でも宣言解除による感染再拡大への不安は募る。


 それだけに、「今度こそ、政府と4都県が本当のワンチームとなって対応を決めるしかない」(自民長老)。共に今夏の東京五輪開催を目指す菅首相と小池氏にとって、今後の1週間は「主導権争いどころか、トップリーダーとしての器が試される局面が続く」(同)ことになる。