ネコウヨの散歩

ネコと憂国

カローラに手が届かなくなる国?

 From 施 光恒(せ・てるひさ)
    @九州大学





こんにちは~(^_^)/(遅くなりますた…)


新年度が始まりました。私の勤める大学でも新学期が始まります。コロナ禍の影響で昨年度はほとんど教室での対面授業ができませんでした。今学期からは対面授業が増えるようで何よりです。


早く多くのことがコロナ以前に戻ってもらいたいと願っていますが、「観光立国」路線は大いに修正してもらいたいですね。ワクチンが広まるなどしてコロナが落ち着いたとしても、以前、書きましたように、クルーズ船観光をはじめとする外需頼りの日本の「観光立国」政策は立ち行かないでしょう。
(【施 光恒】「意地でも続ける?「観光立国」と「クルーズ船観光」」『「新」経世済民新聞』2020年7月31日配信)
https://38news.jp/politics/16426


もちろん、観光業界を見捨てるべきだと言いたいわけではありません。政府は近年、さんざん「観光こそ今後の日本の主要産業だ!」「観光立国だ!」などといって観光業への参入拡大を煽ってきたわけですから、その責任はとらなければなりません。


ですので、短期的には、4月1日から始まりましたが、「レベル2」の都道府県で可能となった「県内旅行」支援などの方策は、私もありうると思います。県境をまたがない旅行について独自に支援している自治体に対し、国が一人当たり最大7000円を補助するという政策です。


ただ、外国人観光客の需要を当てにし、観光業を国の主要産業にしようとする「観光立国」路線は見直すべきです。


外国人を恒常的にたくさん呼び込んで来ようという政策がうまくいくためには、日本の物価や賃金が相対的に安い方がいいでしょう。


最近よく指摘されるようになりましたが、実際、日本の物価や賃金は、欧米諸国はもとより、香港や中国の大都市、韓国などと比べても、低くなってきています。
2019年のOECDの調査では、日本人の平均年間賃金は韓国よりも低くなってしまったほどです。
https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm


各国の実質賃金指数の推移を比較すると、1997年を100とすれば、2016年では日本は89.7と落ちているのに対し、米国115.3、ドイツ116.3、英国(製造業)125.3という具合に、欧米諸国は増加しています。
(下記リンク先のPDFの1枚目をご覧ください(全労連作成のPDFに飛びます)。
https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf


「観光立国」の観点からすれば、この状態は望ましいわけです。日本の物価が安くなれば、外国人観光客にとっては日本を訪れる魅力が増すわけですから。


観光業以外のグローバル化路線を歓迎する日本の財界にとっても、実は、日本の平均賃金の下落は人件費というコストの低下につながるわけですから悪くないわけです。


皮肉な言い方をすれば、1990年代半ば以降、日本の賃金が主要国と比べて相対的に下がったために、日本のグローバル企業の国際競争力は上昇したとも言えます。日本の賃金の下落は、「雇用の柔軟化」など日本政府が90年代後半ごろから取り組んできたグローバル化を目標とする「構造改革」の成果なのかもしれません。


しかし、これは日本の庶民(「一般国民」)からすれば、バカバカしい限りです。改革すればするほど、雇用は不安定化し、賃金も下がったわけですから。


グローバル化を目標とするこうした構造改革路線が今後も続けば、多くの日本人は徐々にみじめさを感じることが多くなります。例えば、日本人が生産した商品や製品は、日本人には高価すぎ手が届かなくなるといった事態です。


観光立国政策の一つとして、観光庁は、外国人の富裕層の観光客向けの滞在施設(ホテル)を日本各地に建設しようなどとコロナ禍の下でも言っています。(D・アトキンソン氏もこれを検討する委員会の委員です…)。
(「観光庁、富裕層インバウンド誘致の検討委員会開催、ポストコロナ時代に向け受け皿づくり」(『トラベル・ボイス』2020年10月2日付)
https://www.travelvoice.jp/20201002-147200


一般的な日本人には高価すぎて利用しがたいホテルや観光施設などが日本の観光地のあちこちにできる――。京都のいい立地のホテルなどは、外国の富裕層ばかり見かけるようになる――。植民地的な光景で、私はとても嫌ですね…。


観光以外でも、日本人が生産した商品や製品を、日本人には買えなくなる事態は増えてくるでしょう。その傾向がすでに表れてきているものとして乗用車などが挙げられるでしょう。


かつては、トヨタ・カローラやホンダ・シビックなどは、日本人にとって身近な車でした。庶民が少しがんばって貯金すれば買える範囲にありました。


しかし最近は、これらは実質300万円前後しますし、普通の日本人にはなかなか手をだせなくなりました。(主に米国向けに車体が大きくなって、日本の道路事情に合わなくなったということもありますが…)。


米国では、カローラやカムリ、シビックやアコードなどは一番売れ筋の車です。「大衆車」といってもいいでしょう。しかし日本人には、買うのが結構きつくなってきています。
https://insurify.com/insights/most-popular-cars-by-state-2020/


日本では最近は軽自動車が一番の売れ筋となっていますね。軽自動車の割合は、日本国内の保有乗用車数のなかで1995年は12.1%でしたが、最近(2020年)は36.4%まで増加しています。
(軽自動車検査協会のサイトより)
https://www.keikenkyo.or.jp/information/attached/0000026145.pdf


確かに狭い日本の道路や駐車場からすれば軽自動車で十分でもありますが、それでも自動車メーカーが日本市場をあまり重要視しなくなり、カローラやシビックなどが日本の消費者のものとはあまり言えなくなってしまったというのは寂しい気がします。


日本の賃金の相対的低下が今後も続けば、近いうちに本当に日本人の大多数にとってカローラは手が届かない高嶺の花になってしまうでしょう。


わが国の農畜産物に関しても、最近は、「外国人の富裕層向けに作るようにしよう!」などと政府が音頭をとっていますので、下手をすると近い将来、日本の農畜産物は、日本の庶民にとって手の届かないものとなるかもしれません。日本の農家が作ったものを、普通の日本人は食べるのが難しくなるという事態が現実になりかねません。


嫌ですね…。


コロナをきっかけに、「観光立国」路線にしても、グローバル化を前提としたその他の外需頼りの経済政策にしても見直す必要があります。
(詳細はよくわかりませんが、ニュージーランドには「観光立国路線」を見直す動きもあるようです)
(「多くの観光立国とは対照的… ニュージーランド、新型コロナが落ち着いてもかつての"観光"に戻ることは目指さない?」『ビジネス・インサイダー』2021年3月23日付」)
https://www.businessinsider.jp/post-231722


日本は、デフレ脱却、ならびに普通の国民の雇用の安定や所得の向上を第一の目標とするまっとうな経済政策に立ち戻ってもらいたいものです。そして、内需中心型の安定した経済社会をしっかり構築していくようにすべきでしょう。


長々と失礼しました…
<(_ _)>