Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

先祖の遺産で食いつなぐ「没落国家」でいいのか

 From 施 光恒(せ・てるひさ)
    @九州大学




こんにちは~(^_^)/


夏真っ盛りですね。


前回(7月31日付)、「意地でも続ける『観光立国』と『クルーズ船観光』」というタイトルで、コロナ以後の現在でもクルーズ船観光をはじめとした「観光立国」路線にこだわる政府の姿勢を批判するメルマガ記事を書きました。
https://38news.jp/politics/16426


コロナ以後は、クルーズ船観光にしても「観光立国」路線にしても立ち行かないので、政策を大胆に改め、日本国民を富ませ、国内需要中心で経済を回す路線への回帰が求められるはずだと述べました。


そのメルマガが配信されたのと同じ日には、クルーズ船の廃船が進んでいるという記事も出ていました。


「じわじわと迫る“死” クルーズ400隻、廃船の岐路」(『SankeiBiz』2020年7月31日配信)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200731/mcb2007310700001-n1.htm


大型のクルーズ船は、維持に莫大な費用や多数の人員を要するため、近日中に運航が再開されない限り、多くのクルーズ船が廃船を余儀なくされるだろうという記事でした。


どう考えても、今後数年間は、コロナ以前のようにクルーズ船観光が行えるようになるとは思えません。特に、選択肢をたくさん持つ富裕層は、わざわざクルーズ船に乗って旅行しようとは考えなくなるでしょう。


前回のメルマガで書いたように、政府は、先月(2020年7月)発表された「観光ビジョン実現プログラム2020」でも、「クルーズの再興に向けて」という文言を悲しいぐらい繰り返し使っています。また、同文書では、「インバウンドに大きな可能性があるのは今度も同様であり、2030年6000万人の目標は十分達成可能である」とも書いています。


政府はクルーズ船観光や「観光立国路線」にいまなお固執しています。


少し前の『週刊新潮』(2020年7月23日号)に、医師の里見清一氏の「やめておけ『観光立国』」と題するコラムが掲載されていました。


里見氏は次のように手厳しく書いています。


*****
だいたい、観光が主産業というのはつまり、偉大な先祖が作ってくれた遺産を当てにして稼ぐわけで、その意味で「過去の国」がやることである。実名を出して悪いがギリシャなんかその代表例だろう。


日本をそういう国にするというのは、もう科学技術や工業製品などではどうにもならないとのギブアップ宣言なのだろうか。
*****


私もこの点、同感です。


日本は近年、外国人観光客を呼び込んでくるために、これまであまり公開してこなかった歴史的文化財を一般開放したり、国立公園を開放したりしようとしてきました。


(また、観光資源だけでなく、先祖が残してくれた公共財、つまり水道やガス、電気、郵便のシステムといった社会的インフラなども、外資を含む投資家や大手企業に売却したり開放したりし、経済をどうにか回していこうとしてきました)。


まさに、先祖が残してくれた遺産をなりふり構わず利用し、食いつないでいこうとする発想です。


(私は、こうした先祖の遺産をメシのタネにして糊口をしのいでいく最近の日本の経済政策を「おバカな三代目の経済政策」と以前、呼びました。下記のリンク先をご覧ください)。
施「カジノで毟りとられる日本人」『「新」経世済民新聞』(2016年12月9日付)
https://38news.jp/politics/08036


コロナ以後でも、この発想はまったく変わっていません。実際、「観光ビジョン実現プログラム2020」でも、先祖の遺産で食っていこうというおバカ路線が満載です。


例えば、「インバウンド促進などに向け引き続き取り組む施策」として、いの一番に挙がっているのが、「魅力ある公的施設・インフラの大胆な公開・開放」です。「赤坂や京都の迎賓館のみならず、我が国の歴史や伝統に溢れる公的施設を、大胆に、一般向けに公開・開放」という文言が続きます。


具体的には、「大胆に」さらなる公開・開放を進める(あるいは観光客の利便性を高める)べきものとして、「首相官邸」、「皇居」、「皇東御苑」、「三の丸尚蔵館」、「京都御所」、「京都仙洞御所・桂離宮・修学院離宮」、「御料牧場」、「鴨場」、「信任状捧呈に係る馬車列」などの施設が挙げられています。


国立公園についても、「国立公園の『ナショナルパーク』としてのブランド化」というワケのわからない言葉で、観光資源(メシのタネ)にしようという試みの継続が謳われています。


こういう具合に、コロナ以後でも、なりふりかまわず先祖の遺産に頼りつつ、「インバウンド重視」で「2030年までに外国人観光客6000万人達成」を目指そうというのです。


まさに没落しつつある「過去の国」の政策ですね。情けなくなります。


「観光立国」路線に対して批判したい点は山ほどありますが、ここでは二つだけ挙げたいと思います。


一つは、日本国民が、自信を失い、卑屈になってしまわないだろうかということです。


この点については前述の里見清一氏が小気味よくお書きになっています。


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今さらではあるが、東京オリンピック誘致で滝川クリステルがやった「お・も・て・な・し」のプレゼンが薄気味悪かった。


どんな相手でも「客」もしくは「旦那」である、すなわち金蔓(かねづる)であり飯の種であると考える以上は、下げたくもない頭をさげなければならないのではあろうが、なんであんな媚び諂った態度をとらなければならないのか。


あれはまさしく「右や左の旦那様」の手つきであった。
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「インバウンド重視」路線が続くと、だんだんと多くの日本人が「外国人観光客サマ」という感じに、まさに卑屈になっていくのではないでしょうか。日本人にとって大事な文化遺産(たとえば皇室関係の文化遺産)も、外国人観光客の目線から捉え、彼らにウケるかどうかを第一に考えるようになってしまうのではないでしょうか。


加えて、外交面でも言いたいことが言えなくなってしまう可能性もあります。


例えば、「観光立国」の推進役の一人である菅義偉官房長官は、昨秋、ある対談で、司会者と次のようにやりとりしていました(「スペシャル対談 菅義偉×デービッド・アトキンソン カギはIRとスキー場だ」(『週刊 東洋経済』2019年9月7日号)。


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(司会者)「ここのところ、訪日客全体の2割強を占める韓国と政治的緊張関係にあります。東アジア諸国からの訪日需要に、悪い影響がでるのでは?」


菅官房長官「韓国政府に対しては感情的にならないよう、冷静に対応していく。一方、中国との関係は改善している。昨年、安倍首相が国賓として中国を訪問し、来年の早い時期には習近平国家主席を日本に招く予定だ。


こういった動きも追い風となり、今年に入っても中国人訪日客数は10%程度の伸びを維持している。中国人訪日客は、どんどん増えるだろう」
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「観光立国」路線をやみくもに続け、インバウンド需要を日本経済の柱としてしまうと、当然ながら、「お客サマ」である外国の顔色をうかがいつつ、外交を進めることになります。


コロナ発生以後、中国からの観光客の受け入れ制限や習近平の来日中止の決定が遅れたことにも現れているように、日本は外国にへつらう国になってしまうでしょう。


もう一つ、ここで言及したい「観光立国」路線に対する批判点は、上で挙げた外交の問題にも関わってきますが、安全保障の問題です。


「観光ビジョン実現プログラム2020」では、先に挙げたように皇室関連などの文化遺産、文化財を「大胆に」公開していくという目標が掲げられています。


また、そこでは、文化施設だけでなく、「首都圏外郭放水路」とか、地方振興策の一環として「ダム、橋、港、砂防」などのインフラ施設も、観光資源として公開・活用していくという方向性が示されています。つまり「インフラツーリズムを推進する」そうです。


こういう施設を、外国人観光客とかに大胆に公開してしまうのは、安全保障の観点からみて大丈夫なのでしょうか。こちらも心配になります。


以上のように、いろいろな問題点が考えられるにもかかわらず、政府は、「コロナ以後」の今後も相変わらず「観光立国」路線を継続するつもりです。国民には「新しい生活様式」を求める一方、政策のありかたはコロナ以後も変えないようです。


政治家や官僚というのは、一度、決めた方針を撤回すると、再選や出世に響くと考えてしまうのでしょう。困ったものです。


政治家や官僚には「みんなコロナのせい」にしてもらっても構わないので、既存の政策を見直し、コロナ以後の「新しい政策様式」の考案と実現に取り組んでもらいたいものです。


具体的には、新自由主義に基づくグローバル化路線を改め、一部のグローバルな投資家や企業だけでなく、日本国民一般を富ませ、内需中心で経済を回し、豊かにしていく「経世済民」の路線です。


むろん、これには現行の国際経済秩序の変革が必要となりますが、コロナ以後は、新自由主義に基づくグローバル化路線を見直そうという動きが国際的に高まっていくはずです。


日本の政治家には、率先してその流れを牽引することにより、グローバルな投資家や企業といった強力な「抵抗勢力」にひるむことなく、経世済民路線に向けた一歩を踏み出してもらいたいものです。


長々と失礼しますた…
<(_ _)>