Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

世界で露見するエリートの偽善

 医療従事者など最優先の対象者に新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった米国。感染者数1660万人、死者数30万人と、状況の悪化が続く米国にとって、ワクチン接種は暗闇の中の一縷の希望である。
 その一方で、民主党の首長が進めるロックダウン政策によって市民生活は破壊されている。なぜ民主党はロックダウン政策に固執するのか、そしてコスパの悪い封鎖政策が住民の信頼を失い、民主党の内部からも批判されている現状と、リベラルエリートの偽善と詭弁を明らかにする(※1回目はこちら)。
(岩田太郎:在米ジャーナリスト)
リベラルエリートの言行不一致
 トランプ大統領率いる共和党政権のコロナ対策における失敗という敵失を、大統領選挙の勝利につなげた民主党。「われわれには計画がある」とコロナ退治に自信を示すが、現実は厳しい。
 カリフォルニア州では、民主党のニューサム知事が12月4日に発令し、7日に発効した厳重なロックダウン命令にもかかわらず、依然として感染者と死者が増加の一途を辿るなど、「検査数の引き上げ、感染者の隔離、ロックダウン」という三位一体型の従来の政策の効果には限界があるからだ。
 そのカリフォルニア州のニューサム知事夫妻が2020年11月末の感謝祭を前に、全米一予約が取りにくいことで有名なミシュラン三つ星レストラン「フレンチ・ローンドリー」でのパーティーに著名ロビイストなど十数人と出席して、猛批判を浴びた。当時のガイドラインでは、州民に対してそのような集まりを持たないよう勧告しており、知事自身も「感謝祭はスーパースプレッダーイベントになるから、家族に会うのを我慢して移動や旅行を控えてほしい」と自粛を呼びかけていたからである。
 一方、大西洋をはさんだフランスでは、リベラル中道派のマクロン大統領が12月16日の夜間外出禁止令の最中、大統領府長官やカステックス首相など十数人が参加したディナーに参加していたことが明らかになり、些細なロックダウン違反でも厳罰を喰らう国民から不満の声が上がっている。これに対しカスタネール内相は、「大統領は職務上、例外だ」との見解を表明し、一般民衆のさらなる顰蹙(ひんしゅく)を買っている。
 わが国においても、5人以上の会食の自粛を国民に求めていた自民党の「ガースー」こと菅首相が、12月14日夜に銀座の高級ステーキ店「ひらやま」で行われていた二階幹事長主催の「一人6万円忘年会」に、高齢コロナリスクグループに属する王貞治氏、杉良太郎氏、みのもんた氏など総勢8人で参加したことがバレてしまい、野党の政治的追及の恰好の餌食と化している。その結果、菅氏の支持率は急落中だ。
 世界中で、エリートたち、特にソーシャルディスタンシングやロックダウンにこだわるリベラル派の言行不一致によるコロナ政策に対する不信が募っている。指導者たちが、ゴールポストを恣意的に動かしているように見えるからだ。効果的なコロナ対策が多人数の集会や会食を避けることであると、リベラル派の指導者たち自身が本気で信じているのであれば、そのようなリスキーな食事会には絶対に参加しないだろう。
 しかも、西欧諸国や米国における厳しいロックダウンは、感染者・死者のさらなる増加という結果しかもたらしていない。であるならば、リベラルエリートたちの採用するロックダウン厳罰主義は、彼らが念仏のように唱える「国民のいのちを救うこと」「医療崩壊を防ぐこと」が目的ではなく、別の政治的な動機が隠されていると勘繰りたくもなる。
まだある民主党首長の言行不一致
 民主党首長たちが中心となって強力に推進したロックダウン政策による経済封鎖で失業や労働時間削減を強いられ、日々の食事にも事欠く庶民の数が数百万単位に上る中、リベラルエリートたちは高価で美味な料理を前に食欲がそそられ、コロナ感染の大元である唾液を普段よりも大量に分泌し、飛沫を散らせる環境で会食を存分にエンジョイする。そのような倒錯は、ニューサム知事の会食だけではない。
 感染爆発当初はコロナ対策の優等生と持ち上げられながら、夏場からの感染拡大が止められないカリフォルニア州では、首長の「不祥事」が特に多い。全米でいち早くロックダウン政策を実行したサンフランシスコのブリード市長(民主党)も11月に、ニューサム知事と同じ高級レストラン「フレンチ・ローンドリー」で8人が参加するパーティーに出席していた。サンノゼのリッカード市長(民主党)も感謝祭で、5家族が集う屋外会食をしていた。 
 一方、西部コロラド州デンバーのハンコック市長(民主党)は、市民に感謝祭の旅行を控えるよう要請したその日に、自身が家族と南部ミシシッピ州に飛んでいた。南部テキサス州オースティンのアドラー市長(民主党)も、休暇先の隣国メキシコから市民に対して「ステイホーム」を呼びかけて非難を浴びた。中西部イリノイ州シカゴのライトフット市長(民主党)は、自ら命じたロックダウンで理髪店の営業を禁じておきながら、自らはヘアカットをしていた。
 こうした中、厳格なロックダウン実行でリベラル派のヒーローに祭り上げられた東部ニューヨーク州のクオモ知事(民主党)は、感謝祭の祝いをしようとする州民に対し、「屋内において大人数で集まるとウイルスが拡散する危険性がある」と警告を発していたが、コロナの感染拡大中の感謝祭当日に86歳の母と2人の娘と食事をする予定をうっかり自身がラジオ出演でしゃべってしまい、強い批判を受けて撤回した。
 最も汚く危険な仕事を低所得層や有色人種のエッセンシャルワーカーに押し付けて、自分たちは安全な場所に敵前逃亡するような偽善が、たとえばクオモ知事一人であれば、「それは個人的資質の問題だ」ということで片付く。だが、これだけ広範に、しかも一度に民主党首長たちが「いのちを救う」「医療崩壊を防ぐ」政策趣旨に反する行動を意図的に、一貫して選んだという事実は、リベラル派のロックダウン的な政策の正統性および有効性に、深い疑念を抱かせる結果となっている。
 リベラルエリートの気分は、11月のバイデン氏の大統領選挙勝利で一挙に緩んだのだろうか。いや、こうした言行不一致や整合性のなさは、彼らの危機対応における「正常運転」に過ぎない。
恣意的ロックダウン政策の「敗戦」
 そもそも、新型コロナウイルスは専門家の理解でさえ超える振る舞いをする。たとえば、クオモ知事はロックダウン実施中の5月6日の記者会見で、「コロナによる新規入院の60%は外出をしていない在宅者から発生しており、ショッキングだ」と述べている。「彼らが(メジャーな感染源である)公共交通機関を利用しているのではないかと疑って調べたが、この人たちはずーっと家にこもっていた」のである。
 これは、ロックダウン政策のコスパの悪さを物語るデータだ。そして、その傾向は現在も変わっていないように見える。ロサンゼルスのガーセッティ市長(民主党)の9歳の娘のマヤちゃんがコロナに感染していることが12月17日に判明したが、PCR検査で陰性を示した市長夫妻によれば、マヤちゃんはソーシャルディスタンス確保をはじめとするすべてのロックダウン規則に従っていただけでなく、友人やその家族との交流もなかった。
 こうしてロックダウン政策の効果に疑問が呈される中、1日当たりの新規感染が4万5000人、日ごとの死者数(黒人やヒスパニック系の死亡率は白人の3倍)も400人に迫る感染ホットスポットとなっているロサンゼルス郡においては、3月に閉鎖され、10月に再開したばかりの公営の屋外の遊び場が11月に再び閉鎖され、親たちから猛反発を受けた。
 同郡では、「学校におけるクラスター発生の例は比較的少なく、対面授業を再開させても安全」との国内外の研究の結果にもかかわらず、民主党の政治力をバックにした教員組合が感染リスクゼロを主張してオンライン授業に固執しているため、子供たちは登校して友だちと遊べないばかりか、近所の公設の遊び場でも自由に走り回ったり、ジャングルジムや雲梯(うんてい)に登ったりできないという監獄並みの生活を強いられている。
 しかも、子供だけを家に残して出勤すれば児童虐待として逮捕され、裁判にかけられて最悪の場合、監護権や親権まで失う。在宅を強いられた親たちの多くは収入や職を失い、そうした家庭(往々にして黒人やヒスパニック系)は家賃や住宅ローンが支払えずに強制立ち退きを迫られるケースも増えている。
 子育て世代の庶民にとってさらに屈辱的であったのは、屋外の遊び場が高い感染リスクを理由に閉鎖されていた時期に、屋内のショッピングモール、タトゥースタジオ、ヘアサロンなどは収容人数を減らすことを条件に営業の継続を許可されていたことである。また、主に裕福層(多くは白人)が利用するゴルフコースやテニスコートなどの屋外施設も営業できた。州当局は、「屋外の遊び場で感染拡大したエビデンスがない」との強い世論に押されて公設の遊び場を再開させた(12月7日の新規のロックダウンで再閉鎖)。
 一方、屋外飲食スペースでのレストラン営業を禁じた州知事命令を、州裁判所は「恣意的である」「屋外飲食で感染が大規模に拡大したというエビデンスがない」として退けている(12月7日の新規のロックダウンで再び営業禁止)。
 この裁判で感染の科学的な証拠を示せなかった州当局は、「屋外飲食禁止令は、(当初主張した)屋外飲食が危険であるからではなく、(感染拡大につながる)人々の集まりや移動を断念させるためのものだ」と立場をコロリと転換させ、州民の不信をさらに深めた。
崩壊するエリートへの信頼
 このようにリベラルエリートの多くは、自らがふり回すロックダウン論の基礎部分の根拠が薄弱であることを知っており、それがために彼らのルールの運用は不規則で恣意的になる。エビデンスが弱いことを知っているから、自らは外出制限を平気で破るが、自らが課したルールをほんの少しでも破る輩は、己の権威に挑戦する不届き者であるから決して容赦しないのである。
 これが、「いのちを救う」「医療崩壊を防ぐ」という民主党の主張の本質である。コロナ対策を担当するリベラルエリートに対する民衆の信頼は、彼らの無策と偽善のために傷つき、失われつつある。


 バイデン次期政権の副大統領に就任予定のハリス上院議員(カリフォルニア州選出)は12月16日のABCニュースのインタビューで、「新政権は懲罰的なコロナ対策を採用しない」と述べたが、第3波襲来で各首長が発出するロックダウン命令は、強制力を伴う懲罰的なものだ。
 こうした中、12月18日に発表されたロサンゼルス郡の11月度雇用統計では、雇用の増大が10月の14万5600人から5万7100人へと大幅減速し、コロナの流行拡大が顕著となった2月以降の失業者数は62万7000人と高止まりしている。
 営業禁止が繰り返された外食産業などでは、店じまいをするところも多く、人々の生活は民主党首長たちのロックダウン政策で破壊されている。11月に入ってからの感染者数の爆発が地域内外のヒトとヒトの接触だけではなく、気温や気候の変化などが総合的に作用した可能性などは考慮に入れない、ウイルス感染症に対する認知の硬直化の産物だ。
 コロナウイルスは、従来型の感染症のようにロックダウンには素直に反応してくれない。それどころか、英国で急速に拡大する感染力70%アップの変異型のように、科学・医学や啓蒙主義をあざ笑うかの如く柔軟に「進化」していく。それにもかかわらず、西欧諸国や米国の過去9か月のロックダウンがなぜ理論通り劇的に効かないのか、という問題意識に立った調査や研究は少ない。愚か者の一つ覚えの如く、感染者が増えればロックダウン、ロックダウンである。最後の頼みはワクチンのみだ。
 なぜなら、コロナに関する限り、「ロックダウンは効く」という言説は吟味されたエビデンスや理性に基づく科学ではなく、「こうであってほしい」という信仰なのであり、その信仰の崩壊はリベラルエリートの権威や権力の喪失につながるからだ。
 当連載最終回の第3回では、「科学」や「知性」を標榜するリベラルエリートの立案する政策の前提が、いかに非科学的で反知性的であるかを欧米の実例で示し、今やリベラル派の医療者や専門家からも、大衆の医療や当局に対する信頼の衰退が問題視され始めている現状を伝える。